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「ごほぉっ! ごほぉっ! ハァハァ……そんなはずが……ダ、ダメージを受けるなんて……ハァハァ……北の洞窟に生息していたドラゴンのブレスさえ何も感じなかったというのに……ハァハァ……女神の言うとおりだ……あ、あの魔王はマトモじゃない……」
酷く息を荒くしている勇者ユウタは、今の現状に信じられない様子に呟いた。
「ユ、ユウタぁぁぁぁぁっ!!」
ダッダッダッと駆け寄る音と共に、クリスの声が聞こえてくる。
「ユ、ユウタ大丈夫ですかっ? あっ! あぁ……、な、な、内臓が……た、た、大変なのです……」
ユウタの状態を目にしたクリスは、声を詰まらせる。
そんな心配する少女に対して勇者は――
「ハァハァ……な、な、何しに来た……?」
「た、た、大変な怪我なのです……このままだと……死んでしまうのです……はや、早く治療しないと!」
「ハァハァ……なぜだ……? お、俺はお前を殺そうとしたんだぞ……」
「ううん……、私を殺そうとしたなんて嘘なのです……! 魔王を倒すための嘘なのです……! ユウタは嘘つきさんですからね……! も、もし……本当に……、ユ、ユウタが他の人を好きでも……わたしは……私はユウタが好きだからっ!」
クリスの声からは、自信と力強さを感じる。
「ふっ……そうか……、クリス……ありがとう……」
強い意志を持ったクリスに根負けしたのか、ユウタは微笑混じりに礼を言う。
「べ、べ、べつに……、もういいのですっ!」
顔を真っ赤にさせているクリスの姿が、安易に想像できる。
そんなデレ状態全開の少女は続けた――
「そ、それで、どうしましょう……? ミキが死んでしまったので、回復魔法が使えないのです……」
「あぁ……実は完全回復させるアイテムを持っていたんだが……、さっきの衝撃で落としてしまって……申し訳ないが、取ってきてもらってもいいか……?」
「もちろんなのですっ! そんな便利なアイテムがあるとは知らなかったのです! さすがユウタなのです! えーと……、どの辺に落としたのです?」
コツコツと足音が不定期に鳴り響く、クリスが探しているのだろう。
そう認識した、次の瞬間――
『グサッ!』
と、嫌な音が――俺の耳を通り過ぎた。
「えっ? ユ、ユ、ユウタ……? こ、こ、これは……何の音です……?」
と、クリスの驚いた声があがると、
「あぁ……、コレは俺の剣がお前を貫いた音だ……」
そう、勇者は答えた。
そして、
『ドサッ!』
と、倒れ込む音……。
クリスは……、
「えっ? えっ? えっ? あ、あ……、ぐはっ! な、な、なぜ……?」
今の状況に信じられないでいるクリスは、必死に声を出す。
「なぜだって……? そりゃ――『お前が大嫌いだからだよ!』」
悪魔が声をあげたようなドス黒い声で答えるユウタ。
そんな勇者に向かってクリスは最後の力を振り絞るように声をあげた。
「ハァハァ……、ぐすんっ……、わ、わ、私が今まで見てきたユウタは全て嘘だったのですね……。ハァハァ…、ど、ど、奴隷だった私にとって……、出会った人の中で一番最低な人だったのです……!」
と、言い切った後、クリスの吐息を聞こえなくなってしまった……。
その後――
「ひっひっ……、ううぅ……、ううぅ……、ク、クリス……」
と、必死に何か堪えるように唸り声が小さく聞こえた。




