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150 ほいひいへふ!

※時間はだいぶ遡って瀾姫視点のお話です。



 私の可愛い妹の愛那まなちゃんのお披露目会が終わって、私とラヴィーナちゃんとアタリーちゃんの3人で、メレカさんを迎えに行く事になりました。

 メレカさんとの待ち合わせ場所は、乗船場の前の魚神像ぎょしんぞう前です。


 そう言えば、そろそろお昼ご飯の時間でしょうか?

 ステータスチェックリングの時計を見ると、もうとっくに11時を過ぎていました。

 まだ早いと思う方がいるかもしれませんが、そんな事はありません!

 私は3時のおやつを食べる派なので、この時間に食べても大丈夫なのです!

 と言うわけで、愛那ちゃんに止められていた屋台の食べ物を手あたり次第もぐもぐしたいと思います!


瀾姫なみき、寄り道は駄目」


「へぅ。でも、何か一つくらい食べたいです」


「駄目。メレカが待ってる」


「へぅ。……わかりました」


 悲しいです。

 最近、ラヴィーナちゃんが愛那ちゃんに似てきちゃいました。

 愛那ちゃんの可愛い所は似ると可愛いので可愛いカーニバルで尊い可愛いですが、こんな厳しい所は似なくても良いです。

 私はがっかり気分でどんより歩きます。


「ナミキたん、元気だちて下たい」


「アタリーちゃん優しいです」


 アタリーちゃんの優しさが心にみます。

 そんな優しいアタリーちゃんのおかげで、私は目の前に広がる美味しそうな物を我慢して、メレカさんとの待ち合わせの場所までやって来ました。

 激しく辛い戦いに、見事に勝利したんです!


「メレカさーん!」


 早速メレカさんを発見したので、メレカさんを大声で呼びます。

 すると、メレカさんが私達に気が付いて、笑顔を向けてくれました。

 今日もメレカさんはメイド姿の似合う素敵な笑顔です。

 でも、あれれ?

 誰でしょう?

 メレカさんの隣に、頭に深くフードを被ったローブ姿の方がいます。

 多分女性の方です。

 フードでお顔が見えませんが、メレカさんより少し身長が小さいくらいの、メレカさんと同じスレンダー美人さんです。


 気になりますが、まずはフナさんが来れない事の説明をしなければなりません。

 それに愛那ちゃんとモーナちゃんも遅れる事を伝える必要があるのです。

 メレカさんの許に行って、それ等を伝え終わると、メレカさんが謎のスレンダー美人さんを早速紹介してくれました。


「この子は私の妹のオリビア、リビィと呼んであげると喜びます」


「リビィちゃんですね。私は瀾姫です。よろしくです」


「あたちはアタリーでち。リビィたんよろちくでち」


「は、はい! よろしくお願いします!」


 リビィちゃんがいっぱい腰を曲げてお辞儀しました。

 どうやら緊張している様です。

 ですが、無理もありません。

 今ここには、ラヴィーナちゃんとアタリーちゃんと言うとってもラブリーでプリチーでキュートな女の子がいるのです。

 こんな可愛い子達を目の前にしたら、耐性の無い人は可愛さにあてられて悶絶を我慢するのがやっとなんです!

 と、そこで私はふと、名探偵の如く気が付いてしまいました。


 いつも礼儀正しいラヴィーナちゃんが挨拶をしません!


 そうなのです!

 ラヴィーナちゃんは愛那ちゃんと同じくらい礼儀正しい良い子なんです。

 それなのに、何故か挨拶を中々しません!

 これは事件です!


「……女王様?」


「――――っ!?」


 はて?

 私の聞き間違いと見間違いでしょうか?

 ラヴィーナちゃんがリビィちゃんを見上げながら女王様と言ったように聞こえました。

 それに、リビィちゃんもビクビクって体を震わせたような気がします。

 相変わらずフードでお顔が見えませんが、何だか焦ってる様に感じます。


「そそそそそ、そんな事ないですよ」


 めちゃくちゃ焦ってます!

 私にはわかります!

 だって、私も焦るとあんな感じになっちゃいます!


「メレカ、女王様のお姉さんだった?」


 聞き間違いじゃありませんでした!

 思いっきり女王様って言ってます!

 驚いて私もラヴィーナちゃんと一緒にメレカさんに視線を向けます。

 すると、メレカさんが苦笑して、一度リビィちゃんを見てから私達に視線を移しました。


「ラヴィーナは凄いですね。皆には内緒にして下さいね?」


「ほ、本当に女王様なんですかああああああああああああああああ!?」


「瀾姫、声が大きい」


「へぅ。すみません」


 大きな声を出したら、ラヴィーナちゃんに怒られてしまいました。

 だから、私は慌ててお口にチャックして、両手で口を防ぎます。

 でも、今がお祭りの最中で助かりました。

 周りでお祭りを楽しんでいる人達の殆どは特に気にしてませんでしたし、私達に注目した人も、一瞬視線を向けてきただけで気にせず視線を元の位置へと戻しました。

 セーフです!


「女王様だったでちか。びっくりちまちた」


「お姉ちゃん、何でばらすのよ!」


「ふふふ。良いじゃない。この子達なら知られても大丈夫よ」


「もー!」


 かかかかかかか、可愛いです!?


 驚きの可愛さです!

 女王様がまさかのお姉ちゃん呼び妹キャラです!

 私も愛那ちゃんに可愛くお姉ちゃんって言ってほしいです!

 しかも駄々っ子みたいに、お姉ちゃんのメレカさんの肩をポンポン叩いてます可愛いです!

 私も愛那ちゃんにアレやってほしいです!

 絶対可愛いです!

 それにしてもです!

 なんと言う事でしょうか!

 あの、あのお披露目会で綺麗で素敵な女王様の意外な一面のギャップ萌えです!

 フードでお顔が見えませんが、私には耳まで真っ赤にして膨れてる可愛いお顔が見えるようです!


「ほら、皆が困っているでしょう? せっかくお忍びで来たのだから、いつまでも子供みたいな事しないの」


「分かってるわよ」


「私はラヴィーナ、よろしく」


「あ、はい。よろしくお願いします」


 リビィちゃんがまたもの凄ーく腰を曲げて挨拶しました。

 こうして見ると信じられません。

 本当に雰囲気が全然違います。

 同一人物だって聞いても、疑っちゃうレベルです。


 皆さんの挨拶も終わったので、そろそろお祭りを楽しむ為に出発です。

 遂にこの時がやって来ました。

 早速私は美味しい物が食べたいと提案します。

 すると、メレカさんが良い屋台を紹介してくれると言ってくれて、そこへ向かう事になりました。

 向かっている途中では、私とラヴィーナちゃんとアタリーちゃんの前をメレカさんとリビィちゃんが仲睦まじく歩くので、私は微笑ましく見守ります。


「お姉ちゃん本当にその話し方で行くんだ? せっかくのお祭りなんだからメイドモードやめようよ。私みたいに」


「都では私はメイドとして通ってるのだから、そんな事無理に決まっているでしょう?」


「だからいつも言ってるけど、皆もうお姉ちゃんが私の姉って事知ってるからね。お姉ちゃんだけだよ。いつまでもバレてないと思ってるの」


「そんな事ないわよ。見てなさい?」


 メレカさんはそう言うと、近くを通り過ぎた酔っぱらいのおじさんに話しかけます。


「ハンガーさん、ごきげんよう。今日は踊歌祭ようかさいでお仕事はお休みですか?」


「ああ? ……おおっとこいつは失礼。何処の美人さんかと思ったら、メレカさんじゃねーかい! 隣にいるのは……まあいいや。今日もメイド服がお似合いだねーっと、わりいな。話がそれちまったな。今日はせっかくのお祭りだから休みにしたんだ」


「ふふふ。お祭りを存分に楽しんでください。また今度、他国で仕入れた珍しい野菜を持って行きますね」


「そりゃありがたい! 流石は王――――じゃなかった。一流のメイドさんだ! じゃあな!」


「はい。ごきげんよう」


 お話を終えると、メレカさんが何処か勝ち誇ったお顔でリビィちゃんに視線を移します。

 すると、リビィちゃんが呆れ顔でメレカさんを見ました。


「お姉ちゃん今のでバレてないと思ってるの?」


「今のでって何よ? ハンガーさんも一流のメイドと言っていたでしょう?」


「その前に王族のどうのって言おうとしてたよ」


「王女のメイドって言おうとしたのよ」


「絶対違う」


「メレカたんはリビィたんのメイドたんなんでちか?」


 メレカさんとリビィちゃんのお話に、ハテナを浮かべたアタリーちゃんが尋ねました。

 黙って姉妹の会話を堪能していた私ですが、確かに少し気になりました。

 今更ですが、メレカさんとはあまりプライベートの事は話していませんでした。


 アタリーちゃんが尋ねると、メレカさんが一度足を止めて振り返ります。


「いえ。この子のではなく、北の国、クラライト王国でメイドをしています」


「この国の王族なのに?」


 ラヴィーナちゃんが首を傾げました。

 とっても可愛いです。

 そして私も同じ事を思いました。

 すると、メレカさんが柔らかく微笑んで「ええ」と答えました。

 その微笑みを見て、私はメレカさんが仕えているそのクラライト王国と言う所に行ってみたくなりました。

 メレカさんの微笑みは幸せそうで、とっても素敵だったので興味が湧いたのです!


 でも、今はそれどころではありませんでした!

 緊急事態です!


 ぐ~。


 っと、私のお腹が食を求めて大きく鳴ります!

 大変です!


「お腹が空きました!」


 ついつい大声を上げちゃいました。

 すると、メレカさんが苦笑して「早く行きましょうか」と言って再び歩き出しました。

 賛成です!


 メレカさんのお勧めの屋台はホットドッグに似た食べ物を売っている屋台でした。

 ホットドッグで使うパンに似た細長いパンに、ブレードシャークという名前のサメさんのお肉をレタスと一緒に挟んで、特性のタルタルソースに似たソースをかけて食べるブレシャサンドと言う名前の料理を提供する屋台です。

 わくわくとよだれが止まりません!

 お値段はなんと銅貨3枚です!

 愛那ちゃんがいないので安いのか高いのか分かりません!


「いただきますー!」


 手を合わす事はブレシャサンドを持っているので出来なくてしませんでしたが、しっかりといただきますをしてかぶりつきます。

 するとどうでしょう!

 柔らかくて熱々の出来たてパンに、歯応えと肉汁溢れるサメさんのお肉。

 レタスのシャキシャキした歯応えも合わさって、噛めば噛むほど楽しさと旨みが口の中に広がります。

 そしてそれ等を引き立たせる役目を果たしているのがこのソースです!

 見た目でタルタルソースに似たものだと思っていましたが、実際に味わってみると全然違う味わいでした。

 どちらかと言うとケチャップに近い味わいです。

 トマトをベースにした味のソースに、刻まれたピクルスみたいなお野菜が入っています。


 なんだかハンバーガーが食べたくなってきました。

 でも、これだけは言わないといけません!


ほいひいへふ(おいしいです)!」


「瀾姫、食べながら喋ったら行儀悪い」


「へふ……」


 やっぱり最近ラヴィーナちゃんが愛那ちゃんに似て鬼嫁みたいな感じになってきちゃってます。

 悲しいですブレシャサンド美味しいです。

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