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 『カランカラン』と剣頭を地面に引き摺りながら歩む勇者ユウタは、『ハァハァ』と息をきらしながらゆっくりとアルフへと近づいている。


 一方、魔王であるアルフは、『ガチャガチャ』と厳つい鎧を鳴らせながらもがいていた。身体中に巻き付かれた光のツルによって、その身動きを封じられている。


 キョロキョロと映り変わるこの光景は、猫であるマーちゃんの視点である。何故かアルフの記憶の中に登場する猫の中に入り込んしまった俺は、FPSのゲームを視聴いるかのように、その光景を観ていた。


 一言で今の状況を表すとすれば――アルフ大ピンチである。しかしながらピンチと言ってもこの光景は、アルフの記憶でありアイツは転生をしてきた事実、たぶんココで死ぬのだろうと言う結果は、内心気づいていた。しかし……そうだとしても……結果が分かっていても俺は……アルフの死を黙って見る事なんてできない……。アニメて例えるなら本編の途中で回想話になったとして、どんな結果か分かっていたとしても感情移入を止められないことと同じように……。


 頭皮にじゅわっと冷や汗が沸き立つ感触を感じていた。この感触は俺の頭皮なのかマーちゃんの頭皮なのか、などと言うくだらないことを考える余裕もなく、ただただ不安と緊張と……どうにか助けたいという気持ちのゲージがMAXに振り切れていた。


 肉球一つ動かせない役立たずの俺が、そんなことを考えていると、宿主であるマーちゃんの身体は、俺の願望を叶えるように動き出した――


 スタスタと四本足で走り出したマーちゃんは、勇者ユウタと魔王アルフを繋ぐ線上のど真ん中へ移動すると、ピタッとその脚は止った。そして、睨めつけるように、その眼光は勇者へと向け、こう言った――


「勇者よ、聞きたいことがある。女神とは、どういうことだ? もし、我が王に対してこの現象の原因が女神だとすれば、下界に対して天界による干渉が入ったってことになる……。貴方ほどの勇者なら、その意味は分かるよな? この世界の終焉を表す……。この世界で勇者にまでなった者が、なぜ世界を終わらせる事に手を貸す? もちろん勇者は魔王を倒すことが使命だが、世界そのものがなくなってしまったら意味がない……。何をしようとしてる? さっきの魔法使いの娘を殺したのも、それが理由なんだろ? 教えてくれ、何が起きてる?」


 その声は、俺の脳を通過し外へと排出された。音は、空気を震わせ波のように広がっていく。そして、伝えたい相手の聴覚を刺激する。


「フフフ……フハハハ……! ごほぉっごほぉ……! ハァハァ……、すごいな、キミは! 本当にすごいよ! ハァハァ……実は僕は……この世界に来る前の世界では、猫を助けて死んだんだ……、キミそっくりな猫だ……。ハァハァ……猫って生き物は、人間が守らなちゃいけない生き物と思ってしていたが……とんでもない……、猫は勇者より賢く、魔王より頼りになる……。ハハハ……猫はすごいなぁ……、だから僕は……猫が好きなんだ……」

 

 と、勇者ユウタは笑いながら答えた。

 質問をはぐらかせられたマーちゃんの不快感が、俺の感情へと伝わっくる。

 そんな勇者に対して、マーちゃんは強いトーンで放つ。

 

「もしやと思うが……、魔王様の動きを止めたことで倒せたと思ってないよな? ちなみに言っておくが、お前の攻撃は、魔王様にキズ一つも与える事もできない。もちろん、お前が万全の状態の時でもだ。魔王様とお前の差は、それほどあまりにもかけ離れている」


 マーちゃんの言葉には、浅くて口だけな俺のようなハッタリとは全く違い、真実だけを語っている事は、流れてくる感情で分かる。


 そんな事実を突き付けられた勇者は、


「フフフ……、そうだな……その通りだ……! キミの言う通り、こんな怪我をせずとも僕は魔王には勝てないよ。っていうより決して誰も魔王アルフは殺せない。いかなる誰が挑もうとも……、それが例え万物創造の神だとしてもね……!」


 意外な反応に俺は、戸惑った。

 そして、俺の感情にリンクするように穏やかに答える勇者に対してマーちゃんもまた動揺する。


「じゃ、じゃあなぜ? 女神の介入までして魔王様の身動きを止める? 倒せないと知っているのに……!」

「それはね……、コレを邪魔させないためだよ……」


『グサッ』


 と、勇者による囁くように呟いた声が、俺いやマーちゃんの聴覚に届いた時には、その異変に気付く。


「えっ?」

 

 思わず出た声がコレだった。

 足と地面に対する接地感が失われている事に気づいていなかった。つまり自分の身体いやマーちゃんの身体が宙に浮いていることに。次に感じたのは、胸に突き刺さった感触、そして気づく――マーちゃんは、勇者に刺されている……。

 

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