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「はぁ?」


 私からそんな声が溢れた。それもそのはず、世界を創ったって言われて、「そうなんですか?」って、答えられるほど、私の順応能力はそんなに高くはない。


 呆れ混じりの返事と表情の私に対して、謎の者は――

 

「アハハハ、そうだよね? そんな感じになっちゃうよね? ごめんごめん! 急にそんなこと言って、信じられるわけないよね? うーん……、どう説明すれば理解してくれるかなぁ……。あっ! そうだ! キミ、さっき勇者達が突然消えたことに、とても気になっていたよね?」


 フードから覗く口は、そう問いかけてくる。確かに気になっていたが、それよりも目の前の存在のが気になっている。しかし、話を進めるためにも、この場は頷いた。すると――


「キミが推理した通り、アレは魔法ではない。分かりやすく言えば、紙の上に描かれた人物を消しゴムで消したみたいなことさ! どうだい? 分かりやすかっただろ?」


 と、得意気に言われた……が、さっぱり分からなかった。ちっとも分かりやすくないよ……っと、心の中でボヤいていると、そんな私の心理を読んだのか、私の返答を待たずに、


「あれれ? おっかしいなぁ? どうもボクは、説明も苦手みたいだ。まぁいいか、このまま続けるね!」


 と、理解力の低さに呆れられたのか、ゴリ押しで説明が始まった。


「なぜ、さっき紙の上の人物を消したって表現したかと言うとね、ボクの立場からすると、キミを含めて、この世界に存在するあらゆるモノ全てが紙の上の絵に過ぎないんだ。だからキミの攻撃は、ボクには当たらない。だって、紙の上に描かれた人物の攻撃が、その絵を見ている者に当たるわけないよね?」


 と、言った。軽く柔らかく淡々と飛び出てくる言葉からは、とてつもない重みを感じた。たしかに私の攻撃は当たらなかった……、更に勇者達を消したのも事実だ……。私の脳裏にチラリとある言葉がかすめた。「もし言っていることが本当だったら……?」と……。私の頬からひと粒の汗がタラリと流れた。高鳴り始めた鼓動を感じながら耳を傾け続けていると、言葉の発信者は、違う角度から説明を始めた。


「えーとね、ボクの立場は今言ったことで正確なんだけど、さっき言った『この世界を創った』って言うのは、実は正確な表現ではないんだ。創ったって言うよりも発生させたのほうが近いかな? 実際に創ったのは、『天界人』なんだ。天界人というのはね――って、あれ? キミは知ってるはずだよね? この世界に転生する際に出会った女神たちのことだよ」


 突然、何の話が始まったのか、私には分からない。ただ、全てを聞かないといけないと言う使命感が私の中に生まれていた。スムーズに話が進むように、分からずとも相づちを打った。すると謎の者は、突如フード越しに頭をグシャグシャと両手で掻き乱した。


「あーもうっ! 今、ハッキリ理解した! こんな所々の説明しても理解できるわけないじゃん! 一番最初から説明しないと分かる事も分からないままだ。ごめんよ、どうも『知らない者』の気持ちって、分からないんだ……、ついつい……、ある程度知っている前提で話しちゃうんだ……。これはいけないね……ボクの悪い癖だ……」


 突然なんだ? と、目を丸くしていると、その者の右手は、おもむろに被っているフードを掴んだ。謎の者の謎要素の半数を占めていたのは、そのフードにある。だぶん顔は隠したいのだろうと勝手に認識していたが、なぜか急にそのフードを自ら進んで脱ぎ始めた。そして、こう続ける。


「最初に自己紹介するべきだったね、ボクの名は『マト』、キミと同じただの人間なんだ。ココから始めないと話が始まらないよね?」


 私の目の前には、10歳くらいの可愛らしい少年が立っていた。耳にかからない長さの黒い髪に黒い瞳、子供らしいあどけない笑顔を浮かべながら話している。私を恐怖の底へと陥りさせた者が――こんな子とは……。と、戸惑いを隠せないでいると、マトは更に続ける。


「ボクはね、魔族が存在しない世界の人間なんだ」


 ここからなぜ私に対して、わざわざ正体を明かして、頑張って説明しようとするのか、その謎が解けることになる。

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