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128 妹大好き少女は海の中へ

※今回は瀾姫視点のお話です。

「モーナちゃん! 見て下さい! 誰かがこっちに来ます!」


「マナか!?」


「違います! 愛那まなちゃんはあんな豪快に泳ぎません!」


 可愛い可愛い愛那ちゃんが別の船に乗ってしまってから暫らくが経ちました。

 そして私はそんな世界一可愛い愛那ちゃんのお姉ちゃんの瀾姫なみきです。

 今はフルートと言う海底の町に向かっている途中で、猫耳と尻尾が可愛らしいモーナちゃんと一緒に海を眺めながら釣りをしていました。


 愛那ちゃんがいなくなってからと言うもの、私は毎日お魚さんを釣ってます。

 だって寂しくて耐えられなくて考えたんです。

 この寂しさを紛らわすには、何かをしようと思ったんです!

 そして、私は悟りの境地を開きました。

 デリバーさんとドンナさんに釣りを教えてもらい、ついに私は釣りマスターとなったのです!

 もう私に釣れないお魚さんは大きいお魚さんくらいしかいません。

 釣りマスターお姉ちゃんと言われ愛那ちゃんに憧れの眼差しを向けられる事間違いなしです!

 あ、思いだしたら寂しくなりました。


 そんなわけで、ここはどこかの海の上で、いつもの様に船の上で釣りをモーナちゃんとしていたら、遠くの方からバシャバシャと泳いでこっちに来る誰かが見えました。


「んー? あいつ、何処かで見た事ある奴だわ」


「お知合いですか?」


 まさかのお知り合い登場です。

 流石はモーナちゃんのお知り合いです。

 こんな海の真ん中を泳ぐなんて、私には真似できません。

 きっと、よっぽど泳ぐのがお好きなんですね。


「あ、何か投げたわ」


「投げ――――」


 モーナちゃんの言葉に、私が首を傾げた瞬間でした。

 ズドンッと、何かが背後に落ちて音を上げました。

 私はびっくりして背後に振り向きます。

 すると、水浸しのネズミの獣人さんが目を回して倒れていました。

 しかもその獣人さん、何処かで会った事がある気がします。

 その獣人さんに気を取られていると、バシャアッと海から噴水みたいな水の柱が大きく上がりました。

 そして、水の柱から知らない男性が飛び出して、ネズミの獣人さんの横に着地しました。


 男性は多分ヒューマン、人間です。

 髪の毛と瞳の色はオレンジ色でとても綺麗です。

 海を泳いでいただけあって、細い体でも筋肉がしっかりしています。


 ネズミの獣人さんも男の方でした。

 そして何処かで見た事がある気がします。

 今は気絶をしているみたいで倒れていて、顔がよく見えませんが多分間違いないです。

 でも、何処で見て出会ったのか思いだせません。

 わりと最近だったとは思います。


「助かったー。ったく、チュウベエ起きろー。いつまで寝てんだ」


 男性は屈んで、獣人さんの肩を軽く叩きました。


「チュウベエ……? あ、愛那ちゃんを奴隷にしてた人の家にいた用心棒さんです」


「何?」


 思いだしました。

 あの時戦ったネズミさんです。

 チュウベエ、確かそんな名前でした。

 でも変です。

 チュウベエさんは罪を償う為に、チーちゃんとチーちゃんのお母さんの身の回りのお手伝いをする事になってる筈です。

 こんな所にいる筈無いんですが……。


「ナミキ、本当か? あいつ奴隷商人の仲間か?」


「はい。チュウベエさんはそうです」


 答えると、モーナちゃんが少しプンプンしながら2人に近づきました。


「おい、レオ。久しぶりだな。おまえ、その男と知り合いなのか?」


「んー? あ、よお! なんだよ久しぶりじゃねーか! 元気だったか!? って、そう言やお前に譲った――」


 プンプンしたモーナちゃんに比べて、久しぶりの再会に喜んでいる感じの男性、そんな2人を見ている私と男性の目が合いました。

 すると、男性が驚きの表情を見せてモーナちゃんに問いました。


「おい、あの子……マナの姉ちゃんか?」


 まさかの愛那ちゃんの名前を聞いて、私とモーナちゃんは驚きました。

 それだけではありません。

 男性は無言で驚く私達を見て肯定と捉えたのか、真剣な表情になりました。

 そして、男性が次にとった行動によって、私達は更に驚かされます。


「これをマナから預かってる」


 これと言って取り出したのは見覚えのある剣です。

 それは、大きいものまで収納出来る便利なマジックアイテムの小さな小瓶の中に入れられていました。

 そしてそれは、モーナちゃんが愛那の為に渡した剣、カリブルヌスの剣でした。


「おまえ! これは私がマナに渡した物だぞ! なんでおまえが持ってる!? 預かってるって、マナに会ったのか!?」


「会ったよ。しかしそうか。お前あの子に……いや、まあ良い。安心しろよ、多分マナは無事だ」


「多分? 無事? お話の途中すみません、私は愛那の姉の瀾姫なみきです。お聞きしたいんですけど、多分無事ってどう言う意味ですか?」


「あ、ああ。すまん。そうだよなあ、今のは失言か。ああ……心配する必要は無いとだけ、先に言わせてもらう」


「何かあったのか?」


 モーナちゃんも私も真剣に真っ直ぐと男性を見つめました。

 すると男性は少しだけ困った顔をして、小さく息を吐き出しました。


「俺とマナが乗っていた船が毒海どくうみに呑まれた」


「――っ毒海!? 呑まれたってどう言う事だ! マナは無事なんだろうな!?」


「気持ちは分かるが落ち着け。遠目に救助されてる所を見たから無事なのは確実だ」


「遠目に?」


「ああ。丁度その時は俺もこいつを助けるのに大変だったんだよ。んでだ。そこでどっかの魚人が助けに来て、マナを助けてるとこを見たってわけだ」


「そうか……。ん? レオ、おまえは何で一緒に助けてもらわなかったんだ?」


「俺は魚人が苦手なんだよ」


「そうだったか?」


「そうだったんだよ」


「でもあいつとおまえも知り合いだよな?」


「あいつ? ああ、あの人は……まあ、確かに世話にはなったけど」


 何やら2人で愛那とは関係なさそうなお話が始まりましたけど、私は黙って聞いている事が出来ませんでした。


「すみません。えっと……レオさん、愛那が今何処にいるのか分かりませんか?」


「何処にいるか? そうだな……分からない。が、もしかすると、ハーフ達の集落かもな」


「ハーフ達の集落?」


「ああ、マナを助けた連中が魚人と言ったけど、正確には魚人と他の種族の混血ぽかったんだよ。ここ等辺でそう言う連中が集まるって言えば、ハーフ達の集落くらいだからな」


「そうなんですね」


「まあ、心配いらねえよ。マナと一緒にいたメソメって子も魚人と他の種族の混血のハーフみたいだし、ハーフはハーフに優しいからな。悪いようには絶対ならない」


「そうですか。それなら良かっ…………メソメちゃんが魚人さんのハーフ!? そうだったんですか!?」


「え? 嘘? 何? 知らなかったのか?」


 レオさんが驚く私に驚いて、モーナちゃんに視線を移しました。

 モーナちゃんは首を傾げて、可愛らしく尻尾を揺らします。


「メソメが隠してるみたいだったから、私は気付いたけど気付かないフリして黙ってたわ。ちゃんと隠せてたし、気が付かなくても仕方が無いな」


「あー、そういう感じか」


「はい。知りませんでした! あんまりです!」


 ショックです。

 それならそうと言ってほしかったです。

 だって、だって……。


「な、なあ、今会ったばかりの俺が言うのもなんだけどさ。元気出せよ。どんな仲だったかは俺には分からないけど、仲が良い程言い辛い事だって――」


「ハーフなんて凄くかっこいい響きじゃないですか! 羨ましいです! 私もかっこいいハーフ美人になりたいです!」


「ええ……そっちかよ。なあ、この子って変わってるな? 本当にマナの姉貴なのか? マナの方がよっぽどしっかりしてないか?」


「当たり前だ。ナミキはマナと私と違って馬鹿だからな」


「…………ノーコメントで良いか? それ」


 誇らしげに胸を張ったモーナちゃんを、レオさんがジト目で見つめました。

 すると、そこでドンナさんの声が聞こえてきました。


「2人ともー! そろそろ船が潜水するって……誰だいそいつは?」


「レオさんとチュウベエさんです」


「ふーん……ん? そこのネズミの獣人……どっかで見たような」


「そうなんですか?」


「ああ、確かリバーの船から積み荷を降ろしてる時にいた作業員……って、そんな事より、早く船内に入るよ」


「あ、はい。これから潜るんですよね?」


「そうそう」


 よく分からないのですが、海の中の町に行く為に、船が海の中に潜るらしいです。

 それでドンナさんが私達にそれを教えに来てくれました。


 ドンナさんに続いて船の中に入って、レオさんとチュウベエさんとお別れした後に、透明なガラス張りのお部屋までやって来ました。

 船内にいながら外の様子が見えるお部屋で、海に潜る所を見てみたいとお願いしたら、案内してもらえました。


 お部屋に入ると、直ぐに潜水の準備が始まりました。

 まずは帆がクルクルとまとまって、その後直ぐに船が光り始めました。

 いえ、違います。

 船がおっきな丸くて白い光に包まれて、それが光ってるように見えました。

 そして、船が徐々に海に入って行きます。

 真っ直ぐ向きを変えずに、そのまま沈んで行くように入って行きます。


「ナミキ、あそこ見ろ」


 モーナちゃんが指をさして言いました。

 言われた通りに視線を向けると、丸い光は丸くありませんでした。

 よく見ると、チョウチンアンコウの様なびろーんとした触角の様なものがありました。

 そしてそれの先端は丸くなっていて、船を包む光よりもより一層強く光り輝いています。


「わあ、綺麗ですね! 凄いです!」


 目を輝かせていると、船が全部海の中に入りました。

 そして、ゆっくりと下を向いて、少し斜めになって進みを始めます。


 海の中はとっても綺麗で、お魚さんや海の生物がいっぱい泳いでいます。

 まるで踊るようなお魚さん達と一緒に泳ぐ様に、光に包まれた船がどんどん前へ進みます。

 私はガラスにぴったりとくっついて、移り行く景色やお魚さん達を眺めました。


「ナミキは反応が可愛くて良いね」


「可愛いですか?」


 不意にドンナさんに可愛いと言われて振り向くと、ドンナさんが微笑みました。


「可愛いね。マナなんか海に潜る方法を教えてあげたら、興味無さそうな顔して、知ってます。だよ。それと比べたらナミキは可愛いだろ?」


「愛那ちゃんは私より可愛いです」


「ははは、そうだね」


「おーいナミキー! 飯食いに行くぞー!」


 いつの間にかモーナちゃんが出口に立っていました。

 そしてモーナちゃんに呼ばれると、私のお腹がグ~っと音を鳴らしました。

 そう言えば元々釣りをしていた事を思い出しました。

 それにチョウチンアンコウの触角みたいな先端の先の光と言うかそうです!

 チョウチンアンコウです!

 アンコウは食べた事ありませんが、食べてみたいです!

 そう思うと、あら不思議です。

 お腹が空きました!


「行きます!」


 私はモーナちゃんに元気な返事をして、駆け出しました。

 ご飯が楽しみです~。

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