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「まったくもう……、なにをやってたんですか? 部屋を片付けるようにと言っといたじゃないですか! ちっとも勇者とは戦闘もしないで、ゲームばかりして! 立派な魔王になれませんよ!」


 側近の男、通常『マーちゃん』の小言が飛び出す。まるで勉強をしない子供に説教する母親のようだった。


 そんなことを言われてしまった、魔族のトップである者の反応は――


「ごめんなさい……、そんなに怒らないでたもぅ……。今、やろうとしたところじゃったのじゃ……」


 最強と名高い魔王アルフは、そう弱々しく声で弁解した。


 あれ? おかしいなぁ、魔王ってこんなんだっけか……。今までの会話からも、変だな変だなとは思ってはいたが、これが魔王なの? ただの母親と子供の会話じゃん……、厳つい外見の幹部たちにあれこれ指示したり、人間たちへ卑怯極まりない作戦を語り合ったりするんじゃないの? ゲーム? アイス? なにこれ? 魔王から最も遠い言葉じゃん。


 更に、マーちゃんの小言は続いた。


「あっ! また食べかけそのままにしている! カビが生えてるでしようが! 何で食べた物を片付けができないんですか? もう! 貴方は我が魔族の長、魔王なんですよ。しっかりして下さい!」


 しょうもないことで叱られる魔王、何か可哀相でもある。そんな情けない魔王が、どんな反応をするか気になっていると、『スンッ……、スンッ……』と、鼻をすする音が鳴る。


「うぅ……、ヒック、ヒック……。よ、余は魔王なんてやりとうないと言ったのに……。う、う、うぇ~ん!」

「ま、魔王様! 泣くことはないでしょう。わかりました、謝りますから泣き止んでください!」


 えっ?? 魔王が泣いているの? うせやん!

 泣きじゃくったアルフは、マーちゃんを責め立てる。


「お主が、やれって言ったではないか! 余は嫌じゃ嫌じゃって言ったのに! 無理やりやらせたのはお主じゃぞ!」

「いや~、そんなことを言われても……。嫌とか関係なく先代魔王を倒してしまったのはアルフ様ですから……。魔族の者で、魔王を倒した者が次代の魔王と決まってますから……」

「余はそんなこと知らんのじゃ! 魔王になってから誰も近寄ってこんし、マーちゃんは怒ってばかりじゃ! 魔王なんてもう嫌じゃ! やめるっ!」 

「ちょっ! 冗談でも魔王を辞めるなんて言ってはいけません! 配下の者の中には、魔王になろうと暗躍してる者をいるのですよ!」

「そんなにやりたいヤツがいるなら、そいつにやらせばよいではないか!」

「ちょっと待ってください! やりたいからやりますっていうのが魔王ではないと、あれほど説明したじゃないですか! 分かってますか、魔王の座を譲るってことは、その者に殺されるってことなんですよ?」

「そうなの? ……、余は死ぬのは嫌じゃのぅ……」

「ほっ……、死にたくないですよね? でしたら、魔王を辞めるなんて言わないでください! 私もキツく言い過ぎたところは反省しますから、魔王様、一緒に頑張っていきましょ?」


 上手くなだめたマーちゃんだが、幼児のような魔王の機嫌はまだ直らず、こんなことを言い出す。


「ぶー、その『魔王様』っていうのは止めてほしい! 昔みたいに『アーちゃん』って呼んでほしいのじゃ!」

「いやいやいや! 魔王様に対してアーちゃんはダメですよ! 配下の者が見たら、魔王様の威厳がなくなってしまいます。今まで配下の者には、何とかごまかして威厳を信じ込ませてきたのですから!」

「ぶーぶー! なら、二人だけの時だけ良いから、昔みたいに呼んでほしいのじゃ!」

「あ……、そうですね……。う~ん……、二人の時だけですよ? 呼んだら魔王を頑張りますか? もう辞めたいとか言いませんか?」

「うんっ! はようはよう、呼んでたもう!」

「あ……、ゴホン。あ、あ、あ、アーちゃん」

「ク~ン! 良いな! もう一度!」

「も、もう一度ですか? アーちゃん!」

「ク~ン! ク~ン! うふふふっ! マーちゃん!」

「えっ? なんですか?」

「違うのじゃ、余がマーちゃんと呼んだらアーちゃんで呼び返してほしいのじゃ! してくれないなら、魔王をやめるぞ」

「わ、わかりましたよ……。アーちゃん」

「マーちゃん!」

「アーちゃん!」

「マーちゃん!」

「アーちゃん!」

「マーちゃん!」

・・・

・・


 その後も、二人の掛け合いは続く……。


 えっ……。俺……。コレ聞き続けないといけないの?


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