-蛇落の褥- 6-4
かざぐるまが、カラカラと回っている
曼殊沙華が、暗闇に浮かんでいる
参道は、どこまでも続く
果てが無い
どこまでも、闇、やみ、ヤミ・・・
――ねぇ
声を掛けられて、少年は暗い参道を振り返った。
しかし、延々と続く参道には、誰もいない。
少年は、いぶかし気に辺りを見回した。
――ここだよ
しかし、声の主は見当たらず、どこまでも黒く澄んだ闇が、曼殊沙華の群生に広がっているばかりであった。
すると、聞こえてくる声が、今にも泣きそうな声を上げる
――くるしい
僕もだよ。
少年は慰めるように、声の主に呼び掛けた。
すると、どこからか聞こえてくる声は、嬉しそうにつぶやく。
――おんなじ
同じだね
――おかしい
声の主は、クスクスと笑い出した。
少年も、おかしくなってきて、一緒に笑う。
――あそぼ
何処にいるの?
――・・・わからない
泣いてるの?
――て を かして
いいよ
言うか否や、少年の手首から先が吹き飛んだ。
黒い霧のようなものが、手首から茫洋と漂う。
ぼんやりと、手の形になろうとするが、行き場が無いのか、ハッキリとした形にはならなかった。
――オソロイ
おかしくて息も出来ないとでも言うような、引きつった笑い声が辺りに響く。
無くなってしまった自分の手を見て、少年は悲痛な声で懇願する。
返して・・・ねぇ、おねがい・・・かえして・・・
少年は、中天を仰いで、腕を伸ばした。
これじゃ・・・なにも、できな・・・い・・・だって・・・・だって・・・
テ ガ ナ イ ヨ




