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 振り上げられた鎌の刃は、魚市場でマグロ解体に使われる超デカ包丁より大きく、その刃先は鋭く尖っている。あんなもんで斬られたら、どんなモノだって真っ二つになるのは一目見れば分かる。


 アニメのヒーローのように振り下げられる前に助け出す事が出来るのか? ううんや、俺にそんな事が出来るはずがない……、でも……でも……、黙って見ている事なんて出来ない、あのアルフの最期のようには……。


 俺は一歩を踏み出す。

 右足で地面を思いっきり蹴った。

 今まで感じたことない熱さ、足の筋肉が燃えるように熱い。プチプチと筋肉の繊維が切れてゆく。そんな感触の中、ある事に気づく。

 地面がやたら脆い……。砂浜を走るかのように足が地面に埋まってしまって、上手く力を地面に伝えづらくなっていた。


 ――そんなはずはない、ここの地面は岩の様にゴツゴツしててかなり硬かったはず……。『おかしい……』と一瞬、頭を過ったが、すぐにどうでも良くなる。そんなことを考えている暇がないからだ。およそ50メートル先で、恐ろしい鎌が今まさに振り下ろされそうになっている。


『早く! 早く! 早く! 早く! 早く! 早く! 早く! 早く!』


 頭の中は、その言葉たちがグルグルと駆け回っていた。

 そして俺の視点は、ずっと倒れたままのアルフを見続けている。


 続いてニ歩目を踏み出す。

 左足で地面を思いっきり蹴った。


 一歩目と同様、やたら地面に足を取られる感触を感じるが気にしている暇はない。走れ! 走れ! 小学生時代リレーの選手に選抜された輝かしい栄誉の時を思い出して、無我夢中に走れ! ただただ急いで前へと進むだけと考えていると、


「えっ!」


 突如、俺の声帯は勝手に音を立てた。

 なぜかと言うと――すぐ目の前にアルフがいるからだ……。

 倒れたままで意識をなくしたアルフがすぐ側にいる。

 俺は呆気に取られた。


 恐る恐る目線を真上へと変えると、そこには気持ち悪い笑みを浮かべ、鎌を振り上げたままの姿の魔王ゴウマがいた。ヤツの表情から察して俺の事に気づいている様子はない。


 何が何やらさっぱり分からない、もしや時が止っているかなんてことも考えたが、足元の土煙が動いている事に気づく。とりあえず俺はそのままアルフを抱き上げた。


「へっ?」


 またもや勝手に声帯が鳴る。

 今度の驚きはアルフの重さにあった――軽い、軽すぎる。家にあったキャラクター抱きまくらより、ずっとずっと軽かった。いろいろと不可解なことがあるが、俺はアルフを抱えたままその場を離れることにする。


 俺は右足で力強く一歩を踏み出す。

 またもや地面に足が埋まる感触を感じながら急いで離れようとしている最中、『ある感情』がフツフツと湧き出してきた。


 驚くことが多くてすっかり忘れていたが……、『俺は……俺は……アルフを助け出したんだ!』――心の中で騒ぎ出す感情と達成感、今まで感じたことよりも大きく素晴らしく感じる。この瞬間、異世界へやってきて良かったと本気で思えた。

 

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