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 俺と同じように異世界へ転生したユウタは、俺とは大きく違い順調に勇者になりハーレムまで実現した男だ。忌々しいったら忌々しい存在で、妬み過ぎて頭が爆発しそうになっていたが、あるパーティーメンバー女の発言一つで状況は変わった。


「こ、こ、こんなのはユウタじゃないのです! 私を奴隷商人から救い出してくれた時とは別人なのです……。す、す、全て……、全てルンのせいなのですっ! こんなビッチと関わったせいでユウタが変わったのです! このクソビッチどうしてくれるのです!」


 ロリ声クリスの罵声がルンを襲った。


「ちょ、ちょっと待ってよ! 何でそうなるのよっ! いつも皆から煙がられていた私を仲間にしようと言ってくれたのは、クリスあなたでしょ?」


 クリスの放った言葉に、ルンは泣き声混じりで応えた。


「ふんっ! 煙がられていたのは、ルンがアバズレ過ぎて病気持ちと思われていただけじゃないですか! 正直、本当は嫌だったんです! でもユウタの手前、仕方なく誘ってあげたんじゃないですか! それなのに、ユウタをこんな風に変えるなんて、本当の悪魔なのです! こ、この悪魔めっ!!」


 ロリ声から発してはいけない言葉を、クリスは堂々と言い切った。


 黙って聞くしかない俺は、ハーレムモノの裏側を聞いている気分になっていた。今思えば、こうなることは必然のような気がする。アニメ、ラノベのように沢山の女から言い寄ろられて皆友達なんてありえないのだ。普通の男だったら我慢できるはずがない。勇者ユウタを誰が責められよう? そう、俺は現実を見せられ、いや聞かされているだけなんだ。


 一つ悟った俺が、そう思っていると、今まで黙っていた、お姉さんボイスのミキがこの会話に割って入る。


「二人共、落ち着きなさい!」


 この現場にて、唯一まとも存在であるミキの声は、俺をホッとさせた。これ以上、男と女のドロドロ劇場は聞くに耐えられなかったからだ。すっかり忘れていたが、今から勇者対魔王の決戦が始まるはずなんだ。とりあえず、ユウタの浮気話は後にして、今は魔王と戦ってくれ!


 そう、俺がそんなことを願っていると、ミキはこう続けた――


「私がユウタを殺すから、落ち着きなさい!」


 聞き間違えたのか、ユウタを殺すと言ったように聞こえたが……。

 それはちっとも聞き間違えでも何でもなく、即座にユウタが反応する。


「え? ちょっ! ミキ、おま、お前、何を言っているんだ?」


 ごく当然の反応する勇者ユウタにミキは、


「大丈夫、アナタが死んだ後に私も死ぬから安心して!」


 と、穏やかな声で答える。

 何を安心してほしいのか、勇者は慌てた声になる。


「ちょっと、待てって! どうしたんだミキ? お前がそんなことを言う女じゃなかっただろう?」


 ユウタのパニクった声が聞こえるのと同時に、『シャキンッ』っと剣を鞘から出す音が響く。

 更に慌てふためいた勇者ユウタの声も響き渡る。


「ちょちょちょちょちょちょっ! な、な、なんで剣を俺に向けるんだ? ま、ま、魔王はアッチ、アッチ!」


 焦るユウタに対して、ミキは―― 


「アナタは私を愛していると言った。だから私もそれに応えて初めても捧げた。それなのに、アナタは嘘を付いた。だから死ぬしかない」


 あまりにキレ過ぎて片言で語るミキ。

 魔王を目の前にして、勇者と戦おうとするミキに、再びロリボイスクリスの声が俺の耳に入ってきた。


「ミキ!! ユウタを殺すなど絶対に許さないのですっ! ユウタは、私が守るのですっ!」


 勢いよく走り出す音と、杖を地面につきたてる音が鳴り響く。

 そんなクリスに対してユウタは、


「お、お、おおぅ」


 と、勢いに流されているだけのようだった。

 そんなユウタを庇うクリスに対して、ルンも反応した。


「ミキ姉、私も力貸すよ! こんな最低男、絶対に許さないんだから! それに、あんな酷いことを言ったクリスも許さない! 一緒に戦おう、ミキ姉!」


 ここに、勇者パーティー内による2対2が成立することになる。

 目の前に魔王がいるのに……


 その頃、当の魔王であるアルフは、


「マーちゃん、そっちにも汚れが飛んでいるのじゃ! ちゃんと拭くのじゃぞ!」

 

 ……だった。


 もう、めちゃくちゃだよ……。

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