罪と罰と
3話目です。残り1話
生まれて初めての彼女ってヤツが出来てから、1年ぐらい経った。
今まで以上に、色んな場所にデートに出掛けた。
彼女が居るって事が、こんなにも幸せな事なんだ。って知らなかった。
浮かれまくってた。
今、あの当時の事を思い出しても、自然とニヤニヤとしちゃうぐらいだ。
彼女には、ちゃんと俺が、ガン○ムが大好きな、オタクだって事も告白した。
彼女は、俺に、白い口の無い猫(ハローしちゃうアレの事な)のキーホルダーを見せてきて。
『私も、この猫の事が大好きなんだ、私も同じオタクだね』
って……。
ケンカもした。
沢山、お互いの事も話した。
ちょっとした、行き違いなんか数えられないぐらいした。
俺は、その当時、今みたいに、パソコンも持ってなかったし、趣味と呼べるような物は、たまに借りてくるアニメのDVDを視るか、スロットぐらいしか無かったから、スロットに何万円も使うぐらいなら、彼女の為に使おう。なんて、ちょっとズレた事をしてた。
『毎月のように、服を買ってくれるけど、そんな事しなくていいんだよ』
彼女は、俺にそう言ってくれてたが、俺は心の何処かで、まだ恐怖を感じて怯えていたんだ。
嫌われてしまったら?
もう、付き合えないとフラレてしまったら?
そんな不安を払拭するために、彼女に物を与えて、繋ぎ止める。
そんな、最低な事をしていたんだ。
『ヤス君から聞いてるよ、ヒロ(あっ俺の名前な)君って、私と付き合うまで、ずっと彼女が居なかったって事も、ヤス君が言ってた、アイツは彼女と言う存在との経験値がゼロなんだ、だからきっとトンチンカンな事をする、そんな時は、どうか笑って許してやって欲しいって』
そう彼女から言われた時に、俺は素直に自分の気持ちを話した。
何かしないと、嫌われてしまうかも知れない。だから、服を毎月買ってたんだ。って。俺は、女の子にモテた事が無い、ブサイクなオタクのままなんだ。って。
めっちゃ怒られた。
『私の彼氏の事を、ブサイクなんて言わないで!』
って。
こうして、俺は、初めての彼女のおかげで、じょじょにレベルアップを果たして行ったんだ。
彼女と楽しくも幸せな日々が、この先もずっとずっと続くと思ってた。思い込んでた。
まさか、俺がその幸せを自分の手で、手放す事になるなんて、思いもせずに……。
人は馴れる生き物だ。
自分の置かれている環境に。
俺も例外無く、彼女が居る環境に馴れてしまっていた。
いつしか、居て当たり前の存在になっていた。
俺は、その頃、人生には必ず1度は、モテ期が訪れる。って誰かの言った言葉を、自分自身で感じていた。
彼女が出来たから自信を持ったからなのか、俺はその頃、急にモテるようになっていった。
キャバクラに飲み行けば(ケンカしたけど、付き合いもあるからって事で許して貰えてた)キャバ嬢に。
後輩の友達の友達に、告白されたりもした。
一応は、彼女が居るからと、断わりはするのだが、本来の俺は、女の子にモテていた人生よりも、圧倒的にモテて無かった人生の方を長く生きて来た。
どこか、甘い考えを持っていた。
彼女に知られてしまった。
彼女は、泣いていた……。
悲しくて泣いていた……。
彼女が悲しみの涙を流す姿を初めて見た……。
嬉しくて、感動して流す涙は何度も見た……。
同じ泣き顔なのに、全然違ってた……。
そうして……罪を犯した俺には、罰が与えられた。
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