表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
282/291

270 ポピー=フレア=フェニックス 前編

※今回はポフー視点のお話です。


 私の前世は日本の女子高生で15歳。

 それなりにお金持ちの家に生まれて、甘やかされて育ったのもあって、あの頃の私は反抗期でしたわ。

 親を含めて大人の言う事を聞かない悪い子。


 そんな私だけど、唯一心を許している人がいた。

 それは、私の姉さん(・・・)ですわ。

 だけど私が高校に入る頃に、姉さんは上京していなくなってしまった。

 別れ際に「お母さんとお父さんの言う事を嫌がらずに聞いてあげて」と言って、姉さんは東京の会社に勤める為に家を出て行きましたわ。


 裏切られたと思いましたわ。

 幼い頃に、大きくなったら姉さんと結婚すると言ったら、嬉しそうに微笑んでくれた姉さんは私の前からいなくなった。

 15歳にもなれば現実が見えますので結婚とまではいかなくなったけど、それでも私は姉さんが好きで、姉さんも私の事が好きだと思ってた。

 それなのに私を置いて1人でいなくなってしまった。

 姉さんがいなくなると、私の心は今まで以上に随分と荒れていき、部屋に引きこもるようになりましたわ。


 だから、あの日も自分勝手にして親の助言を聞かずに死にましたわ。

 死因は今にして思えば自業自得な話です。

 真夏の暑い日が続くある日に、両親がさんざん心配してくれたのに、反発して水分補給をせずに熱中症で死んだのですわ。


 自業自得で死んだ私でしたけど、そのおかげか、熱に強い瑞獣ずいじゅう種である鳥……鳳凰ほうおうの獣人ポピー=フレア=フェニックスとして、この異世界に生まれ変わりましたわ。

 心残りはありました。

 裏切られたと思っても、私は姉さんが好きだったから。

 だから思いましたの。

 大好きだった姉さんとは二度と会えなくなってしまったけど、それでも私は今度こそ、姉さんの言った通り親の話を聞くいい子にして生きていこうと思いましたわ。







 始めに私が転生者だと気付いたのは、産まれて直ぐの事ですわ。

 でも、最初は体を上手く動かす事は出来ませんでした。

 ですが、幾つかの月日が流れて、それなりに自由に動くようになりましたわ。

 その頃にはこの異世界の事もだいぶ理解して、私が生まれたこの家が貴族の公爵家だと言う事も分かりました。

 最初に知った時は、よくある何かの小説かゲームの主人公か悪役令嬢にでも転生したと思いましたが、残念ながらそうだとしても知らない世界でしたわ。

 とは言え、異世界なのは間違いないですし、姉さんには会えなくなってしまったけど、私は少しだけワクワクしていました。


 元々瑞獣種である鳳凰の獣人は精神的な成長が早いのですが、それ以上に私の成長は早く、それにスキルを2つも持っていましたわ。

 それに、この異世界には魔法もあります。

 幸いな事に少なからずそういったものに興味があった私は、生まれて数か月で、魔法やスキルを喜んで勉強していきましたわ。

 歳が2つになる頃には、私は周囲から天女と呼ばれる様になっていましたわ。

 そして、両親が私を悪事に利用してしまった。


 前世で親の言う事を聞かずに死んだ私は、この世界ではちゃんと聞いて、しっかり生きていこうと思っていました。

 ですが、今度はそれが悪い方向へ進んでしまったのですわ。


 生まれ変わったと言っても、所詮は前世もまだ子供と言える歳。

 前世の私は、それでも自分はもう大人だと思っていましたわ。

 でも、今にして思えば全然子供で、大人ではありませんでした。

 だから両親の悪意ある思考にも気づきませんでした。

 気が付いた時には遅くて、もう後戻りできない事をしていましたわ。


 沢山の人を陥れて、それで得た富で私腹を肥やす。

 それは時に誰かが命を落とすきっかけになり、直接手を下す事もあった。

 私は両親から悪事を働く悪い人間達を始末していると言われ、それが嘘だと、間違いだと気付くのに随分と時間がかかってしまった。

 そして、私が悪事だったと知れたのは、空を飛んでいる時に風の魔法で撃ち落とされたのが原因だったんですわ。


 それは歳が3つになった私が、両親に言われた悪人を暗殺しに行く時ですわ。

 私が殺すのはクラライトの大臣で、裏で国を脅かす犯罪者を使った殺しをしている国家の反逆者。

 その証拠の書類を両親から見せられました。

 飛んでいた私を撃ち落としたのは、この国の王女の近衛騎士でしたわ。

 彼はその書類に書いてあった犯罪者で、今でこそ近衛騎士と言う立場ですが、国を裏切った経験のある反逆者でした。

 王女に隠れて犯罪を犯していて、王女に組する国の重役を殺している者ですわ。

 ですが、それも私の両親が作りだした偽りでしたわ。

 それどころか、それをしていた者こそ、私の両親だったんです。


 当時の私は歳が3つでも、暗殺が出来る程は強かった自信があります。

 ですが、近衛騎士の強さには敵わなかったのですわ。

 幼い私が1人で暗殺なんてする筈無いと思われてもおかしくありません。

 決して両親の事は話さずに、私は殺される覚悟をしましたわ。

 ですが、捕まった私は殺されませんでした。

 それどころか、私が話さなくても既に調べられていたようで、悪事を働いていたのが私の両親だと教えられましたわ。

 最初こそ信じていなかったのですが、クラライトの王女様まで現れて、私も何が本当か分からなくなりましたわ。


 私が捕まってから、両親が捕まるまで時間はそこまでかかりませんでしたわ。

 そして、この時にようやく、流石に私も本当に悪いのが両親だと気付きましたわ。


 それからはあっという間でした。

 自分の気持ちに整理がつかないまま、両親は処刑され、私は修道院に預けられました。

 私も両親と一緒に処刑した方が良いと言う貴族たちの声も沢山上がりましたが、王女様に救ってもらったのですわ。

 悪いのは娘を騙していた両親で、娘ではないと……。

 ですが、それでも納得のいかなかった貴族達を納得させる為に、首輪の形をしたマジックアイテムでスキルと魔法を封じたのですわ。

 そのおかげで貴族達も納得して、私は処刑されずにすみました。


 修道院に行った私は、人を信じる事が出来なくなってしまっていましたわ。

 それにトラウマも。

 あの日、暗殺に失敗して撃ち落とされた事で、私は空を飛べなくなりました。

 飛べなくなったと言っても、普通の一軒家の2階より下の高さであれば一応飛べますが、それでもやっぱり怖い事には変わりませんわ。

 ですので、空を飛べないから捨てられた子と影で言われる様になりました。

 私の罪状は隠されていたので、それを知らない大人達が言うようになったのですわ。

 同情の目を向けられて、居心地が悪い日々が続きましたわ。


 でも、それも長くは続きませんでしたわ。

 そしてそれは喜ばしい事でも無かったんですわ。


 修道院は盗賊団に襲われ、スキルも魔法も封じられて、飛べなくなった私に為す術なんてありませんでしたわ。

 歳がまだ3つで幼いですし、力でだって大人に勝てるはずがありません。

 だから、私は逃げましたわ。

 ですが、盗賊の1人が逃げる私に気づいて、私を追って来ました。

 

 必死に逃げ回って、でも直ぐに追い詰められて、今度こそ死を覚悟しました。

 そんな時です。

 私を襲おうとした盗賊は、背後から斬られ死にました。


「無事かい?」


 そう言って、盗賊を背後から斬って、私の目の前に現れたのはスタンプと言う名の男性、血の繋がってない今のお兄様ですわ。

 その後、私が襲われた修道院の子供だと知ったお兄様が、私を家族として迎え入れてくれたんですわ。

 そしてその時に、私はお兄様から“ポフー”と言う名前を頂きましたわ。







 お兄様と一緒に過ごす日々は、とても魅力的な日々でしたわ。

 私を本当の妹のように愛してくれて、スキルと魔法を封じていた首輪も取って下さいました。

 お兄様の愛を受け、私もお兄様を本当の兄のように愛すようになりました。


 お兄様は木こりで生計を立てているので、決して裕福ではありませんでしたけど、幸せな日々でした。

 スキルや魔法の才能があるとお兄様は私を褒め、私もそれに応えるように、更に研鑽けんさんしていきましたわ。

 その成果もあって、6つになる頃には実力もかなりのものになりましたわ。


 ただ、お兄様の為に強くなり続けた私も、お兄様を愛す事はあっても恋をする事はありませんでした。

 前世の記憶がある私は、未だに姉さんの事を覚えていて、お兄様と姉さんを幾らか重ねて見ていたのですわ。

 お兄様は確かに魅力的な方ですが、やっぱり姉さんと比べてしまうと見劣りしていました。

 そんな風に人を見てしまうのは失礼だと分かってはいるのですが、それでもそう言う目で見てしまうのですわ。

 ですので、お兄様に恋をする事は無かったんです。


 でも、それで良かったんですわ。

 だって、お兄様も私を妹として見ていましたもの。

 私が恋愛感情を抱いてしまえば、きっと今の幸せな生活が終わってしまいますわ。


 でも、その幸せな生活もある日を境に終わってしまいましたわ。

 偶然にも“憤怒”と出会ってしまった事によって……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ