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灰色帝都の紅い死鬼  作者: 平田やすひろ
螺鈿の葬列
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-螺鈿の葬列- 20

 いつもの坂は雪でグシャグシャになっており、足止めするかのようにまとわりついてくる。


 忌々(いまいま)()に駆け上がると、黒い煙が、遠くに立ち(のぼ)っているのが見えて来た。


 尋常じゃない不安に駆られ、しばらく発作とは疎遠(そえん)だった心臓が縮こまる。




「・・・!?」




 坂を上りきると、水谷は、目の前の景色に愕然(がくぜん)とした。


 赤々と燃えたぎる炎が、工房から吹き出すように、中天に向かって手を伸ばしている。


 側に生えている桜の木も、その炎になでつけられていた。




「散華さんっ!!」




 水谷は一気に血の気が失せ、無我夢中で駆け出した。


 しかし、目の前に現れた蝶に、行く手を(はば)まれる。




「何で!?散華さん!!」




 叫んだ刹那(せつな)、蝶から紅蓮(ぐれん)の炎が吹き出した。


 それでも必死に飛んでいる姿を見て、水谷はすくい上げるように手を差し出す。


 先程まで震えていたのが嘘のように、水谷の(てのひら)の上で、蝶は毅然(きぜん)(はね)を立てて微動だにしなかった。




「やめてよ・・・こんなの・・・耐えられない・・・」




 蝶から燃え上がる炎は、篝火(かがりび)のように、水谷の手の中を照らし続ける。


 しかし、火の粉が爆ぜて散った瞬間、その勢いに飛ばされるように、蝶は一瞬で焼き尽くされたのだった。

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