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『ズバババァァァァァァァンっっっ!!』
背中の上にカミナリが落ちて来たんじゃないかと、感じさせるような物凄い音が鳴り響いた。それと同時に、体全体に電気が流れるような痺れが遅れてやってくる。そして、俺とアルフを支えている地面が衝撃に耐えられなくなり、瓦割りのように下へ下へと段々と割れ続け、俺らは地面の底へと埋もれてゆく。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
終わった、っと頭の中では分かっているが、当然死ぬのは超怖い……。俺は叫ぶ、叫ばずにはいられない。叫ぶ声量が高まるのと比例して、アルフを抱きしめる力もまた増していく。俺の背中は貫かれてしまったのか、どうなってしまったのか分かるはずもない、地面に埋もれてゆく感触しか分からないからだ。ただ気がかりだったのは、鎌の刃先が俺を貫通してアルフまで届いてしまっているんじゃないかということだ。これはマーちゃんの感情のせいなのか、こんな状態にも関わらず俺は、アルフのことばかりを気にしている。常に自分の事しか考えてこなかった、この俺が……。そんならしくない自分に気づいた時、正直まんざら悪い気分はしなかった。
『ガラガラガラ……パラパラパラ………ガラガラガラ……パラパラパラ……』
硬い岩が砕けぶつかり合う力強い音、粉々になった砂はそんな岩の力強さを和らげる音、いろんな音が俺の聴覚を刺激している時、俺はある事に気付く。上から下へと圧力がかかっているから、俺らは地面にめり込んでいるわけだが、どういうわけか背中の上から圧力を感じるより、俺が守ろうとして抱きしめている対象がだんだんと重くなり、下へ下へと埋もれていってるんじゃないかと錯覚し始めていた。……いやいや、そんなわけない、現在進行形で魔王ゴウマは、俺達を殺すために力いっぱい鎌を振り下ろしているはずだ。あぁ……そうだ、もうすぐ俺は死ぬ……。くだらないことを考えても仕方がない、もう死を受け入れよう。もうすぐ音も感触も何もかも感じることはなくなる……。
そして、俺は静かに目をつぶった――
『パラパラ……パラパラ……』
岩が砕ける音は止み、宙に舞い上がった砂やホコリが地面に舞い降りている音だけが聞こえてくる――。って……、あれっ? こんな音が聞こえてくるってことは、俺はまだ生きている……? それに……気づけば地面の底へと向かわせる衝撃もすっかりおさまっていた。なにがどうなってる……? 今の状況を知るため、そのままの体勢で恐る恐る少しだけ目を開いた。そして視界に飛び込んできたもので、俺は息を呑む。衝撃の凄まじさを表現するように、長径50メートルはくだらない大きさで、円を描くように地面はえぐられていた。不思議な事に俺たちは、その中心いる……。何がなんだかさっぱりわからない……。死んでないどこらか、痛みすら感じない……。たしかに魔王は俺らに向かって攻撃をしたはず……、だから辺りはこんな状態になっている……。なのに、なぜ……? そんな疑問の答えは、ある者の声と共にすぐに分かる。
「なっ! な、な、なんだとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!」
俺のすぐ背後から魔王ゴウマの声が響く。声に驚いた俺は、体をひねり首を自分の後方へと向ける。次に視線を自分の背中の方へと合わせた瞬間、目ん玉が飛び出しそうになる。そこには――、俺の左脇の隙間から飛び出した細い右腕があった。この腕は俺の背中を守るように伸ばし、鎌の刃先が俺の背中を突き刺す一歩手前のところで、親指と人差し指だけで止めていた。そして、細い腕の持ち主はこう言った。
「今、恋愛中じゃ! 邪魔すんなっ!」




