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勇者らしからぬ発言に、その場には凍りついた空気が包み込んでいた――
「そっ! そ、そうなのです! ルンはヒドイ女なのです! し……、死んで当然だったのですっ!」
その場の空気を読んでか、慌てた声でクリスがその場を繕おうとするが、ユウタの発言にさすがのイエスマンクリスでさえも動揺を隠せないでいるようだった。
そして、続くように――
「そ、そ、そうよね……、嘘をついてまでユウタの気を引こうなんて最低な行為……、さ、さすがのユウタも怒るわよね……」
愛するユウタが、こんな発言するなんて信じられないっという心情が滲み出ているのがハッキリと分かる。
二人にとって今までのユウタは、ハーレムモノの主人公そのもの、紳士かつ高潔な存在だったのだろう、それが人間の汚いトコロを見て効いちゃってるようだ。
――あえて言おう『ざまぁ!』と。
ニヤニヤが止まらないでいると、この場にて唯一まともな存在が声を上げた――
「キサマ等っ! それでも勇者パーティーか! 死人を冒涜するようなことをして、仲間をなんだと思っている!」
――声の主は、マーちゃんだった。
あまりにヒドイ状況に、勇者たちにとって敵でもある魔王のペット、マーちゃんが声を荒らげた。そう、この場には、良心を持つ者は猫だけなのである。
そんな興奮気味のマーちゃんに、
「マーちゃん! マーちゃん! 怒ってるの? 嫌なのじゃ、怒っちゃ嫌なのじゃ……。余のせいなのじゃ……、余がくちゃみしなければ……、うっ、うっ、うぇぇぇん!」
魔王であるはずのアルフは泣きながら、そう言った……。
そんな情けない魔王に、猫であるマーちゃんは慌てた声で、
「ま、ま、ま、魔王様に怒ってませんよ! 勇者たちに腹を立てただけですから! あぁ、泣かないでくださいよぉ……、魔王様は良い事したのですよ、クシャミで敵の戦力を削ったのですから! ほぉら、泣かないの、そんなに泣いてたら勇者たちに笑われちゃいますよぉ! アーちゃん、笑って、ほぉら、可愛い笑顔を見せて!」
必死に魔王をあやす姿は、完全に母親そのものだった……。
そんな魔王サイドに、ミキが何気なく言った。
「さっきから、アレはなんなの? マーちゃん、アーちゃんだのって……、本当に魔王なの? それにしてもあの猫……、私達に説教はするわ、魔王をあやすわ、正直、気持ち悪い猫ね……」
そんなミキの率直な感想により、状況は劇的な変わる事になる。
その言葉を耳にした者が――
「なんじゃと?」
と、言い。
次の瞬間――
『チィィン』
と、風鈴のような音が俺の耳を通り過ぎたと思えば――
『ドサッ』
と、荷袋を地面に下ろすような音がした。
そして――
「ミ、ミキ姉? 急に倒れてどうしたのです? ミキ姉! えっ! う、うそ……、死んでるのです……」
この声は、クリスだった。
一瞬のことで、何が起きているかわからないでいると、クリスが声を荒げた。
「ユ、ユウタ! ミキ姉が死んでる! な、何が起きたのです? ねぇ、ユウタ聞いているのですか?」
そんなクリスの叫びに、ユウタの返事は返って来ない。
急激に変化した、この状況に、俺の心拍数が上がりはじめていると、馴染みの声が聞こえてくる。
「ん? 今、お主、余の動き見えておったな? 今までやって来た勇者たちは、誰もかも見えない様じゃったが、お主……、何者じゃ?」
先程まで泣いていたとは思えない真剣な声でアルフは――そう言った。
すると――
「ふふふ……、ふははは! 余裕、余裕! ふふふ……、お前の話は女神から全て聞いている、どれだけ凄いかと思えば、大したことないな、簡単に目で追えたぞ! 女神のヤツが大げさに言うから余計にレベル上げたみたいだな」
と、勇者ユウタは声を弾ませながら言うと、
「ユ、ユウタ……? 何を言ってるのですか……?」
と、クリスがか細い声で質問するが、勇者からの返答はなかった。
仲間からの質問に答えない勇者に対して、魔王から質問が飛ぶ。
「女神……? 何を言ってるのかわからんが、お主、余の動きが見えておったなら、なぜ、仲間を助けなかったのじゃ?」
アルフの質問は、俺も同様、仲間でもあるクリスの疑問でもある、その質問に対して勇者は、『1+1』の問題を答えるように答える。
「あぁ、それね。要らないからっ! そもそも勇者っていうのは、正義でないといけないんだ。今の俺の状態は、お世辞にも正義とは言えないからね、だから、今のこの俺を知っているものは全て要らない、消えてもらいたい。だから、魔王よ、ミキを殺ってくれたことは、感謝している。ついでに悪いんだが、さっきから俺のことを気持ち悪く見ている、あの女も殺してくれるとありがたい。俺が殺ってもいいのだが、さすがに勇者だからな、わかるよな? だから敵でもあるお前にやってもらたい。別にいいだろ? どうせ敵なんだし! さあ、俺は何もしないからさっさと殺ってくれ!」
ダチに頼み事するノリで勇者は、そう言った……。




