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「ルンとデキてるとは、どういうことなのですっ! 私だけって言ったのは嘘だったのですか?」
最初に先陣を切ったは、クリスだった。
「なにっ? どういうことだユウタ? この戦いが終わったら私と契を結ぶではなかったのか?」
続いて、ミキが追撃する。
「ちょっ! ちょっ! ちょっと待ってくれ! ち、ち、ち、違うんだ……、みんな何か勘違いしているだけなんだ!」
うわずった声で応える勇者。
この会話だけで勇者たちの状況を把握するのには十分過ぎた。
あぁ……、あれだ。この勇者、パーティーの女、全員に手を出していたってことか……。
……、なんなのっ! 超羨ましいんですけどっ!
そんな呑気な感想を抱いている俺とは裏腹に、勇者ユウタと愉快な仲間たちは泥沼にハマり続けていた。次に声を上げたのは、金切り声を上げるルンだった。
「はあぁぁぁぁぁ? 超意味わからないんですけど、どういこと? 私以外にクリスとミキ姉とも付き合ってたってことぉ? あーそういうことか、いつも宿屋で夜な夜ないなくなると思ったら、二人の部屋に行っていたのね? おかしいおかしいと思っていたのよ! ふざけんなっ! どうしてくれるのよ! お腹の中には、もう貴方の子供がいるのよ!」
【速報】勇者ユウタ、仲間の女を孕ませる!
とんでもない衝撃発言の爆弾が炸裂した勇者は、拡声器を使ってるのかと思えるくらいの声量で反応する――
「ええええええええぇぇえぇぇぇっ!!! うぇ、うぇ、うぇ、う、う、う、嘘だろ……?」
ろれつが回らないテンパりまくる勇者に、俺は心底『ざまあぁぁぁぁ』と呟いた。
そんな狼狽える勇者に、ボルテージを上げるルンは――
「本当よ! 最近、体調が悪かったら念のために、教会で調べてもらったのよ! どうするのよ?」
「ど、ど、どうするもなにも……。ほ、ほ、本当に俺の子か……?」
この勇者の発言は、さすがの俺も正直引いた。
勇者とは思えない発言にルンは、
「ど、どういう意味よ? 私が貴方以外とも、そういうことしていると疑っているの?」
「だってさぁ、そんな露出高い鎧を着て、そのチャラいキャラだぜ? 一度、二度、イケメンの冒険者に誘われ酒の勢いでって……、ルンやりそうじゃん? 本当に俺の子か、疑うのは仕方がないだろ?」
「はあぁあぁぁぁぁぁ? 何よそれぇぇぇ! 私のことを尻軽って言いたいの? この鎧は、最強の戦士の鎧よ! 好き好んで着ているんじゃないわ! あ、あんなに愛してくれたのに、全てウソだったと言うの?」
ルンが怒るのは、ごく当然のことであって、もっと言ってやれっという応援に似た気持ちを抱き始めていた。しかし、この後の勇者の発言には耳を疑うことばかりの内容であった――
「お前さぁ、本当になんなの? もうすぐ魔王を倒して、いい感じに世界を救う流れだったのに、全てぶち壊してさぁ! 知っていると思うけど、俺、この世界の人間じゃないのよ。この世界へやってきて、なぜか出会う子、出会う子、み~んな俺のことを惚れちゃうわけ。お前も出会って初日に惚れただろ? そんで、そんな状況で一人だけ選ぶってできるわけないじゃん? 皆が争いになるだけだもん! だから皆がいる前ではさぁ、本質をつくようなことは、聞こえているのに聞こえないフリまでして全てはぐらかせてきたのよ……。それなのに、ルンお前ってやつはよぉ、何で言うわけ? しかも事があろうことに子供って……、絶対に言っちゃいけないことじゃん、そういうリアルな話は絶対タブーじゃん。はぁ……、どうすんのこの後? 魔王と戦う流れじゃないじゃん? せっかくメインのパーティーに入れてやったのに、これだもんなぁ……」
あれ? ユウタ……、クズかぁ?
開き直った勇者は、ため息混じりにそう言い切った。
その後、ルンは言葉を失ったのか黙っている。
まぁ、信じていた、愛していた男に、ここまで言われたら何も言い返すことなんてできるはずがない。
そして、この重苦しい空気は、しばらく流れて続けていた。あまりの空気の悪さに我慢できないでいると、ある少女の声が壊してくれる。
「ハハハ……、こ、こんなのユウタじゃないのです……。きっと魔物がユウタに化けて仲間割れを狙っているだけのです……。ハハハ……、魔物は卑怯な手を使ってくるのが上手なのですよ……」
乾いた笑い混じりに震えた声で、クリスは言う。
しかし――
「いや、俺、ユウタだけど、何言ってるの?」
勇者は、即答した……。
そして、再び重い空気が流れ始める――。




