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またもや……、真っ暗闇の世界――
もう何度目だろう……。
こう短期間に臨死体験するのは、タイムリープモノと相場は決まっている。だがしかし、いかんせん目的らしい目的もない俺にとって時間が逆戻りされても困るだけなのだが……。
などと、ブツブツと心の中で呟いていると、ワンパターンかのように声が聞こえてくる。
「――その顔、驚いてないみたいね?」
この声……どこかで聞いたことある女の声だった。
あまり良い印象を抱けない声――
そして声の主の正体は、頭を悩ませなくてもすぐに判明する。前回のように音声だけで引っ張った展開ではなく、映像も音声が聞こえ始めた直後復活したからだ。
最初に見えた人物に、俺は息を呑んだ――
金色の長い髪、見事に整った顔立ち、清潔感のある白いワンピース、――俺を転生させた女神だったからだ……。
俺と出会った女神とはえらく違い、鼻血を出していない女神は超美人だった。『惚れてまうやろっ!』と叫びたくなるくらい……。
あまりの美貌に思わず呆けてしまったが、俺は忘れてはいなかった。魔王を蹴り飛ばしたら『レアスキル』貰う約束が守られていないことに……。『おいコラ! 話が違うじゃねぇか! どうなってだ? おう? いくらワイの存在感が薄すぎるからって忘れてましたじゃ済まさんぞコラ!』と、言いたかったが声が出ない。
独り言のオンパレードで取り乱す俺が困惑していると、
「あの勇者の行動と言動から考えれば、こうなるのは予想できる」
この声には、驚きを隠せない。だって……『マーちゃん』の声なんだもん……。えっ? どういうこと? マーちゃんは死んだから終わりって事じゃないの? まだ続くの? えぇぇ……、死後の先まで続いたら終わらないじゃん……えぇぇ……どういうこと……? マーちゃんも転生するの……? もうわけが分からん……。
これから先も、ずっと猫の中に居続けるのかという不安で泣きそうになっていると、そんな俺を嘲笑うように女神はニヤリと笑顔を浮かべた。
「フフフ……さすがね。あの魔王アルフをコントロールしてきただけはあるわ」
そう女神が言うと、
「なんだと……?」
と、マーちゃんほ即座に答えた。
女神とマーちゃん、互いの視線から逃げることなく、二人の会話が始まった。
「フフフ……、天界にいる女神が気づかないと思った? あのバケモノが何の干渉も受けず育っていたら、あの世界は違う意味で消滅していたわ。そうなっていないのは、貴方のおかげでしょ?」
「なんのことだ?」
「とぼけちゃって……、魔王なのに魔族の思考を与えず、人間の思考を与えたのはなぜかしら? 愛を教えて淋しさを与える……、貴方がやってきた教育はそういうこと。なぜそうしたか、あの世界を守るためでしょ?」
「何が言いたい?」
真剣な声でマーちゃんがそう問うと、女神の表情はガラリと変わった。
「ハ、ハ、ハッキリと言うわ! わ、わ、私に協力して下さい! お、お、お願いします!」
深々と下げた頭は、金色の髪の毛で顔が見えなくなるほどだった。
あの女神のこんな態度、声をあげることに、俺は驚くほかの感情は浮かばない。
すると、マーちゃんは女神の頭頂部を見続けままこう言い出した。
「はぁ……、そういうことか……。ちなみにアーちゃん……いや、アルフはあの後どうなった?」
「あの……あの後……魔王アルフは……、自分で自分の命を……」
「そうか……、確認したい、アルフも転生させる気なんだな?」
「えっ? あ、はい……」
申し訳無さそうな表情を浮かべながら頭を上げた女神は、そう答えた。
そんな女神の瞳をジッと見つめながらマーちゃんは口を開く。
「協力はする、しかし条件がある。まず、私の記憶を全て消してほしい。あと……アーちゃん……アルフの中にある私に関する記憶だけを全て消してほしい」
と、マーちゃんは言った。
その言葉を聞いた瞬間、なんとも言えない感情が俺を包み込んだ……。
それは……ただ寂しさに近い感情だと言うことだけはわかった……。




