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123 姉は妹の無事を祈る 2

※今回も瀾姫視点のお話です。

 船に乗ってから暫らくが経ちました。

 私とモーナちゃんとデリバーさんとドンナさんと兵隊長さんで一つのお部屋に集まって、愛那まなちゃんとラヴィーナちゃんとメソメちゃんとロポちゃんが乗った船の事についてお話する事になりました。


 デリバーさんが調べてくれたので分かった事なんですが、愛那ちゃん達が乗った船はお金持ちの方が乗る豪華客船みたいです。

 凄腕のコックさんがいるらしくて、愛那ちゃんが美味しい物を食べれそうで安心しました。

 それを言ったら、兵隊長さんに「お金を持って無いからどうだろうな?」なんて言われましたが問題ありません。

 愛那ちゃんもラヴィーナちゃんもメソメちゃんもロポちゃんも皆可愛いんです。

 可愛すぎて皆さんから食べ物をいっぱい貰えるに違いないです。


 あ、そうです。

 それよりもです。

 ドンナさんも船について調べてくれたのですが、それを聞いて安心した気持ちが無くなってしまいました。

 お話は、こんなドンナさんの言葉から始まりました。


「あの船に乗った金持ち共だけど、どいつもこいつも裏で悪事を働いてる訳ありばっかりだったわ」


「訳あり? 俺が調べたかぎりじゃ、そんなもんは無かったぞ?」


 デリバーさんがあごを掴んで眉間にしわを寄せます。

 すると、ドンナさんが小さく息を吐き出して、それから「だろうね」と呟いて言葉を続けます。


「無理ないわよ。冒険者の間ではそれなりに有名だけど、金持ちってのは表向きは良い顔してるからね。裏稼業にでも関わらなきゃ、そんな情報なんて入ってこないわ」


「違いねえ。で? その悪事ってのぁ、どんな事だ?」


「主に種族差別からくる奴隷の売買だね」


「種族差別!? それって愛那は大丈夫なんですか? 人間を奴隷にとか考えてる人がいたら大変です!」


 焦りました。

 そんな人達が集まる船に愛那がいると思うと、心配で仕方ありません。

 でも、ドンナさんは私の焦った顔を見て微笑みました。


「ああ、マナは大丈夫よ。種族差別って言っても、狙われるのは殆ど混血だからさ」


「混血……ですか?」


「そう、混血だよ。特に獣人と他種族の混血を奴隷として売り買いしてるみたいだね。しっかし、何でこんなに同じ様な連中が集まったのかねえ。そこが不思議でならないよ。乗客だけじゃなく、船員までその金持ち共と関わり合いのある奴ばっかりさ。唯一関係なさそうなのは料理人くらいだね」


「ああ、料理人ってえと、あの有名人か」


「そう、正解。リバーの言う通り、あの有名人さ。元冒険者で私等冒険者の間じゃ有名人」


「お前から散々耳にタコが出来るくらい聞かされたからな」


「っと、話が脱線しちまったけど、とにかくそう言う裏のある連中の集まりだけどマナ達の事は安心して良いよ。あいつ等は表向きは良い人だからね。混血意外には優しいもんさ」


「そうなんですね……」


 安心しても良いのでしょうか?

 正直よく分かりません。

 混血ばかりを狙う悪い人達だから、そうじゃない愛那やラヴィーナちゃん達は狙われない。

 本当にそうなんでしょうか?


「また奴隷か。どいつもこいつも飽きないな。奴隷商人みたいに全員ぶっ飛ばすか?」


 私が顔を俯かせている横で、モーナちゃんが機嫌悪そうに言いました。

 モーナちゃんも奴隷商人さん達に追いかけ回された過去があるので、奴隷と聞いて機嫌が悪くなったようです。

 私だってそう言う人達は嫌いです。

 誰かを奴隷にするなんて絶対にやってはいけない事です。

 例えどんな理由があったって、駄目なものは駄目なんです。


「あのなモーナス嬢。俺もそれには同意したいが、そう簡単な事でも無いし、今はそんな奴等に構ってる場合でも無いだろ。そもそも船が違うんだ。俺達には何も出来ない」


「そうよ。それに表沙汰は周囲からも信頼されてる奴等ばっかよ。証拠も無いのに下手に手を出したら後々大変な事になるだけよ」


 後々……きっと仕返しされるって事です。

 それに、良い人と思われているなら、その方達を慕う周囲の方達ともいざこざが生まれてしまいます。

 漫画やアニメやゲームでよくある展開なので私にも分かります。

 でも、それが怖くて何もしないなんて、本当にそれで良いんでしょうか?


 兵隊長さんとドンナさんの言葉でしょんぼりしていた私の横で、モーナちゃんが胸を張って眉根を吊り上げました。


「なら殺すか」


 驚きました。

 モーナちゃんは超絶クレイジーです!

 発想がかっこいいです!

 でも駄目です!

 殺すのは良くないです!


「がっはっはっはっ! おもしれーなあ!」


「何が面白いだよ! ほんっとアンタは昔から変わらないねリバー。良い? モーナス。知らないみたいだから教えてあげるけど、あー言う奴等は裏で恨みを買ってる分みんな身を守る事に用意周到なんだ。家族と言って一緒に歩かせてる奴等の殆どが護衛だよ。しかも護衛の強さは騎士クラスばかりさ。下手に手を出そうものなら返り討ちに会うよ」


「なんだ。それなら余裕だろ。こんな奴等ばっかって事だろ?」


「おい、モーナス嬢。こんな奴等とか言いながら俺に指をさすな」


「がっはっはっはっ! 猫の嬢ちゃんは頼もしいな!」


「はあ。まあ、モーナスが強いってのは認めるけどさ。言っとくけど、騎士クラスって言っても、あの世界最大国家のクラライト王国の騎士クラスだよ。そん所そこ等の騎士とはわけが違う」


「げっ。クラライトか。あそこはヤバい奴等ばかりだから流石の私でも苦戦するな」


 珍しくモーナちゃんが顔をしかめて弱きな事を言いました。

 少し不思議に思いましたが、実は何となくですが知ってます。

 愛那ちゃんが本で学んだ事を教えてくれました。

 一番大きな国でとっても素敵な王国で、それを護っている騎士の皆さんもとっても強いらしいです。


「そう言う事。だから今はそんな面倒な連中に、マナ達が変に目を付けられない事を祈るしか出来ないわ。私等は子供達を孤児院に連れて行かないといけないからね」


「そうだな。だが、何かあった時の為にそいつ等の情報は集めた方が良いな」


「何かあった時……か。デリバーの旦那、あんまり怖い事言うなよ」


「まったくだね。アンタは直ぐそうやって悪く考える。悪い癖だよ」


「すまねえ」


 このお話はここで終わりました。

 何かあった時と言うのは、私の心に大きな不安を残しました。

 でも、でもきっと大丈夫です。

 愛那ちゃんは凄い子です。

 お姉ちゃんの私よりずっとしっかりしていて、頑張り屋さんなんです。

 そんな可愛い愛那ちゃんが酷い目に合うはずなんてありえません!

 私は愛那ちゃんと無事にまた会える事を信じます!


 ぐ~。


 お腹が鳴りました。

 愛那ちゃんの事が心配ですが、生理現象には逆らえないみたいです。

 仕方が無いのでご飯を美味しく食べようと思います。


 ご飯を食べに行こうとすると、デリバーさんに笑われました。

 その後デリバーさんがドンナさんに頬っぺたをグーで殴られていて痛そうでした。


 ご飯は私1人で行く事になりました。

 モーナちゃんも誘いましたが、ドンナさんから詳しくお話を聞くそうです。

 私も気になりましたが、腹が減っては戦は出来ません!

 ご飯を食べたらモーナちゃんに聞いた事を聞こうと思います!


 そうしてやって来た食堂は、いっぱいの人で溢れていました。

 でも問題ありません。

 ここのご飯はバイキング形式なので、注文に時間がかかる事は無いのです。

 いつでも美味しいご飯が食べられます。

 席は自分で選んで登録するシステムになっているので、わたしは席を選んで登録しました。

 窓際のカップル席です。

 モーナちゃんが来た時の為に選びました!


 それでは早速レッツバイキングです!

 お料理が並ぶコーナーに行って、おぼんの上にお皿を並べて選んでいきます。

 異世界のお料理は見た事も無い珍しい物ばかりで目移りしちゃいます。

 そうしてお料理を選んで席に座って、いただきますをして食べ始めると、知らないメイドさんが私の側にやって来ました。


「相席してもよろしいでしょうか?」


ふぁ()ふぁい(はい)ひいへふふぉ(いいですよ)


「ふふ。ありがとうございます」


 凄く綺麗な女性でした。

 綺麗な空色のポニーテルが可愛くて、赤紫色の瞳は宝石の様です。

 それに、細くて姿勢が良いスレンダー美人です。

 メイド服がとってもよく似合う大人な雰囲気の綺麗な方です。

 ちょっと憧れちゃいます!


 スパゲティ美味しいです!

 次はこのお肉をいただきます!


 何のお肉か分かりませんが、一口サイズに切られたサイコロステーキにフォークを突き刺します。

 すると、相席したお姉さんが楽しそうに微笑みました。


「美味しそうに食べますね」


「はい! 美味しいです!」


「ふふ。そうね、美味しいですね」


 私とお姉さんは微笑み合います。

 とっても優しそうな人です。

 なので、私はこのお姉さんに興味が湧きました。


「私、瀾姫なみきって言います。お姉さんのお名前をお聞きしてもいいですか?」


「私? 私はメレカ。ナミキ……珍しい名前ですね」


「そうですか?」


「ええ。それに人間なのに黒い髪も珍しいですね」


「へう……」


 ヤバいです!

 愛那ちゃんから、黒い髪の人間は珍しくて悪い人に狙われるから隠そうって言われてるのに、もうばれちゃいました!


「わ、私はお猿さんです。お猿さんだから黒くても普通です」


 目を合わせられません。

 汗がいっぱい出てきます。

 メレカさんから目を逸らして、必死に誤魔化しました。


「……そう。猿の獣人なのですね」


「は、はい。そうです。お猿さんです」


 やりました!

 誤魔化しのプロと呼んで下さい!


 安心してサイコロステーキをパクリ。

 誤魔化しきったと言う勝利が甘美な調味料になって美味しさも倍増です!


 話始めはちょっぴりヤバかったですが、この後は何の問題も無くメレカさんと楽しくお喋りしながら食事をしました。

 メレカさんはクラライト王国でメイドさんのお仕事をしているそうです。

 さっきモーナちゃん達とお話していた時の国の名前を聞いて、最初びっくりしちゃいました。

 それから、メレカさんはお友達に頼まれ事をされたので、休暇をもらって私達と同じ水の都フルートに向かっている途中らしいです。

 メレカさんは魚人さんらしくて本当は船を使わなくても泳いで行けるそうなんですが、お友達からの頼まれ事で凄い長い距離を移動していて、そのせいで疲れたので船を利用したそうです。


 私も話せる身の上話をお話しました。

 愛那ちゃんと言う世界一可愛い妹がいる事と、愛那ちゃんと言う世界一お料理が上手な妹がいる事と、愛那ちゃんと言う世界一可愛い妹がいる事を!

 大事な事なのでいっぱい言いました。

 メレカさんにも妹さんがいるらしくて、いっぱいお話が弾みました。


 楽しい食事の時間が終わって、メレカさんとお別れする時です。

 私はメレカさんに恐ろしい事を言われました。


「猿の獣人の特徴は長い尻尾と、個人差はあるけど大きな耳だから、今度からはそう言ったものを用意しておいた方が良いですよ。お話出来て楽しかったです。ナミキ、また会いましょう」


「は……はい…………」


 バレバレでした!

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