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「ほほう、俺を殺すか? ふふふ……、面白い、できるものならやってみろ! 女神から最強の加護を得たこの俺を!」


 微笑混じりで応える勇者ユウタ、この口ぶり自信たっぷりである。そんな、どっちが勇者かわからない状況になった今、魔王に助けられた魔法使いクリスは戸惑いながら声をあげた。

 

「ど、ど、どうなってるのです? なんでユウタが私を殺そうとするのです? なんで魔王が私を庇うのです? 今は何が起きているのです……? ユ、ユウタ教えてほしいのです! ユウタ……、ユウタ……?」


 混乱している様子のクリスに対して、正義のはずの勇者から信じられぬ言葉が投げつける。


「はぁ……、ウザ……。こうなっちまったら全て教えてやるけどよ、そもそも、なぜお前らが魔王城へのパーティーに選ばれたか分かるか? 仲間の中でも最強である『アイナ』を外してまで」

「えっ? ど、どういうことです? 私達を特別に想って選んでくれたのではないのですか?」

「ふふふ……、とくべつ? ぶはははっ! た、たしかに特別で間違いないか……。そう、お前らは……、特別ウザかったんだよ! 邪魔だったんだよ! だからお前らを魔王城まで連れて行って、魔王に消してもらうつもりで来たんだよ! 魔王の強さは女神から聞いていたからな!」

「ひっ! な、な、何を言ってるのです? 私達がいつユウタの邪魔になることをしたのですか?」


 修羅場、まさにザ・修羅場である。ユウタの計画的殺人が発覚、今まさに修羅場である。とんでもないことを言い出すユウタに、クリスは声を荒げる様に食い下がる。そんなクリスの問に対して、ユウタはケロっとした声で応えた。


「お前らには黙っていたけど、俺、魔王倒したらアイナと結婚するから」

「は、は、はい?」


 クリスの気の抜けた声と共に、その場は刹那に時が止まる。

 そして、動きだした時間と共に、今まで出したことのないボリュームのクリスの声があがった。


「ど、ど、ど、どういうことなのですかぁぁぁ? アイナと結婚って! はぁ? 私と結婚しようと言ったのではないのですか? だ、だから……、は、は、初めては結婚してからと決めていて、い、い、いつも拒んでいたのですよ!」

「うるせぇよ! お前らに言ったのは全て冗談に決まってるだろ? はぁ……、本当、俺とアイナにとってお前らは邪魔で邪魔でしかたねぇわ! 俺の危惧した通り案の定、ルンは俺との関係を簡単にしゃべる始末だったしよ……。あぶねぇ、あぶねぇ、アイナがいなくて本当に良かった!」


 投げ放った言葉の内容は、残酷過ぎた。何度も思うが、どうなったらここまでのことを言えるようになるのだろう……? そんな残酷な言葉に対してクリスは、


「さ、さ、最低なのです……。ユウタは最低な勇者なのです……。あなたは勇者を名乗ってはいけないのです……」


 と、小さな小さな抵抗を試みた。


 しかし――


「わかった、わかった。もうお前の前では、勇者と名乗らないから、さっさと死んでくれ!」


 クリスの些細な抵抗もむなしくノーダメージの勇者は、魔王へと矛先を向ける。


「おい! 魔王っ! どういうつもりだ? なぜに魔王がその女を庇う? おかしいだろ? まさか、コイツを不憫に思って助けたわけじゃないよな? お前は魔王だぞ? 魔王が人助けって可笑しいだろ? ん? あれれ? もしかして、その女に惚れたんか? ん? 惚れちゃったのかな? ハハハっ! それなら、そんな女お前にやるよ、俺は要らねぇから! ワハハハ!」


 そんなゲス発言を受けたアルフは小さな声で――


「別に……、余はその女を助けたつもりはない……。ただ……、お主の思い通りになるのが嫌じゃっただけじゃ……、それに、余はおん……、ふぅ……、ふぅ……」


 今まで聞いたことのない喋り方、言葉がおぼつかない感じ、アルフは話している途中で言葉を止めるのだった。そして、そんなアルフから何か嫌な予感が走るのだった……。


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