239 変身できました!
※今回は瀾姫視点のお話です。
お館で目を覚まして皆さんとお話をすると、魔力が抑えられちゃうマジックアイテムがあるそうで、加護での通信も出来ないそうです。
モーナちゃんもお腹とお口から大量出血してますし、大変な事になってます。
そして、私は何故お館で寝ていたのでしょう?
確かクォードレターさんと一緒にお部屋を出て、出て直ぐに扉を閉めようとしたら、眠くなっちゃって……。
そう言えば、あの時眠気が優先されて気になりませんでしたが、指が少しチクッてしました。
気付かないうちに何か触っちゃったんですかね?
とりあえず今は通信で愛那ちゃん達に連絡をどうにかしないとですが、これは問題ありませんね。
ステチリングは取られちゃってますが、愛那ちゃんとお揃いのシュシュは取られていませんでした。
私は皆さんにシュシュの事を教えます。
すると、トンちゃんとプリュイちゃんが驚きました。
それから、シュシュを外して、お2人にお渡しします。
「シュシュの事すっかり忘れてた」
「殆どただの飾りだったからな」
「可愛いので仕方が無いです」
ラヴィーナちゃんとモーナちゃんの気持ちは分かります。
とっても可愛いシュシュなので、本来の機能を忘れちゃっても不思議じゃないです。
トンちゃんとプリュイちゃんが加護の通信をしていてくれる間に、私はお部屋の中を探索しました。
ここのお部屋は私がメイドをしていた時に入った事が無いお部屋のようです。
何故か扉が二つもありますし、ざっくりですが見た感じ知らないお部屋でした。
「まさかそのシュシュに魔力阻害を無効化出来る機能が付いているとは思わなかったッス。スイカ胸が目を覚ましてから、一気に風向きが良くなってきたッスね」
「アタシが今まで見てきた魔力阻害無効化のマジックアイテムの中でも、このシュシュは飛び抜けて性能が良いんだぞ。サガーチャさんが作った特別仕様なのか?」
「はい。私と愛那ちゃんだけの特別製なんですよお」
お部屋の中を見ていると、通信を終えたトンちゃんとプリュイちゃんが褒めてくれたので、お2人の所に戻ります。
お2人に愛那ちゃんとお揃いのシュシュを褒めてくれて嬉しいです。
でも、喜んでばかりもいられません。
モーナちゃんの傷を治さないとです。
私はシュシュを今度はラヴィーナちゃんに渡して、モーナちゃんの回復をお願いします。
それから、回復しているその間に、私達はお話をしました。
「何はともあれ、これで連絡が取れたッスね」
「でもびっくりしたんだぞ。もう明後日にはお館様が帰って来ちゃうんだぞ」
「もうお外も暗くなってきてますし、あまり時間が残ってませんね」
「そうッスね~。マナママも調べものが終わったら、ご主人と一緒に直ぐに戻って来るって言ってたし、ボク等もさっさと反撃に出るッスよ」
「だな! 傷が治ったから全開で暴れてやるわ!」
「期待してる」
「頑張っていきまっしょお!」
モーナちゃんの回復が終わったようなので、お館からの脱出計画を決行です!
でも、そんな計画はたててません!
これから考えます!
「扉の前には多分警備がいる。昼にクランフィールが食事を持って来た時に見た」
「窓から出るにしても警備が多いッスね。扉の前にいるの含めて、アレが全部マナママに復讐しようとしてる元奴隷商人ってマジなんスか?」
「そうみたいだぞ。マモンさん達も何人かは知ってるんだぞ?」
「だなあ。何人かぶっ飛ばした奴も混じってるぞ」
「私は今の所全員見た事ある。捕まってた時にアジトにいた人が多い」
「そうなんですか?」
「そう」
ラヴィーナちゃんが私の質問に頷くと、モーナちゃんが天井を見上げて手を上にかざしました。
もちろんそれだけじゃ終わりません。
かざした手の上に魔法陣が浮かび上がって、そこから大きな岩の塊が飛び出します。
そしてあっという間に大きな岩が天井を大音量で突き破りました。
どうやらシュシュを返して貰ってないと思ったら、今はモーナちゃんが腕につけていたみたいです。
ふふふ。
とっても似合ってて可愛いですね……って、今はそれどころじゃありません!
「モーナちゃん、何やってるんですか!?」
「扉と窓が駄目だから天井を壊しただけだ」
「……なるほど。盲点でした」
「何納得してるッス!? 滅茶苦茶ッスよ! これじゃあ敵にバレちゃうッス!」
「もうバレてる」
ラヴィーナちゃんが言った通り、扉を開けて警備さんが2人ほどお部屋の中に入って来ました。
「へぅっ。どうしましょう!?」
「安心しろ! その為の天井だ! 上から逃げられるわ!」
「モーナちゃん頭良いです!」
「寧ろ馬鹿まっしぐらッスよ! それのせいでバレたッスよ!」
「喋ってないで逃げるんだぞ!」
「私に任せろ!」
モーナちゃんが重力の魔法を使って、私達を宙に浮かべます。
そして、ぴゅーっと飛んで天井裏……違います! ここ2階です!
「上にも部屋があったのか。ならもう一回天井を壊すぞ」
「これ以上は禁止ッス! 逃走経路がバレバレになるッスよ! って言うか、皆スキルが使えなくて魔法を使えるのも1人しかいないんスよ? もっと慎重に動くべきッス!」
「おまえさっきから煩いぞ。そんなに怒って……ん? ちょっと待て」
「なんスか?」
モーナちゃんが私と目を合わせて首を傾げました。
どうしたんでしょう?
すっごく厚い眼差しな視線です。
今は愛那ちゃんの姿だからでしょうか?
モーナちゃんに見つめられると、ちょっとドキドキしちゃいます。
「何でナミキはスキルが使えない筈のこの状況で、マナになれてるんだ?」
モーナちゃんの言葉で、一斉に皆が私に注目しました。
でも、皆さんおかしな事で不思議がってますね。
そんなの考えるまでもありません。
「私は可愛い愛那ちゃんのお姉ちゃんなので、当たり前じゃないですか」
「納得」
「だな」
「え? 今の納得出来る要素どこにあったッス?」
「分からないんだぞ」
「あ、ボク分かったかもッス」
「分かったのか!?」
「スキルを封じるマジックアイテムの特徴って、もしかして使用者自信に使うものは防げないんじゃないッスか?」
「確かにそれなら、ナミキさんが自分に使ってるスキルをそのまま維持出来てた理由にも納得出来るんだぞ」
「それより早くここを出るのが先。早くしないと追手が来た」
「ほ、ホントです!」
お姉ちゃんだからと言う理由が否定されちゃいましたが仕方がありません。
それよりも、ここは1階の天井の上で、床には1階に通じる穴が開いています。
私達がお話をしている間に、ぴょーんと凄いジャンプ力で警備の人が1人来てしまい、私達は直ぐに扉を開けて逃げました。
扉を開けて廊下に出て走って逃げていると、モーナちゃんが大声で皆さんに話しかけてきました。
「私が戦って敵をひきつけても良いぞ?」
「シュシュは一つしかないんスよ? 馬鹿猫が残って戦ってる時にボク等が襲われたらお終いッスよ!」
「トンペットの言う通り。モーナスは邪魔な敵を退けるのに専念するべき」
「それもそうだな」
「ところでアタシ達は何処に向かってるんだぞ? 道はこっちであってるのか!?」
確かに何処に向かって走っているのでしょうか?
私も不思議に思ったのですが、それを気にしている時間はありませんでした。
何故なら、突然目の前の床がボッカーンと爆発したからです。
突然の出来事に私達は足を止めて、爆発で開いた床の穴に注目しました。
すると、その穴からクォードレターさんが飛び出しました。
「あ、クォードレターさんです。クォードレターさん、こんばんはですー!」
クォードレターさんはとっても良い人なので、私は挨拶をしながら近づこうとしました。
でも、直ぐにラヴィーナちゃんに腕を掴まれて止められてしまいます。
「駄目」
「ラヴィーナちゃん? でも、クォードレターさんは――」
「その雪女のガキの言う通りだぜ、マナ。お前の事は嫌いじゃねえが、こっちも事情が変わってな。他の奴等はともかく、マナ……悪いがお前は逃げない様に眠ってもらう」
「クォードレターさん……?」
何かがあったんでしょうか?
あの優しかった面影はありません。
クォードレターさんの目は鋭く細められて、私を睨みました。
「他の連中は殺す事になった。これ以上こっちの計画を引っ掻き回されたら、たまったもんじゃねえからな」
「そんな……」
「そっちがその気ならぶっ殺すまでだ。喧嘩を売った事を後悔させてやるわ!」
モーナちゃんが私達の前に出て、クォードレターさんと睨み合います。
そして、そうしている間にも、続々と警備をしている元奴隷商人さん達が集まって来ています。
「これって最悪の展開じゃないッスか!?」
「ヤバいんだぞ!」
「魔法が使えなくても戦うしかない」
「そうは言っても――って雪ん子、なんスかそれ!?」
トンちゃんが驚いた顔でラヴィーナちゃんを見たので、私も視線を向けて、その理由が直ぐに分かりました。
なんと、ラヴィーナちゃんはいつの間にか大きな燭台を持っていたんです。
「さっきの部屋の机の上にあった。武器になると思って貰った。無いより良い」
「ラヴィーナちゃん、人の物を勝手に貰っちゃ駄目です」
「真面目ッスか!? 今はそんな事どうでも良いッスよ!」
「心配無い。後で返す」
「ごめんなさいも言わないと駄目ですよ?」
「分かった」
「しなくて良いッスよ!」
「謝る事は大事な事なんだぞ?」
「プリュも何言ってるッスか!? 今はそれどころじゃ無いッス!」
「瀾姫、今まともに戦えるのはモーナスと瀾姫だけ。スキルで変身して戦って」
「え? でも……」
私が愛那ちゃんじゃないってバレてしまいます。と、言おうとしてやめました。
だって、今はそんな事を言ってる場合じゃありません。
ラヴィーナちゃんを護らないと駄目なんです!
「分かりました! 出来るかどうかは分かりませんが、やってみます!」
モーナちゃんとクォードレターさんが睨み合って、モーナちゃんは爪を伸ばして尻尾の毛を逆立てます。
私は後ろから来た追手と向かい合って、スキル【動物変化】の部分変化で変身します。
「動物部分変化! フローズンドラゴンバージョンです! ギャオオオオッッ!」
元の姿に戻って、私の背中と腰から大きな羽と尻尾が生えました。
「変身できました!」
「マナ……お前のスキルは【必斬】だったはず。それは姉のスキルじゃねえか! それにその姿……お前は偽物だったのか!?」
クォードレターさんが怒号を上げました。
私はクォードレターさんに振り向いて、真剣な目を向けました。
騙していた事に良心が痛みますが、でも、謝る為ではありません。
「クォードレターさん、服を貸して下さい!」
大変です!
愛那ちゃんサイズのメイド服がきつきつで、とくにおっぱいの辺りが苦しいです!




