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灰色帝都の紅い死鬼  作者: 平田やすひろ
蛇落の褥
31/153

-蛇落の褥- 6-4

 かざぐるまが、カラカラと回っている


 曼殊沙華(まんじゅしゃげ)が、暗闇に浮かんでいる


 参道は、どこまでも続く



 果てが無い



 どこまでも、闇、やみ、ヤミ・・・




 ――ねぇ




 声を掛けられて、少年は暗い参道を振り返った。


 しかし、延々と続く参道には、誰もいない。


 少年は、いぶかし気に辺りを見回した。




 ――ここだよ




 しかし、声の主は見当たらず、どこまでも黒く澄んだ闇が、曼殊沙華の群生に広がっているばかりであった。


 すると、聞こえてくる声が、今にも泣きそうな声を上げる




 ――くるしい




 僕もだよ。




 少年は慰めるように、声の主に呼び掛けた。


 すると、どこからか聞こえてくる声は、嬉しそうにつぶやく。




 ――おんなじ




 同じだね




 ――おかしい




 声の主は、クスクスと笑い出した。


 少年も、おかしくなってきて、一緒に笑う。




 ――あそぼ




 何処にいるの?




 ――・・・わからない




 泣いてるの?





 ――て を かして





 いいよ





 言うか否や、少年の手首から先が吹き飛んだ。


 黒い霧のようなものが、手首から茫洋(ぼうよう)と漂う。


 ぼんやりと、手の形になろうとするが、行き場が無いのか、ハッキリとした形にはならなかった。




 ――オソロイ




 おかしくて息も出来ないとでも言うような、引きつった笑い声が辺りに響く。


 無くなってしまった自分の手を見て、少年は悲痛な声で懇願(こんがん)する。




 返して・・・ねぇ、おねがい・・・かえして・・・




 少年は、中天(ちゅうてん)を仰いで、腕を伸ばした。




 これじゃ・・・なにも、できな・・・い・・・だって・・・・だって・・・







 テ ガ ナ イ ヨ 







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