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 もし今、BGMが流れるとするなら、どデカい鮫が徐々に近づいてくる映画のアレだろう……。ドシンッ! ドシンッ! っと、地面から伝わってくる魔王の歩みの振動、一歩一歩と近づいてくる――。


「オーホホホ! そんな所に居たのですか? まさかワタクシの目から逃れるとは大したものですよ! どんな魔法を使ったかは知りませんが、もう二度と見逃すようなヘマはしませんから、覚悟して下さいね! オーホホホ!」


 高笑いしながらムカつく声で、魔王ゴウマはそう言う。そして俺の存在に気付いたのか、続けてこう言った。


「んーっ? 一緒にいるのは……。あーっ! 君は――、戦いもせず勝手に倒れこんだ、ただの人間のマヌケな少年ではないですか! 急にどうしたのかと心配しましたよ! オーホホホ! ところでアナタ、なぜココにいるのです? ずーっと思っていたのですよ、ココに立って良いのは、『魔王』『勇者』そして私のような、その先に辿り着いた者のみ。アナタみたいな者、場違いとは思いませんか? ソコに落ちている石ころよりも存在価値のない、何のチカラも影響もない存在、この場にいて恥ずかしくならないのですか? ワタシがアナタなら死にたくなりますけどねっ! オーホホホ!」


 魔王のこの言葉、かなり効いた……。障子並のメンタルしか持ち合わせない俺からすると大ダメージである。自分でも分っていた、勇者グルモが戦っている時から感じていたことだ――。でも……でも……、悔しいじゃないか……。


 何もかもうまくいかない何もない俺だけど、些細な抵抗する試みることにした。この世界最強の勇者を倒した、そしてレベル350の最強の魔王ゴウマに対して俺は、睨みつけてやった。どうせ笑われる事は分かっている……、なんの意味の無いことだって……。


 しかし、ところがどっこい――、魔王は意外な反応を見せた。


「なっ……! な、なぜ……? お前が『その目』を持っている? そ、そんなはずはないっ!」

「はぁ?」


 何を言っているのかさっぱり分からない事を言い出したと思えば、突如うろたえ始めた。頭の中がクエッションマークだらけになっていると、右腕で抱き抱えたままにいる、もう一人の元魔王からも声があがった。


「あーっ!」

「な、な、なんだ? どうした?」


 突然の声に驚いた俺は、パニクったまま声をあげる。何が起きている? 目ってなんだ? 目ってなんだよ! 凄く大事なことだと思う。きっとアルフは、その答えを知っている。推しの声優の好物より気になってしまった俺は、ただだだアルフの声だけに集中した。

 そして気になる答えは、


「あーっ! ……、足首、痛っ!」

「な、なに……?」

「足首が凄く痛いのじゃ……」

「えっ? それだけ……? もっと大事なことない?」

「んっ? それだけじゃ。痛いのぅ……、マサオ何かしたのか……?」


 肩透かしを食らった気持ちになった俺は、テンションだだ下がり状態で答える。


「うん……まぁ……、助ける際に走ってコケて捻った……」

「何をやっておるのじゃ……、生命を同期しておるのじゃから気をつけてくれんと……。痛てて……、走る時は、ちゃんと前見んと危ないぞ! 分かったか?」

「うん……、ごめん……」


 母親から叱られている気分だ……。更に俺のテンション君は下がっていく一方で帰ってくる様子はない。目はどうなったんだよ……、誰か教えてくれよ……、たぶん3Dメガネの片方だけかけている状態になっている右目のことを言っているのだろうけど……。チキショー、せっかくあのクソッタレゴウマが狼狽える程なのだから、どうなっているのか気になってしょうがない。すると、


「あーっ!!!!」


 再び、目の前のガキから声があがる。どうせ目とは関係ない話するんだろと諦めていると。


「おおおおおっ! マサオっ! 目っ目っ目っ!」


 と言いやがる。ようやくその話か、と期待した次の瞬間、両腕を広げたアルフがとつぜん俺の身体にしがみついてきた。小さな体のくせにやたらと力が強い。


「お、お、おい! 苦しい! どうしたんだよ、急に!」


 堪らず声を上げ、アルフの顔を見ると……そこには、とびっきりの笑顔があった。口角は上がりまくり、右目は青、左目は赤、そんな猫のようなオッドアイをした目尻は下がりっぱなしだ。こんな笑顔は初めて見る。なぜこんなにテンションが高いのか、俺にはさっぱり分からない……。


 ……って、あ、あれ? オッドアイ……? アルフの目は魔王の眼であり、左右両方とも赤い瞳だったはずだが――。

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