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「クッ! 余をこのような姿に……、あの女神、絶対に許さんぞ!」
湖の水に反射する自分の倒影に怒りを隠せない少女。
彼女の名前は『アルフ』魔王である。
なぜ彼女が、こんなに怒っているかというと少し前のことになる。
勇者と魔王のような世界では、必ず勇者側が勝つように世界は出来ている。
――そういうものなのだ。
魔王時代の彼女は一般的な魔王とは違った、一言で表すと彼女は強すぎた。
大魔王アルフの世界では、勇者達のレベルが幾ら上がろうが、友情パワーで覚醒しようが、奇跡的な現象が起きようが、絶対に勝てない。
勝てないって言うより戦いになってなかった。
――ゲームで言うなら完全なバグである。
この状況を深く嘆いた女神は、異世界から転生者を送ることを決める。
異世界への転生者には、女神のさじ加減で転生ボーナスを付けることができた。
その仕様を利用し、女神はチートレベルの勇者を作ることを決める――
それに選ばれたのが『ユウタ』であった。
心優しく友人からの信頼も熱く、自分のことよりも他人を優先する性格である。
ユウタは子猫を助けるために亡くなり転生者となった。
まさに勇者になるための存在である。
女神はユウタに以下のボーナスを与えた。
・基礎能力Lv99カンスト
・リミッター解除
・物理完全無効
・魔法完全無効
・伝説の装備一式
転生後から俺TUEEEE状態のユウタの冒険が始まった。
当たり前のように勇者となり仲間と共に魔王城へ行きラストバトルとなる。
女神は思った、楽勝だと――
彼女の予想とは大きく違い、戦いは熾烈を極める。
まず仲間は、あっさり倒され勇者一人に。
ダメージ無効のはずが、魔王には通じず勇者ユウタは瀕死まで追い込まれる。
焦った女神は、千年に1度しか起こせない奇跡ボタンを連打した。
ハチャメチャな状態で戦闘は続き死闘の末、大魔王アルフを倒したのであった。
この行為が世界のシステムを歪めてしまうことになる。
転生者に対する異常な能力向上、奇跡の乱用により決して起きてはいけないことが起きてしまった――
『魔王が転生者リストに載ってしまったのである』
大きな力を持つ者の転生は、次の世界への影響が大きいため選ばれない。
一目瞭然このような現象の原因は、この女神にある。
選ばれた転生者は、いくら女神でも取り消しは出来ない。
女神は焦った、この事が他の神々にバレたら自分は消されると……。