表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
91/432

91

 ゴウマを失った悲しみの中、突如現れた謎の者――。魔王を倒した勇者達を、魔法ではない何かで一瞬で消し去ってしまった。そして、私の前に姿を現したと思えば、訳のわからない事を次々と発した――味方? もうすぐ世界が終わる? 転生させる為に殺す? と……。


 普通、自分に対して『殺す』と言う者は、例外なく『敵』だ。そう認識した私の本能は、『殺られる前に殺れ』と訴えかけてくる。しかし、そんな本能に対してブレーキをかける要素が1つあった。それは、ヤツの実力が全く測れない事だ。この世界に転生した際、女神から与えられたレアスキル『パーフェクト メジャー アビリティ』――レベルでは測りきれない、真の実力を見抜くスキル。それを持ってしてもヤツのチカラは分からなかった。この世界にやって来て初めての事である。この不気味さが動く事を躊躇させている。


 だが、このまま何もしなかったら、あの勇者達のように消されるのは、目に見るより明らかだ。腹をくくった私は、後ろに引いた右足の踵に魔力を集中する。そして、地面を叩くようにコツンと靴の踵を鳴らす。


 地面と接触した踵からは、ありったけの魔力を流し込んだ。表情は変えず目線だけは、謎の者に合わせ続けている。ヤツは、私の行動には気付いていない。地面の中を流れ込んだ私の魔力は、そのまま両サイドの壁へと移動させ、ヤツが狙える壁の位置へとコントロールし、そこに留まらせた。


 口での詠唱は気づかれる、私は独自で会得した思考詠唱を行なった。壁の一部に流れ込んだ魔力で『物質変化』(この世界で最も硬い物質へ変化させる)、『性質変化』(強い磁力を持たせる)、形態変化(ちょうどヤツのことを覆い隠せる程の大きさ、長方形のブロックに形を変える)、その3つを顔色を変えずに次々と詠唱する。ヤツには、まだ気づかれていない。準備は整った、ここで愚か者は「死ねぇぇぇ!」とか口に出してしまうだろう。だが私は、調子に乗るとは無く、黙ってその機会を伺った。


(今だっ!!)


 そう、心の中で叫んだ瞬間、3つの魔法を同時に発動させた。両サイドのある壁の一部は、ブロック状に変形し、この世界で最も硬い物質と同じ黒く変色した。そして、磁力を持った2つのブロックは、お互いを引きつけるように音もなく動き出す。近づけば近づくほど磁力は増し続ける、そのスピードもまた増し続けた。

 そして――


『バッチコォォォォォォォォォォォン!』


 と、物凄い音を響きかせたブロック改め大きな磁石は、衝撃波を発生させながら、その場にくっついた。砂ボコリから腕で顔を防きながらも、その視点は決して変えてはいない。あの謎の者が磁石に挟まる瞬間もしっかりと見続けていた。


「やった……」


 緊張の紐がヒュルヒュルとほどけ、思わず口に出してしまった。


 アレは助からない……、どんなに防御力がおろうとも絶対に無理なはずだ……。っと、安心した瞬間――


「あービックリした! 急にどうしたんだい?」


 くっついた磁石の中から声が聞こえてくる。


「ま……ま……まさか……」


 頭が理解する前に声が出た。続いて、目の前の光景に更に頭の回転が悪くなる。


 謎の者は、ピッタリ貼り付いたはずの磁石の隙間から、ひょこっと首を出した。その顔は、怪我の一つもない。何が起きているのか考える事もできないでいると、磁石なんて元々なかったかのように、体をすり抜けさせて姿を現した。目を釘付けにされた私が、声を出す事さえも忘れていると、


「あーそうか、ボクが殺すなんて言うから、ビックリして攻撃ちゃったのか!」


 と、フードで口元しか見えないその者の口は、そう動いた。そして、続けるように動く。


「ごめん、ごめん! 言葉が足りなかったようだね! どうもボクは、コミュニケーションってやつが苦手のようだ。じゃあ、ちゃんと説明するから、よく聞いてね!」


 魔法、呪い、といった類いは受けていない。なのに、私の体は動かない。たぶん目の前の相手は、私とは次元が違う、スキルを使わなくても確信したからだと思う。私は、黙ってその言葉を聞くことにした。


「最初に言っとかないといけないよね? えーとね、この世界はボクが創ったんだ!」


 私が所謂、『知る者』になる最初の言葉だった――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ