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高校入学直後のマサオは、なぜか異世界へとやってきて、なぜか異世界の魔王と戦うことになり、なぜかアルフの記憶の音声だけを聴き続けていた。以上、あらすじ終わり。
長々と音声だけを聴き続けてきたマサオ、しょうもないアルフの過去から勇者対決前まで、ようやくやってきた勇者vs魔王といったアツい展開のはずなのだが、マサオの顔は浮かない様子だった。その理由は、勇者ユウタの言動にある、彼のゲス発言全てが不自然に感じるからだ。いくら女性問題で邪魔になったとしても、ここまでして、ここまで言うか? と……。ユウタという名前から自分と同じ世界、日本から来た、同じ世界観を持つ者だからこそ、この違和感は拭いきれないでいた。
実はいうと、このマサオの違和感は、あながち間違いではない。
話は、ユウタと女神の出会いまで戻る――
子猫を救うため死んでしまったユウタは、『転生の間』にいた。そこで、女神イリアと出会い、今の現状や今後の転生について聞かされた後、イリアから『ある頼み事』をされた――アホみたいに強い魔王を倒してほしいと。
しかし実は、話はここで終わりではなかった、この先、イリアは『ある真実』を話すことになる。そしてその内容は、ユウタの顔を曇らせることになる――
「――ってことなの……」
下を向いたまま語り終える女神イリアは、眉間にシワをよせ、唇を噛みしめていた。
「い……、いや……、それって……。こ、こ、これから行く世界に救いがないって……? じゃ、じゃあ……、ぼ、僕は……」
これでもかって言うほど見開いた瞼は時が止まったように動かず、ユウタは唇を震わせた。
小さく顔を振るイリアは、
「本当にごめんなさい……、一度死んでこんな話をして……。でもアナタのように真に自分よりも他を優先できる人間じゃないと、できることじやないから……。本当なら天国へいけて、大事な人達の記憶の中で生き続けるはずなのに……、本当にごめんなさい……」
申し訳なくする女神に、ユウタはニコッと笑顔を見せる。
「女神様、顔を上げて下さい! いいんですよ、気にしなしてください。今、そんなことになっているなら仕方がないですよ、誰かがやらないといけないなら、僕がやります!」
ユウタのその言葉は、強がりでもなく、皆を守りたい気持ちがこめられていた。その言葉に背中を押されたイリアは、顔を上げ、大きく深呼吸をすると、真剣な顔で口を開く、
「ありがとう! あなたこそが本当の英雄よ! たとえそれが誰にも気づかれないことだとしても……。ううん……、私が日和っちゃダメよね! いい、ユウタ! 今からアナタには世界のバランスが壊れるくらい強化するわ、それはアナタを孤独にもするとも思う、必ず魔王アルフを殺しなさい! そして、必ずその座標を打ち込むのよ!」
自分の感情を殺すようにイリアは言い切った。
そんな気持ちを汲むように自信満々の笑顔でユウタは、
「はいっ! 僕は……、いや、俺は立派な勇者になってみせます! あっ! すみません、確認なのですが、座標は5回まで打てるんですよね?」
「ん? そうだけど……、私が認識できる限界が5回だからね、……って、ちょ、ちょっとユウタ! ま、まさか変なこと考えてない? 魔王アルフだけでいいのよ! 5回って教えたのも、予備のためなんだから! さっきも言ったけど、座標の登録は、あなたへの恨みが元になってるのよ、もし誰かを転生させること考えているなら、絶対にやめなさい! 大事な人に恨まれること程、悲しい事はないのよ!」
「大丈夫です! ちゃんと1回分は、予備として残しときますから! ……。救えるなら……、一人でも……、一人でも……、多く救いたいんです……」
必死に作り上げた笑顔でユウタは、最後に女神にそう言ったのだった――。
時が経ち、勇者ユウタは魔王城の前に立っている。
ルン、クリス、ミキ、救うことを誓って――




