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 私の最後は、勇者に殺された……これは、覚えている……だけど……勇者以外のことは、分からない……転生してきた……? なに……? わ、わ、分からない……な、な、な、何も……な、な、な、な、な、な、な、な――


 頭の中で『ジジジッジジジッ』とノイズが駆け巡ったと思えば、思考がおかしい、考えができない。頭痛とは違う、違和感だらけの痛みが私を襲う。苦しくなり息が荒くなった私は、たまらず頭を抱える。


「ごめんごめん! 消えてしまった世界について詳しく話すのは、消えた世界から転生してきたクリスにはいけなかったんだ! 大丈夫! 落ち着いて、深呼吸するんだ! すぐに気分は良くなるから!」


 慌てた様子で駆け寄って来たマトは、そう言った。


「ハァハァ……な、何が起きたの……?」


 少しづつ痛みが和らく中、私は疑問を投げかけた。するとマトは、


「キミの存在に対する矛盾が、キミ自体を拒もうとしたんだ」

「えっ? なに……?」

「うーん……キミの生まれた……いや存在させた世界はもうない、っと言うより存在しなかったことになっている。でも、キミはそこにいる、その矛盾していることがキミを苦しめたんだ」

「ど、どういうこと……?」

「えーとね……キミは以前の世界で死んで、天界へ送られた。で、通常ならクリスが生まれた世界が消えた瞬間、キミも消えるはずだが、もしその時に転生している場合だと話が変わる。なかったことになった世界の存在は、クリスの記憶だけで虚像に作り出す、キミの存在が成り立つレベルでね。それを転生先の世界に認識させているのが今の現状なんだ。つまり、前の世界で起きた事や感じた事は、事実としては認識しているけど、その深い内容、例えば人の名や顔などは覚えてない。キミの存在に必要な分だけの記憶だからね。そんなわけで、その記憶に深く触れてしまうと矛盾が生じて、キミ自身が存在を拒み始めてしまうんだ」


 自分がそんな不安定な状況に立たせられている事を知って、正直動揺を隠せないでいたが、もっと知りたい欲求が動揺を超える。この時は知らなかったが『知る者』は、その知る事が全て知るまでは止められなくなるらしい。それは呪いのように……。そして私は、次の疑問が浮かび口に出した。


「ふ、不思議なんだけど……なぜアナタは、存在していない世界のこと覚えているの……? なかったことにされるなら、その記憶だって消えて無くなるんじゃないの?」

「あぁ……そうだね、その通りだよ。例えば、生まれた世界から転生した者が異世界で同じように世界と共に消えたら、元の世界のその者を知る者たちは、その者が死んだ事どころか存在自体を忘れてしまうよ」

「だったら……」

「最初に言ったけど、ボクはキミたちの世界から言うと、外側にいる存在なんだ。消えていった世界の事もボクにとっては、過去の事になっても、無かったことにはならないんだ」

「そうなんだ……も、もう一つだけ聞きたいんだけど、私が魔王アルフのこと名前や容姿までハッキリ覚えているのはなぜ? あの魔王だって、あの世界が消えたのと一緒に、勇者たちと同じように記憶がなくなるんじゃないの?」


 私には経験ないが、子供は『なんでなんで?』って、親に対して質問攻めしたり甘えたりすると聞く……。今の私は、マトにとってそんな状態に見えているのだろうか……? 変な感情が生まれつつ、マトの返答を待った。


「それはね、魔王アルフが異世界で存在してるからだよ。存在が消えてない者は、異世界にいても、その記憶はなくならないよ」


 気になっていた事が次から次へとやって来る、満足感と高揚感が満ちてゆく。しかし、まだ足らない。更なる欲望が私を襲う。すっかり話は変わってしまっていたが、前の世界をどう消したかの続きが気になって仕方がない。


「さっきの話なんだけど……前の世界で転生者が来たことがチャンスってどういうこと? お願い教えて!」


 このマトとの会話、全てが私の理解できる範疇を超えている。でも、もう遠慮なんてしていられない。早く! 早く! 早く教えて! 私は貪欲に情報を求めた。


「あっ! そうだったね、その話の途中だったね! うんうん、まぁ、その前に転生者について話さないといけないことがあるんだ。えーとね、転生には大きく二つあって『転移転生型』と『輪廻転生型』があるんだ。その事を理解してくれないと、この話の続きは分かりづらいと思うんだ。で、いきなりなんだけどさ、ボクが最初にキミの事を殺すって言ったの覚えているかい?」


 一気に情報量が増えた……転移? 転生? 輪廻? 殺す? え? なになに? 貪欲に情報を求むとは思ったが、私の頭はパンクしそうになる。マトは手加減を知らないらしい。私は、一つ一つ消化するため、マトの質問のみに集中し応える。


「えっ? あぁ………そういえば言ってた……うん、今思うと……なんでそんなこと言ったの……? ここまで話してきて、マトが私を殺したいとは思えないんだけど……」


 ごく当然の質問をした。私にとってマトは、同じ考えを持ち、話が理解し合える仲だと思っている。だからそこ、最初の印象『敵』と感じてた事に疑問を持っていた。


「まぁ、そう思うよね? もちろんボクはキミを殺したくないよ! でもね、殺さないとキミは異世界へ移動はできないんだ。ボクのように自分のチカラで移動することは、天界人が作った世界の生物には、物理的に無理だから。そんなわけで、キミたちが異世界へ移動するためには、必ず天界を経由しないといけない。つまり、自死ではない死がなければ行けないというわけ。転生とは、そういうもの、そういうようにできているんだ」


 異世界への移動……そんな簡単にできるものではない、転生って言うくらいだから死なないと成り立たない……うんうん! 分かる分かるぞ! ハァハァ……もっと……もっと……情報をちょうだい! お願い! もっと情報を!


 この時の私は、我を忘れていた。この天界のみが知るべき情報を求めた行為が、どれだけ危険な事とも知らずに――。

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