55
暗闇の中、音だけを頼りに、どの位の時が経ったのだろう……?
『カンッ! カンカンカンッ! キンキンキンッ!』
と、子供がフォークとスプーンを叩き合っているような金属音が先程から鳴り響いている。
「キサマ! どういうつもりじゃ? 余を狙わず、この娘ばかり狙いおってっ! お主の仲間ではないのか?」
音のみでしか判断できない俺は、アルフの発言で状況を判断するしかない――勇者ユウタは、仲間でもある魔法使いクリスばかり狙って攻撃しているらしい……。
「うるせぇ! 俺の仲間なんだから俺の勝手だろ! そもそもソイツと敵であるお前が、何さっきから守ってるんだよ! 邪魔すんじゃねぇ!!」
声を荒げて言う勇者。
眼前の魔王を無視して仲間を狙う勇者に対して、魔王であるアルフがクリスを守っているらしい。
ユウタの行動に困惑していると、クリスは泣きながら――
「ひっく……、ひっく……、うぅぅ……、ユウタ……、そんなに私が邪魔なのですか……? そこまで死んで欲しいのですか……? うぅぅ……、分かったのです……、殺したいのなら私を殺して下さい……。魔王よ、もう私を守らないでいいのです……」
全てを諦めるようにクリスは、泣きながら弱々しくそう言った。
一人の少女を、そこまで追い込んだ張本人は、
「ははっ! やっと諦めたか! 聞いたか魔王? もう守らなくていいってよ! だからもう邪魔するなよ!」
悪魔のような勇者は、笑いながらそう言った。
すると、魔王アルフは――
「余はのぅ……、魔王をやっておるが、お主らのような仲間がずっと欲しかった……。余はこの力のせいで、生まれてきてずっと一人じゃった、家族も友達も何もいなかった……。そこにいる猫のマーちゃんと出会うまで、ずっと一人ぼっちじゃったのじゃ……」
と、突然アルフは悲しそうに言った。
「ハハハッ! なんだよ急に! 魔王がボッチでウケるんだけど! なんだ? 羨ましいのか? ハハハッ!」
勇者は魔王をあざ笑いバカにするが、魔王はそれを無視して続けた。
「それによぅ、余はとりわけ人間が嫌いってわけではないのじゃよ。ただこの世界の人間と魔族は、ただ生存競争によって殺し合っているだけじゃ。じゃから余の命を狙う人間は、身を守るためだけに今まで殺してきた。じゃがな、お主はなんなのじゃ……? 人間同士、仲間同士で殺し合う……? 邪魔になったから殺す? お主を信じ愛した女を殺す? はぁ? 今までのぅ……、こんな感情を持ったことはないのじゃが……、お主が憎いのじゃっ!!」
今の感情を言い切ったアルフの言葉は、正直カッコいいとも感じ取れた。
そんな魔王に勇者は、
「はぁ? それは、クリスを守るのをやめないってことか? ああん? 魔王のくせに勇者に説教か? なめんなよ、クソが!」
と、ユウタは癇癪を起こすように叫ぶ。
そんな魔王と勇者の言い争いの中、物事は急激に動き出す――
『ガタンッ! ガタガタガタガタ! ビリッ! ビリビリッ!』
地鳴りような音、放電した電気がスパークするような音が立て続けに鳴り響く。
「なんじゃ……?」
急な展開にアルフがそう口にすると、
「ま、魔王様ッ! 見てください! く、空間が歪んでます!」
と、マーちゃんが声が聞こえ、
「な、なんなのです? この揺れは……、何が起きているのです?」
続いて、クリスの驚く声も聞こえてくる。
そして――
「チィィィッ! もう始まりやがった! クソッ! 時間がない!」
――ユウタの焦る声が俺の耳に飛び込んでくるのであった……。




