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「どういうつもりなのです? ルン! 捨てられた腹いせにユウタを殺すつもりなのですか? 本当にクズアマなのです!」
クリスの怒号がルンを襲う。可愛らしい声で飛び出す結構な言葉チョイスには、その道の男たちには堪らないだろう。
「うっさいっ! 私をここまで追い詰めたのはアナタよ、クリス! あんなに仲良く冒険してきたのに……、もう元には戻れない……。それならミキ姉と共にそこの男を倒してやる!」
そして、ルンの反撃の狼煙が上がった。
とんでもない展開にドラマCDを聞いている感じになっている俺は、この先の行く末に耳を傾けていると、壊れかけのミキが低いトーンで語る。
「ちょっと待って、ルン? 何、私と共にって? アナタは私の敵だから。アナタのせいで私とユウタは死ぬのよ? 馴れ馴れしくしないで、このゴミ」
「えっ……?」
鳶に油揚げをさらわれたような声を上げるルン。
この勇者パーティー内がどんな関係かは全く知らないが、この展開はさすがにルンに同情した……。
「そもそも、ルン? ユウタに勝てると思ってるのですか? ユウタの強さは知ってる筈なのです。ユウタは世界初のレベル99の壁を超えた者、レベル50代のルンでは足元にも及ばないのです。さあ、どうやってユウタを倒すつもりなのです? 教えてもらたいのですっ!」
なのですクリスは、微笑混じりに声でルンに問うた。
レベル99の壁を超えた者? も、もしや、魔王ゴウマと同じってことか? ってことは、女神からの転生ボーナスってことだよな? クソッ! やっぱそうだ、勇者になりハーレムをも作れるような創作の主人公みたいな奴らは、だいたい転生した際にこんなビックな贈り物があるんだ! ちくしょう、何で俺は貰えなかったんだよ……。
まるで今月の小遣いをソシャゲのガチャに全額ブッパしたのに、お目当てのモノが出なくガッカリしながらゲーム関連掲示板を覗いていると、ゲットした奴のスクショを見てしまったような気持ちだ……。
そんなことを考えていると、ゲットしたヤツのイケてるボイスが響いた。
「みんな、もう止めよう! ルンのことは、俺が代わりに謝る! 許してやってくれ! ルンも悪気なく言っちゃんだよな? 反省しているよな? だからこれ以上責めるのは止めようぜ!」
勇者ユウタは、凛々しく且つ爽やかに言い切った。
そんな、自分を庇ってくれている勇者にルンは――
「はっ?」
鳩に豆鉄砲が当たったような声を上げた。
そして――
「こんなクズでもほっとけないなんて、さすがユウタなのです! ルン、ユウタに感謝するのですよ!」
感無量を絵に描いたような声を上げるクリス。
――いやいやいや……。
「ここまで度量の深い男だったとは……。さすがの私にも読めなかった……。ユウタが言うならルンを許そう!」
唸るように感心するミキ。
――さっき、その男を殺すって言ってたじゃん……。
「ちょ、ちょっと待ってよ、みんな! なんでこうなるの? 意味がわからないよ!」
たまらずルンが声を上げると、全てを持つ者はその問に対して答える。
「ルンッ! 意地を張るのはやめろ! みんなが許すって言ってるじゃないか? もう素直になろうぜ!」
「えぇぇぇぇぇ、おかしいよ……、絶対……」
「ルン、ごめんなさいできるな?」
「えっ? あ……、はい……、ご、ご、ごめんなさい……」
「よくできたぞ、ルン! みんな、拍手っ!」
その後、小さな子をあやすような声のユウタが言うように、パチパチと手を鳴らす音が鳴り響いた。
――なにこれ……? 意味がわからん……。
理解しがたい展開に付いて行けずにいた俺は、アルフの方はどうなったのかと気になっていると――
「へ、へ、くちゅん!」
と、いう可愛らしいくしゃみの音が飛び出した。
そして、その次の瞬間だった――
『ドドドドドゴゴゴゴゴゴォォォォォォォォォォォォォォォォォン!』
と、いう耳を塞ぎたくなるような地を震わせる爆音がとどろいた。
何が起きたんだと驚いていると――
「ふぅぅぅ、あー! マーちゃん鼻水が垂れるのじゃ! 拭く物ちょうだい!」
「ま、ま、魔王様……。くしゃみする際は先に言ってくださいね……。あの衝撃を受けたら死んでしまいますから……」
「だって、さっき泣いたから鼻がムズムズしちゃったんじゃもん!」
さっきのくしゃみはアルフだったようだ、しかしながらくしゃみで死ぬって、どんなくしゃみだよって思っていると――
「ルン! 目を開け! ルン! 嘘だろ! ルゥゥゥゥゥン!」
勇者ユウタの慌てた声が、突如この空間に響き渡った。
そして、クリスが気を落とすようにこう続けた――
「ユウタ……、ルンはもう死んでるのです……」




