2話:えんかうんと、虚像の先とあおまる
そして二話目…
「起きろ! 純一! 起きろー!」
「うぅん……」
はっ。昨日土曜冷蔵庫味噌汁肉野菜炒め炊飯器米!おはよう。
「ふぁあ……起きたあ? 創のヤツ酷いのよ。ちょっと抵抗しただけなのに、ソッコーで引きずり回されたのよぉ? わたしまだ寝てたいんだけど……後頭部が痛いわ、あふぅ」
「はたくぞ」
うーむ。千影ちゃんはまだ頭が働いていないようだ。ということは創一が起きてからそんなに時間が経っていないのだろうか。しかし……
「今日の朝ご飯は確か昨日の残りを温めるだけだったはずだけど?」
「ちげぇよ! 周り見てみろ! ぜってぇ家じゃないだろここ! 真っ白じゃねぇか!」
目が覚めた。確かに壁まで真っ白だ。ポツンと白い椅子が置いてある以外は何もない。どこだここは……あ、千影ちゃんが二度寝してる。
寝る前のことを思い出してみよう。たしか、帰ってる途中に僕の体が大地からの離脱を試みて、それを止めようと千影ちゃんたちが僕にしがみついて……
「怜士さんが跳んだ時に急に速度が上がったんだ。怜士さんは、間に合わなかったみたいだな。で、気付いたらここにいたんだよ」
なるほど。分かることは1つもない、ということか。
「じゃあもう1回寝る。動きがあったら起こしてほしい」
果報は寝て待て。おやすみぃ……
「待てやオラ」
『仲良いね君たち』
突然声が聞こえた。見ると、さっきまで誰も座っていなかったはずの椅子に、黄色い、黄色い……なんだろう。デフォルメされたクラゲのようなものが鎮座していた。とても蛍光色だ。
しかし……どうやって座っているんだろう? むしろ座る意味はあるのか……? 興味は尽きない。
「う、宇宙人」
気圧されたように呟く創一。それを聞いたクラゲは腕を2本持ち上げてふるりと左右に揺すった。
『いやいや、私はそんなに怪しいものじゃないよ? ほら、もっとよく見てごらんよ』
「いやぜってぇ宇宙人だろ! 来る時もなんかみょんみょん鳴ってたし!」
思い出したかのように声を張り上げる創一に千影ちゃんがビクッとなって、肩をつんつんとつついていた僕に寝ぼけ眼のまま拳を突き出してきたので側面に手を当てて受け流しつつ持っていた猫じゃらしを千影ちゃんの顔の前に配置して流れるようにターンすることで僕から猫じゃらしにターゲットを変更させる。
寝起きの千影ちゃんはたとえ学校でも近くの動くものに反応して攻撃を加えるので、猫じゃらしが欠かせない。もしくは即座に足を掴んで引きずり回すのだ。
『それは些細なことだよ。それにアレは、一番簡単な方法だったんだ。他にも方法はあった。結論を出すにはまだ早いのでは? 』
「全然些細なことじゃねぇし、今までの全てを総合した結果ここは宇宙船で、お前は宇宙人だという結論しかでねぇよ」
『考え直してくれ。まだやり直す道はある』
創一と仮称・クラゲ型宇宙人の議論は平行線を辿っている。しかしあの仮称・宇宙人はどこから声を出しているんだ。はっ、もしや頭の中に直接……?
「らぁっ!」
雑念が混じったからだろうか。猫じゃらしが千影ちゃんの拳をもろに受けて吹っ飛んだ。宙を舞う猫じゃらし。それを追う千影ちゃん。猫じゃらしはそのまま白い壁に当たって……あれ、すり抜けた。千影ちゃんもすり抜けた。壁の向こうから、ゴンッ、と音がする。痛そうだ。
一拍おいて、千影ちゃんが右手をさすりながら壁を抜けて来た。目は覚めたみたいだね。おはよう。
某不思議な迷宮にいる幽霊みたいにスルッと壁をすり抜けた千影ちゃんは、宇宙人(仮)と創一を見て、次に僕を見て、コクンと頷き、そして口を開いて、言った。
「地球は青かった」
「やっぱ宇宙人じゃねぇか!」
これ文字数1話の半分なの…?むしろ1話はこれの2倍あるの…?えぇ…大変だなぁ…