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LEVEL 10  作者: 万紫千紅
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01 魔王祭




「―――――――――――リュカ!、リュカ!起きなさいってば!もう"魔王祭"始まってるわよ!!」


母の声で飛び起き、急いで目覚まし時計を確認する。短針が8の文字に触れかかっており、のんびりするだけの余裕がないことを明確に表していた。


「母さん!何でもっと早く起こしてくれなかったの!?」


「一時間以上前から私は起こしました!!その度に もう5分…… とか言ってたのはあなたじゃない!」


全く見に覚えがない。

とにかく今は急ぐことを最優先にするべきと、昨日準備しておいた服に着替え、少量のゴールドが入った財布をポケットにねじ込み、家から飛び出した。




例え国境付近の小さな村でも、城下町と同じ日に祭りが開催される。


"魔王祭"


毎年秋の終わり頃に開催される祭りで、初代魔王の功績を讃える祭りだ。町中が装飾され、普段は食べられない珍しいお菓子やパン等が出店に並ぶ。

また、キグルミやピエロなどがパレードをする年もあり、何もないこの街に活気が戻る大切な祭りだ。


「おはようリュカ!今夜の催しは期待しているぞ!!」


「ええ!任せてください!ビックリさせますから!」


その初日の夜、僕は魔法を披露することになっている。ちょっとした 土魔法 だが、生まれつき器用なので、簡単に造形作品を作ることができる。僕の特技だ。

そして今日は僕が魔導師としての資格を手にいれる為の大切な審査の日にもなっている。

首長直属の魔導師がわざわざ赴き、僕の魔法を見て審査をする、結果次第では家族をしっかり養える職業に就けるとあって、ここ数日の練習はとても力が入った。

失敗は許されない一発勝負、それまでの時間をリラックスした状態で過ごしたかった僕は友達と純粋に祭りを楽しんだ。







人の形をした石の彫刻がテーブルを支えるという悪趣味な部屋は、遥か昔からの魔王達の会議室になっている。豪華なステンドグラスがあるわけでもなく、立派なベランダがついている訳でもない、ただただここが落ち着く(・・・・)という理由で誰もここ以外を使いたがらないのだ。


「炎王、あなたまた弟子をとったらしいですね、何人目ですか?」


「8人だが」


「………それは多過ぎでは?」


少し茶化したような口振りで苦笑いを浮かべて雷王は軽口を叩く。


「フンッ!弟子を1人もとりたがらないお前に言われとうもないわ!」


部屋の温度が一気に上がり、氷王でさえ一瞬体温の調節が難しくなる。


「いやいや!そんなに魔力を荒げなくても……妖精王が怖がっているじゃないですか……」


テーブルの反対側の妖精王と呼ばれた少女は恥ずかしそうに顔を隠す。


「ムッ、すまぬ」


部屋の温度が徐々に下がり、申し訳なさそうに炎王は縮こまる。


「雷王殿、率直に言うが儂はお主が嫌いだ、王が弟子をとらぬなど前代未聞、にも関わらず儂に多過ぎるというのは可笑しな話だぞ」


「なるほど、今後は気を付けよう。すまなかったな、炎王」


やはり竜王がいなければこれだけ荒れるのか、他の王達は思い始めた時、会議室の扉が開き、若い男がゆっくりと入って来る。


「竜王様、お久しぶりです」


「おお!竜王!!」


「いや、待たせてしまって申し訳ない」


竜王と呼ばれた男は扉から一番遠い席に座り、他の王達も改めて席に座り直す。


「さて、大魔導師レオネッサの最後の弟子達が立ち上げた魔導師ギルド、『ミーティア』が消息を絶ってから早くも3年が経った」


「あの大きな戦争からもう3年か……」


「ああ、だが重要なのはそこじゃないんだ。今年の魔王祭で魔導師の資格を得ようとする男の子が問題でね」


「男の子、ですか?」


「ああ、レオネッサの後継者と言って良いほど魔力が濃いらしい」


全員が一瞬たじろぎ、言葉に詰まる。


「へぇ……で、どうしろと言うんですか?」


雷王が好奇心たっぷりの口調で竜王に問いかける。


殺して欲しい(・・・・・・)んだ」


「竜王様!」


氷王が立ち上がり、驚きを隠せていない顔で言葉を飲み込む。しかし竜王は目もくれずに話を続ける。


「今、暴風王には現地に向かってもらった、だけど気を付けて欲しいことがある。ミーティアの妨害が入れば例え暴風王でも殺害は難しくなると思う。万が一逃げられた時には全力で対象してくれ」


人として可笑しな話をしている間も竜王は笑顔を崩すことなく淡々と言い切る。


「そう……ですか………」


その姿は自分が憧れていた竜王とはかけ離れたものであり、同じ王としても見たくはなかった。


「どうした氷王、座らぬか。お主らしくない」


「いえ……」


正義の為に子供を殺せと言われたことに動揺したのは自分だけなのかと不思議になる。


「うん、言いたいのはそれだけ、じゃあ解散かな!」


竜王が解散を口走るその直前に扉がノックされる。


「お? 良いよ、入って」


「失礼しま~す…………」


入ってきたのは手入れされていないようなボサボサの髪の男。所々破れている薄い茶色のコートを着た男は堂々と室内に入って来る。


「……………貴様ッ!!」


再度炎王の魔力が膨れ上がり、部屋の温度が上がる。それも先程とは比にならない程まで。


「お久しぶりです、炎王殿。随分老けましたな、あんたも」


「何故、君がここに………?」


炎王だけではなく竜王の魔力も膨れ上がり、炎王の魔力と混ざりあって禍々しい魔力の塊が部屋を覆いきる。

大抵の魔導師ならば酔ってしまい、立ち上がることもできなくなる。


「ん~、竜王君らしくない話が聞こえたから、かな?」


だが、男はゆっくりとテーブルに近づいてくる。


「あっ、そうか俺のこと知らない王もいるんだよな。えっと、はじめまして。

魔導師ギルド ミーティア のギルドマスターやってる レオン です、仲良くしてください」


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