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 あれからずっと俺は、アルフの記憶であろう会話を聞き続けていた。

 聞こえてくる会話相手は、全て同じ側近らしき男の声のみであった。


 そして再び、俺の耳に飛び込んで来る。

 ドタドタと走る足音、側近の男の慌てた声である。


「魔王様っ! 魔王様っ! 来ました来ましたよ! 待ちに待っていた勇者たちですっ! とうとう魔王城に攻めてたのです! 良かったですね!」


 敵が攻めてきたというのに、かなり嬉しそうな側近である。まるでサンタが来たことを、子供に教える母親のようだった。まあ、かくいう俺も勇者来襲と聞いた瞬間、心が踊った。あのアルフが、以前どのような戦いをしてきたか正直知りたいからだ。今までの会話から魔王らしさのかけらもない、ここで一発魔王らしさを俺に見せてほしいと心底願った。


 しかし、こんなアツい展開にも関わらず、アルフの反応は――


「そうか……」


 と、素っ気ないものだった。

 そんな反応に、側近の男は声を強めてこう言った。


「えっ? 勇者ですよ! やっと来たんですよ! あんなに来ることを楽しみにしてたのに……。勇者がいつ来ても良い様にと、私が勇者役までやって魔王の格好いいポーズとかいろいろ試して楽しそうにしてたじゃないですかっ! あんなに張り切っていたのに、どうしちゃったんですか?」

「マーちゃん……、実はのぅ……。余、ポンポンが痛いのじゃ……、勇者には帰って貰ってもええかのぅ?」 

「えぇぇぇぇっ! 帰って貰うって……、勇者は友達じゃないんですよ……。ポンポンが痛いって……、おかしいですね、魔王様は病気絶対耐性をお持ちですから、病気にかかるはずが――。ま、まさか、魔王様っ! もしや、またアイス一気に2つ食べたんじゃないですよね?」

「ギ、ギクッ! そ、そんなわけ……、な、ないのじゃ……」

「ほら、やっぱり! アイスは1つまでってあれだけ言っているのに、本当に聞かないんですから! お腹が痛いのは自業自得ですよ! 勇者には体調が良くないって言っときますから、胃薬飲んで早く寝て下さい!」

「マ、マーちゃん……? 怒ってるの? 怒っちゃ嫌なのじゃっ!」


 その後も大魔王アルフは、ごにゃごにゃと何かを言い続けていた。

 こんな内容の会話を聞いた感想は『ナニコレ?』だけだった……。


 あっ! もう1つあった――


 『マーちゃん』って誰だよ!

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