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 俺の目の前は、世界の終焉の光景だった――。


 目に映るモノ全てが歪み捻じれいる、もし俺の眼がおかしいだけなら眼科へ通うことをオススメされるレベルだ――。


 デタラメになってしまったこの世界、時間の流れもデタラメだ。よくホラー映画で使われる演出、お化けをより怖く見せるため早送りにしたりスローにしたりと、まぁそんな感じになっちゃっている――。


 当然、こんな状態で冷静にいられるわけでもなく、無駄に手足をバタつかせたり、声が枯れるまで叫んだ。でも、どうにもならない……、頼りにしていたアルフは、マーちゃんマーちゃん病にかかり、手がつけられない状態である。それどころか、この崩壊の原因はコイツときたもんだ、どうしようもないのである……。ちなみに、現状進行形で『マーちゃん……マーちゃん……』っと呟いて塞ぎ込んでいる。あと、もう一人の魔王ゴウマだが、『あわわわっ! ど、どうなってるのですかっ?』っと、ドジっ娘メイド顔負けの慌てよう、もうコイツのことを魔王と呼ぶのは止めよう……。そう、どうにもならない、諦めの境地なのである――。


 うまくいかないものだ……。あぁ、何もかもうまくいかない……。何度も何度も思っていたが、異世界転生しても何も良かったことないよ……、ロクなことが起きない。小説や漫画やアニメみたいに、ワクワクする様な冒険もなければ、ドキドキしちゃう出会いもない、熱いバトルは俺とは関係ないところで勝手に起きてただけ……。はぁ……異世界なんてもう嫌だ……家に帰りたい……もう帰りたいよ――。


 ――俺の心境は、こんなところだ。壊れてゆく世界を眺めながら、バカみたいに口を半開きにして、ポツンとその場に立ちつくし、ただただ時間が経つのを待っていた。それ以外、することがないからだ。


 この世界、早く終わらないかなぁっと思っていると――


『めお――』


 っと、どことなく声が聞こえてくる。幼い子供のような声だから、少年なのか少女なのか分からない。ただ、そんな声が聞こえてくる。どうせ、幻聴なのだろう、世界が壊れているんだ、そんな声も聞こえてきても可笑しくない。もしかしたら懐かしアニメのシーンで観たことある、天から舞い降りる沢山の天使が俺を迎えに来たのかもしれない、などど少しは考えたが、すぐにどうでもよくなって、気にも止めずにいようとする。しかし再び――


『さま――』


 などと、聞こえてくる。


 サマー? 夏? ん? ちょっと何言ってるか分からないですね……。気にせず無視を続けると、再び――


『すのじゃ――』


 もう……しつこいなぁ……静かにしてくれよ……。俺は異世界に疲れたんだ……もういいだろ……? なんだかとっても眠いんだ……。


 そう願うと、次の瞬間――


『ゴツンっ!』


 ものすっごい音が響いた。

 それと同時に、俺のデコにとんでもない衝撃が走る――


「痛っ!!」


 俺の口から堪らず声が漏れる……。物事は立て続けに起きる時は起きるもので、この時もそうらしい。続けて、ボリュームの調整をミスっちゃったのかなぁ、と思えるくらいの大音量で、


『マサオぉぉぉぉぉ! 目を覚ますのじゃぁぁぁぁぁ!!』


 ………………

 …………

 ……


「はっ!」


 俺は目を開いた――。

 最初に見えたのは、おでこを真っ赤にさせたアルフの顔だった。さっきまで塞ぎ込んでいた、あのアルフではない。いつもの生意気そうな面のアルフだった。


 気づけば四つんばいの体制になっていた。その下にアルフは寝そべっている。そして、その右手にはゴウマの鎌を掴み止めていた。この光景は見たことある……。あ、あれ……? デジャヴかな……? と思い、辺りを見てみると空間に歪み捻じれなんてモノはない。ど、ど、ど、どういうこと……? 意味がわからん。

 

 リアクションに定評のある俺は――


「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!」


 と、言った。

 月並みなリアクションだった。

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