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幕間 消えたプリンの謎を追え!集え!幼女探偵団!

※今回はラヴィーナ視点のお話です。

 ドワーフ城の食堂で事件が起こった。

 それは、私がグランデ王子に頼まれて、プリンを皆にご馳走しようと食堂に来た時に起きた。


「ラヴィーナちゃん、本当にグランデ様が私達の分のプリンもあるって言ってたの?」


 そう質問したのはメソメ。

 愛那まなと同じ人間。


「そう。言ってた」


 私は頷いて、食堂の長テーブルの上で無造作に置かれたプリンが入っていた容器に視線を向けた。

 プリンの食べかすだけが残った空の容器が9個。

 私、チー、メソメ、クク、フープ、カルル、ペケテー、モノノ、ポフー、で私達は全部で9人。

 この空になった容器は、間違いなくグランデ王子が言ってたプリン。


「大事件だな」


 ククが顎に手を乗せて呟いて目を光らせる。

 それを見て、フープとモノノが目を輝かせて、メソメとペケテーが身を寄せ合って震えた。

 カルルは眠そうにあくびして、ポフーは首を傾げていた。

 そしてそんな中、チーが手を上げて真剣な面持ちで口を開く。


「犯人を捜そうよ」


 皆はチーの言葉を聞いて、驚いた顔をして、直ぐに真剣な面持ちで頷いた。

 犯人を捜してもプリンは戻ってこないし、別に捜す必要は無いと思う。

 でも、断る理由もないし、皆の意見に賛同する事にした。


「ここに、探偵団結成だ!」


「「「おおーっ!」」」


 ククが声を上げて、皆が握り拳を作って一斉に手を上げた。


 皆は残っていた空の容器を調べ始める。

 空の容器を手に取って、皆が話し合っている間に、私は1人で厨房ちゅうぼうを調べ始めた。

 厨房には二つ出入りできる場所がある。

 その一つが食堂と厨房の間だ。

 食堂と厨房の二つの間には、食事を受け渡しする為のカウンターがある。

 それは食堂から入れるようになっていて、カウンターの側の壁に扉の無い出入口がある。

 私はその出入口から入って、厨房にある食料を保存する冷蔵庫を開けた。


 冷蔵庫は愛那の世界にもあるらしい。

 どの家庭にも普通にあって、この世界と違って魔石で冷気を流さなくてもいいと言っていた。

 魔石を使わなくても冷たい空気が流れるなんて凄いと思った。

 それに、何処でもあるのが本当に凄い。

 冷気を流す魔石は高い。

 お金持ちしか持てないし、定期的に取り替えないと効果が切れてしまう。

 氷の魔法は上位の魔法だから、本当に一部のお金持ちしか持って無い。


 ここの冷蔵庫は大きな倉庫みたいだった。

 扉を開けると、私の家の2件分の広さがあった。

 この広さで冷気を保てる魔石を使うなんて、流石お城だと思った。


 冷蔵庫の中に入ると、私を追ってチーがやって来た。


「ラヴィちゃん待って」


 チーは私の手を取ってつないで、ニコニコ笑った。

 私とチーは奴隷市場の館で変な別れ方をしたけど、事件が解決して直ぐに仲直りした。

 チーが泣きながら謝ってくれたから、気にしなくて良いと言って、愛那と一緒にゆびきりをして仲直りした。


「寒いね。おトイレ行きたくなっちゃうかも」


 ニコニコ笑っておトイレと言ったチーの顔を見て、私はふと思いだした。


「ケプリ」


「ケプリ?」


「そう。ケプリ。インセクトフォレストのフンコロガシのケプリ」


「ふんころ? その人がどうかしたの?」


「違う。ケプリは人じゃない。しゃべる3メートルくらいの大きな虫。ドワーフの鉱山街でチーに会ったって言ってた」


「喋る3メートルの虫さん……あ」


 チーが何かを思い出して、大きく口を開けた。

 それから、繋いでいた手を離して、両手を合わせて笑んだ。


「会った事あるよ。そう言えばケプリって言ってた。あの時は悪い事しちゃったな。お義姉ちゃん達に色々言われて……」


「気にしなくて良い。元気にやってる」


 2人の間に何があったか分からないけど、ケプリが元気なのは本当だからそう言った。

 チーははかなげに笑んで「うん」と頷いた。


 チーと一緒に冷蔵庫の中に何かないか探したけど、あるのは食材と瀾姫なみきと一緒に狩猟した牛土竜うしもぐらのあまった肉しかなかった。

 冷蔵庫を出ると、目の前にメソメ達がいた。


「何か見つかった?」


「ない」


「そっかあ。どうしよう?」


 メソメがククに視線を向ける。

 すると、ククが腕を組んで私の目をジッと見つめた。


「ラヴィーナ隊長、私はナミキさんとモーナスさんのどっちかが犯人だと思うんだけど、どっちが犯人だと思う?」


「瀾姫とモーナスのどっちか…………ん?」


 何故か探偵団の隊長になってた。

 理由は私が5歳で最年少だから、隊長の座をゆずってくれたらしい。




 2人が犯人だとは思わなかったけど、皆からの疑いを晴らす為に、瀾姫とモーナスを調べる事になった。


 瀾姫の疑いの理由は、甘いもの好きでプリンが大好きだから。

 モーナスの疑いの理由は、何も気にせず食べそうだから。

 理由にしては弱いと思ったけど、今は何を言っても意味が無いと思って黙っておいた。


 まずは皆別々に城の中を動き回る。

 見つけても見つけなくても、1時間後に食堂に戻って来る事になっていた。


「2人がいたよ~。お庭で何か話してた~」


 1時間を少しだけ越えて、遅れて食堂にカルルが入ってきてそう言った。

 同時に2人を見つけれたのは運が良い。

 2人の無実がこれで証明できる。


「あれ? カルルちゃん、頭に何かついてるよ?」


 ペケテーがカルルに近づいて、後頭部についていた何かを取って首を傾げた。


「草?」


「眠くなって寝ていたから、その時についちゃったのかも~」


「そ、そうなんだ?」


「寝てたのかよ!」


「それで遅かったんだね」


「カルルは直ぐ寝るから」


 皆がカルルを囲って騒ぎ出す。

 このままだと、騒いでいる間に瀾姫とモーナスが移動してしまうかもしれない。

 だから、私は魔法で氷を出して、一人一人の顔にペタリとくっつけて騒ぎを止めた。

 少しだけ悲鳴を上げた子もいたけど、石ころサイズの氷をくっつけただけだから問題無い。


「皆、早く行こう」


「そうですね。ラヴィーナの言う通りです」


 私の言葉にポフーが同意して、私達は庭園へ向かった。


 庭園の芝生の上で、瀾姫とモーナスが話をしていた。

 2人は真剣な表情で、何やらただ事ではなさそうな雰囲気だ。

 私達は2人に気付かれない様に、こそこそと静かに物音を立てずに近づいて行く。

 丁度近くにまん丸アートな大きめの木があったので、そこに身を隠して聞き耳を立てる事にした。

 何人か尻尾がはみ出てる気もするけど、バレてなさそうなので、声を出せないし放っておく。


「その件ですが、これを見て下さい」


「わかった」


 瀾姫が真剣な表情で紙をモーナスの前に置いて、モーナスは頷いてそれを見た。

 ここからだとその紙が何かは分からないけど、何か絵が描いてあった。


「これが、すき焼き……か」


「はい。とっても美味しいです」


 ごくり。と、モーナスが唾を飲み込む。

 その顔は真剣だった。

 でも、真剣な表情で何事かと思ったけど、瀾姫の「とっても美味しいです」でただの食べ物の話だと分かって気が抜けた。

 だけど、皆は違った。

 モーナスが言った「すき焼き」と言う食べ物らしい単語に興味津々だ。


「これをマナに頼んだのか?」


「はい。プリンを美味しそうに食べている愛那ちゃんに頼みました。一口貰いました。美味しかったです」


 その時、皆の脳裏に電流が走った。


「犯人はマナだった?」 


 ククが呟いた。

 他の皆はククに注目して、驚いた顔をしている。

 私は少し頭が痛くなった。


「マナねえちゃんがモノノのプリンを……」


「し、信じてたのに……」


 モノノとペケテーが尻尾をだらんと下げる。

 そしてそれを見て、ポフーが悲しそうな顔で2人を抱きしめる。

 メソメは顔を青ざめさせて言葉を失っていて、カルルはショックで気絶した。

 ククが気絶したカルルを見て「どうしてこんな事に」なんて言っている。

 そして、チーとフープは……。


「マナお姉ちゃん食いしん坊だね」


「ねー」


 凄い和やかだった。

 ここだけ別世界で、周囲との差が激しい。

 でも、皆絶対勘違いだ。


 愛那がプリンを食べていたのは瀾姫の言葉で事実だけど、絶対に犯人じゃない。

 瀾姫じゃないから愛那はそんなに食べない。

 それに愛那は大人だから、瀾姫と違ってちゃんと片付ける。

 あんなテーブルの上に食べ終わった容器を放置するなんて絶対に無いし、逆に容器を洗って綺麗にする。

 このままだと、愛那が濡れ衣を着せられてしまう。


「皆落ち着いて。一度食堂に戻ろう」


 皆は私の言葉を聞いて、素直に頷いてくれた。

 良かった。


 今はもう一度現場に戻って、何か手がかりがないか探すのが一番良い。

 愛那を犯人なんて言わせない。




 食堂に戻って来ると、そこには先客が……愛那がいた。

 私達は直ぐに気がつかれないように隠れて、愛那の様子を見る。


 テーブルに置きっぱなしにしていた容器は綺麗に片付けられていて、容器があった場所には何冊か本が置いてあった。

 愛那は椅子に座っていて、本を読んでいた。

 多分料理の本だ。

 ページがめくられた時に、美味しそうな料理の絵が載っていたから合ってると思う。


 誰もが真剣な表情で愛那を見ていたけど、それは最初だけだった。

 それは私も同じで、少しだけ口角が上がってしまう。

 愛那の今の姿を見たら、誰もが同じ様になってしまうと思う。


 愛那は料理の本を読みながら、足をぶらぶらと揺らせていた。


「マナねえちゃん可愛い」


「そう、愛那は可愛い」


 モノノに同意する。

 愛那本人は気付いてないけど、誰もいない所で足の届かない椅子に座ると、よく足をぶらぶらとさせている。

 私は瀾姫と一緒に何度もこっそり見てる愛那の可愛い所だ。


 愛那が動いた。

 独り言で「よし。作るか」と言って、本を綺麗にテーブルに置いて、鼻歌を歌いながら厨房に向かった。

 鼻歌も愛那が1人でいるとよくやるものだ。

 鼻歌の歌は愛那の世界のものだ。

 瀾姫に聞いたら、愛那の好きなアニメの歌だと言っていた。

 アニメはよく分からないけど、アニメと言う名前の国か村の民謡みんようかもしれない。


 愛菜は厨房で冷蔵庫に入って、牛土竜の肉と色々な食材を持って来ると、今度は色々な調味料を取り出す。

 それから、楽しそうに鼻歌を歌いながら、手際よく料理を始めた

 そして、愛那は鼻歌のリズムに乗って上半身や頭を揺らす。


 皆は愛那をジッと見ていた。

 私には分かる。

 愛那は料理をとても楽しそうに作る。

 本人は「他に作れる人いないし仕方が無いから」と面倒臭そうに言うけど、料理を作っている時の愛那は本当に楽しそうだ。

 そんな愛那の姿を見たら、私も楽しくなる。

 だから、皆も同じなんだと思う。

 皆の顔を見ると、目を輝かせていた。


 そんな時、突然厨房の扉が開かれた。

 愛那は鼻歌を止め体を硬直させて、開かれた扉の方に視線を向けた。

 ここからだとよく見えないけど、耳が真っ赤になっているから顔も真っ赤だと思う。


 開いた扉の所に立っていたのは、この城のシェフだった。

 シェフはいつものコックコートを着ていたから、多分今から料理の仕込みに取り掛かる予定だと思う。


 シェフは愛那と目を合わせると、愛那に何かを話しかけた。

 ここからじゃ聞こえないけど、愛那は慌てて料理していたものを片付けようとしたから、怒られたのかもしれない。

 でも、違った。

 直ぐにシェフがそれを止めて、苦笑しながら何かを喋って愛那に近づいた。

 愛那は頭を何度か下げて、また料理を再開する。

 そして、シェフが何かを愛那に言って、それを愛那が真剣な表情で聞いて料理をしていた。

 あの様子だと、牛土竜は扱いが難しい食材らしいから、愛那がシェフに調理方法を教えてもらってるのかもしれない。

 その姿は、さっきと違っていて凄くかっこよかった。


「皆どうしたなの?」


 不意に声が聞こえた。

 振り返ると、そこに立っていたのはスミレだった。

 スミレは不思議そうに私達を見ていて、そして、私達の顔を一人一人順番に見て何故か顔を青くさせた。


「マナが私達のプリンを食べたから、その証拠を掴む為に見張ってたんだ」


 ククがそう言って、愛那に視線を向ける。


「でも、私はもういいや。何か作ってるみたいだし、それを頂いて水に流す事にした」


「ぷ、プリンって……マナちゃんが食べたなの?」


「はい。マナねえさんが、あそこのテーブルの上にあった私達のプリンを全部食べてしまったんです」


 ポフーの言葉で、更に顔を青くさせたスミレが、今は本が置いてあるテーブルを見た。

 それを見て私は確信した。

 スミレが顔を青くさせた時点で、なんとなく私には分かった。

 どうやら、そう言う事の様だ。


「ご、ごめんなさいなのよー! そこにあったプリンを食べたのは私なのよ!!」


「「「ええええええええええええっっ!!??」」」


 スミレは私達の前で勢いよく土下座して、皆は大声を上げて驚いた。

 思った通りだった。

 犯人はスミレ。

 こうして、事件は解決した。




 愛那への疑いが晴れて、愛那の平和が護られた。




 余談。

 スミレと驚く皆の声が大きくて、愛那に私達がこっそり見ていた事がバレて、ククとフープがずっと見ていた事までバラしてしまった。

 愛那は顔を真っ赤にさせて恥ずかしがっていて、それが可愛かった。

 プリンを全部食べてしまったスミレに理由を聞くと、スミレもグランデ王子にプリンが置いてあるから食べていいと言われて、私達の分だと知らずに何も考えず食べてしまったそうだ。

 死んで詫びるとか言ったのを愛那に止められて、愛那がプリンを作って事無きを得た。

 愛那の作ったプリンはとても美味しかった。

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