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動き出す前の運命

普段は、おちゃらけた小説ばかり書いてますが、たまには、真面目に書かないと、その内誰かに刺されそうなので(照れ隠し)

 俺のこれまでの人生って奴は、良い事よりも悪い事の方が多かった。

でも、今日からは、違うだろう。楽しい人並みの人生をやっと送れるのだから。


 俺は現在31才。仕事は周りに男しか居ない、建設作業員。

小学校から高校卒業するまでの、12年間ずっとカーストの底辺に居た。女子と話す事なんて、ほとんど無かった。

そんなカースト底辺の俺に彼女なんて出来るはずも無い。


 そして俺は、高校卒業して働き始めてから今日まで、ずっと実家に住んでいる。だから、周りに居る奴等だって、俺がずっとカースト底辺野郎だって事を知っている。

出会いなんて起きる訳が無い。


 俺は、親の働いていた会社に、親の紹介で働き出した。

職人さん達に囲まれ、毎日コキ使われていたが、色んな所に遊びに連れていって貰ったりもしていた。

飲み屋やキャバクラ。風俗なんかも職人さんに連れられて行ったのが最初だ。会社の慰安旅行で、温泉地に行った時に、親方にオゴって貰った、所謂そう言うお店で、女性の体を初めて知った。


 俺には、一人、家が近所で小さな頃から、よく一緒に遊ぶ友達が居る。ソイツの名前はヤスって名前で、家は、小さな町工場を経営していた。

ヤスは、顔もカッコ良く、話も面白く、金回りも良かったから、物凄く女性にモテていた。中学生から今までに、彼女と言う存在が居なかった日が1日足りとも無かっただろう。それぐらいモテていた。


 ヤスの彼女の友達。なんかを紹介して貰った事も何度もある。

だけど、その紹介してくれた女性が、俺の彼女になった事は、一度も無い。


 ある日、俺は、俺がモテずに彼女も出来ない。と言う、ヒガミからヤスとケンカをしてしまった。


 「はいはい! どうせ俺はお前と違ってモテませんよ~顔も老け顔だし、ブサイクですもんね~アナタと違って」


 こんな感じのヒガミの言葉を、ヤスに言ったと思う。


 ヤスは、俺に、反論した。今にして思うと、俺を励ましてくれていたのか、面倒くさいから適当にあしらっていたのかは、不明だが……。


 『お前さ、何か根本的に勘違いしてない? まぁ確かに顔は生まれ持った物だから、仕方ない部分もあるけど、俺が与えられた物だけで、女にモテてると思ってる? 女にモテたいなら、女にモテる行動を起こさなきゃモテる訳が無いだろ?』


 『お前、身長いくつあるのか言ってみろよ』


 ヤスにそう言われて、コイツ何言ってんだ? そう思いながらも、この時の俺は、何故だが、コイツと真剣に話をしないと駄目だ。そう思っていたんだ。


 「185cmだけど?」


 『俺の身長は、164cm! ちょっと背の高い女が居たら、俺の方が身長が低くなるんだ! そして、女って奴は、背の高い男が好きだ! お前のその身長なら、よっぽどな事でも無い限り、ハイヒールなんかを履いても、女の方が身長が低いままだ!』


 俺はまだ、この時点では、コイツの言いたい事に、全く気づいてなかった。


 「それが、どうしたんだよ?」


 『だぁ~! 分かんねぇのかよ! 身長が高い事を、コンプレックスに感じてる女にとって、お前は、自分よりも身長の高い彼氏になれる貴重な存在なんだよ!! 気付けよ! 自分の価値に』


 『それと! お前のその、ガン○ム好きなところ! 女でも男でも、誰彼構わずに、語り始めるだろ? 女が、ガン○ムの話を振られて、付いていける訳ねぇだろ! 隠せよ、ガン○ム好きな事を』


 「でも、俺……お前も知ってる通りに、女と何を話していいのか、分からんのだけど?」


 『女って奴等は、話をするのが好きなんだ、だから自分の話を聞いてくれると嬉しいと感じるんだ、お前は話し下手で、口を開けば、ゲームやアニメの話しかしないんだから、女の話を徹底的に聞く奴になれ! 鬱陶しく思えても、面倒くさいと思えても、女が楽しそうに話してたら、笑顔で! 悲しそうに話してたら、悲しそうな顔で! 話を徹底的に聞いてやれ!』


 目から鱗だった……。

今まで、そんな風に考えた事なんて無かった。自分の老け顔が嫌いで、自分のブサイクな顔が大嫌いだった。

女にモテないのも、彼女が出来ないのも、全てこの顔のせいだと思っていた……。


 「なっ……なぁ? 本当に本当か? 俺の身長って女にモテる要素なのか? お前の言う通りに、話を聞いてるだけで、俺みたいなブサイクでも女に好かれるのか?」


 『ああ! 断言してやるよ! それとな、お前、顔が老け顔で嫌だって言ってるが、老け顔なんかじゃないぞ? 確かに、中学生の時だったら、老け顔に見えてたが、30才になった今から見たら、むしろ若く見える顔なんだぞ』


 俺の顔が若く見られる顔? コイツ何言ってんだ? 中学生の頃からずっと、老け顔、老け顔って言われ続けたんだぞ?


 俺は、この時も知らなかった。若い時に老け顔だった奴は、それなりの年齢を過ぎても、顔があまり変化をせずに、逆に若く見られる事もある。と言う事を。


 『証明してやるよ! お前、今財布の中にいくら入ってる?』


 「え? 明日スロット打ちに行こうとしてたから、4万ぐらいは入ってると思うけど?」


 『それじゃ、明日のパチンコ屋は中止な、ちょっと今から俺に付き合え』


 そう言うと、酒を全く飲めないくせに、飲み屋の雰囲気が好きな、後輩を呼び出して、車で出掛けていった。


 そのまま、3人で、少し離れた繁華街まで行くと、キャバクラに入って行った。

席に案内されると、指名はあるか?等の、お決まりのやり取りをするのだが、その時にヤスは、俺の事を指差しながら、こう言ったんだ。


 『コイツには、背の高い子を優先的に付けてやってよ』


 そして、要望を伝えた後に、俺にアドバイスをくれた。


 『いいか? 挨拶をした後は、ニコニコしてろ、無理に話さなくていいから、そうしたら、向こうが勝手に、話題を提供してくるから、例えばそうだな……「背、高そうですね」とかな、その質問が来たら勝ちだ、ちゃんと自分の身長を話してやれ、何なら椅子から立ったりしてもいい、後は、女の子が話す事を黙って聞いてろ』


 半信半疑のまま、言われた通りの事だけをした。

何人か、女の子が入れ替わり、ヤスの言う通りに、席を立ってみたりもした。


 結果……。ビックリした、今まで何回かキャバクラに行った事はあった。でも、女の子の名前が書いてある店が用意した名刺なんかを貰ったりするだけだったのに、今日は、何人かの女の子の方から携帯の番号や、メールアドレスを教えて欲しい。

そう言われた。


 その後、店をでた、俺は、酒の飲めない後輩が運転する車の中で、ヤスに報告したんだ。


 「5人の女の子が付いて、連絡先を3人の女の子に聞かれた、連絡先を聞かれたのなんか初めてだ」


 『ほらな、俺の言った通り、お前はモテるんだよ! ただ、お前の事を好きになってくれる女の子は、俺やコイツ(後輩)の事を好きになってくれる女の子と、違う種類の女の子ってだけで』


 《先輩、この際だから俺からも言わせて下さい、俺や先輩みたいに、あんまり顔がカッコ良い訳じゃ無い男は、女性の事を顔で選んじゃダメっすよ~俺達みたいな奴と、付き合ってくれるってだけで、貴重なんすから》


 後輩の言う通りだった。俺は、俺の周りに居る、顔のカッコ良い友達が連れている、可愛かったり、キレイだったりする、そんな彼女が欲しいって、ずっと思ってた。ブサイクのくせに理想だけが、無駄に高かったんだ……。


 夢みたいな日は、1日だけで終わる事は無かった……。

ヤスは、俺に初めての彼女が出来るように、協力してくれるって言ってくれたんだから。


 それからの俺は、モテないのは、モテない行動や言動をしているから、モテない。モテるのに、顔なんか関係無い。って、思うようにしたんだ。


 週末になる度に、ヤスと後輩と俺の3人で、キャバクラに通った。色んな店に行き、色んな女の子と話をした。

ヤスからのアドバイス【まずは、女の子と話すと言う事に、兎に角馴れろ、向こうは、金貰ってるんだから、少々変な事言っても笑っててくれる】を実践して、女性と言う生き物に馴れていった。


 馴れていくにしたがい、どんな話しをしたらウケるのか、どんな態度で話を聞いたら好印象を持たれるのか、色んな事に気付いていった。

自信が付く事によって、余裕が生まれてきたからだと思う。


 そんなキャバクラ通いの修行をしていたある日、割りと良く行く店の、俺も何回かは、指名をした事がある子が、バイトを辞める最後の日ってやつに、たまたま遭遇した。


 その子は、俺の横に付いて、今日でバイトを辞めると言う事と、何回か指名してくれてありがとう。とお礼と報告をしてきた。


 その時の俺は、特に何も思って無かったのだが、俺達が帰る時に、俺の携帯の番号を聞いてきた。俺は、特に何も考えずに、番号を教えた。それまでの修行の日々でも、聞かれる事があったから、本当に何も考えず教えた。


 帰りの車中で、ヤスに言われた。


 『キャバクラ通いも、もう終了かもな、キャバクラに使ってた金を他の用途に使わないといけなくなりそうだもんな』


俺は、意味が分からず、ん? って顔をしていたと思う。


 『だぁ~! 女の子に馴れたぐらいじゃボンクラは直りませんか? お前、帰り際に、あの子から携帯の番号を聞かれてたよな? バイトを今日で辞める子が、店に遊びに来てね、なんて営業の電話する事も無くなるのに、番号を聞いてきた意味ぐらい、直ぐに分かれよ!』


 「え? え? ひょっとして?」


 『そうだな、その子と付き合えるかどうかは、分からんが、間違いなくお前に好意は持ってるだろうな』


 その言葉を聞いてから、地元に帰り付くまで、俺はずっと上の空だったらしい。恥ずかしい事に。

全4話。

この後、続けて完結まで連続投稿します。

読み飛ばしに、ご注意下さい。


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