41
なぜだか分からないが、アルフが以前いた世界の魔王の頃の記憶だ。そう考えると、会話の内容も自然だ。どうして、アルフの記憶が俺に流れているのか、考えられることは1つ、『生命同期』の影響だ。痛みを伝える中で、アルフの記憶も流れてきているんだ。ってことになると、俺はまだ生きている。
そして、また話し声が聞こえてきた。
「魔王様! 魔王様! お喜び下さい! 例のモノみつけてきましたよ!」
「おー! でかした! はよ、見せてたもれ!」
「これぞ、噂の呪いの鎧『ブラックエンペラー』です! あらゆる魔法も受けつけない効果を持つ漆黒の鎧。しかしながら、その呪いは『身体能力半減』と、もう一つとてつもない怖ろしい呪いがあると聞きます。さすがにこれは、勇者たちが発見できたとしても装備するのは躊躇するレベルですよ! さて、魔王城のどこの宝箱に配置しましょうか?」
「よいしょ(ガチャガチャ)よいしょ(ガチャガチャ)」
話し声と共に、金属の擦れるような音が聞こえる。
「ちょっと!? な、なぜ魔王様が、この呪いの鎧を装備しようとしてるのですか? 魔王城内の宝箱に配置するように探させたのではないのですか? それに、この鎧着なくても魔王様には完全魔法耐性があるじゃないですか! ただ呪いを受けるだけですよ!」
「うるさいのじゃ! (ガチャガチャ)余は、この鎧の呪いが必要なのじゃ! (ガチャガチャ)」
「訳がわからないですよ! こんな鎧、装備したら弱くなるだけなのですよ!! やめてくださいっ!」
「余は弱くなりたいのじゃ! このままじゃ……、何もできんのじゃ!」
「えっ!? ど、どういうことですか?」
「この前の将軍の件以来、誰も余に近寄ってこんのじゃ……」
「ま、魔王様……?」
その後、しばらく沈黙が続いた後、再びアルフの声が聞こえ始める――
「余は……余はな……、余は……『人間たちの恋愛』をしてみたいのじゃっ!!」
「……は?」
本当に『は?』である。何言ってんだコイツは……。
この会話はまだ続く――
「人間たちの恋愛って激しいのじゃろ? そうだとすると、余を相手する男は皆死んでしまう。じゃからな、この呪いの効果があれば、できるんではないかと思ったのじゃよ!」
「ま、魔王様……、ちなみに、そんな鎧を着たままで……なんというんですか……その人間たちの恋愛というのはできるものなんですか……?」
「あっ……! た、たしかに……! こんな鎧のままじゃ何もできんではないかっ!!」
コ、コイツ……、転生前からただのアホだわ……。
その後、ガチャガチャと金属が擦れる音が鳴る。たぶん、鎧を脱ごうといているのだろう……。魔族で一番お偉い魔王なのに……、部下にとんでもない告白して、間違いを指摘されて、そそくさと鎧を脱ぐ姿なんて恥ずかし過ぎるぞ!
この後、とんでも発言が飛び出した。
「あ、あのですね……。とても申しづらいのですが……、その鎧、一度装備なされますと一生外すことはできないんですよ……」
「な、な、な、なんじゃとぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」
アルフがどんな顔していたか、想像すると涙がでる――。




