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ほら、またコレだよ! いつもこうだよ! 『俺の異世界生活の始まりだ!』なんてバカみたいに期待をすると、すぐにこのパターンだよ……。何度裏切られてれきたことか、この世界は俺を上げて落とすようにできているのか? クソッ! どこで間違った? 俺の言ったことで矛盾していることはないはずだが……。
「おやおや、どうしました? なぜバレたのか考えてらっしゃるようですね?」
「なっ!」
俺の考えを見透かしたようにゴウマは、じっと俺を見つづけている。
どうする? どうする? とぼけるか? いや、ちょっと待て! ゴウマからの『人間の少年』と言う発言からすると、確実に俺の嘘だとバレたポイントは、俺が魔族ではないことだけだ。たぶんだが、魔族にしかわからないことを俺は、人間の感覚で話したことでバレたんだ。それしかない……。どうする? どうやって切り返す。とりあえず、俺の話した内容で俺が魔族ではないと確信になったポイントがわからないとどうにもならない……。しかし、何かを返さないと俺らは死ぬ……。ま、まずは……、俺が魔族ではないことだけでは、アルフが魔王の力を失った証明にはなってないはずだ。まだ終わってない、もっと考えろ!
「もうそれ以上、考えても意味ないですよ!」
「……!!」
このタイミングでのゴウマの発言は、的確に俺の心の臓を止めにかけてきた。
そして、思わず俺は――
「ま、まさか! オレの心を読むことができるのか?」
ピンポイントのタイミング、そしてココは異世界、何でもありな世界。そんな事を連想してしまうのは、ごく当たり前で思わず声に上げた。もし、そうだとするなら今まで考えていたことも全て意味のない恥ずかしいことだったことになってしまう……。
「オーホホホ! やはり、そうでしたか? これで確信しました」
「えっ?」
「いくら魔王でも人の心を読む力なんてないですよ!」
「あっ!」
じわーっと汗が吹き出す感触と、身体の中心から嫌な寒気が俺を襲う。
「ふふふ……、アナタの考えなんて、そんなスキルがなくても手に取るように分かります。そもそもアナタは、命を賭けたことがありますか?」
「い、いや……」
「そうでしょうね、一度も命の危機を感じたことない、戦いを舐めてるとしか思えない思考でしたからね。なぜ分かったか、教えてあげましょうか? オーホホホ! アナタみたいな低能が、この場にいてくれたおかげで、なんらリスク無く噂の魔王アルフを倒すことができそうですから!」
と、魔王ゴウマは上機嫌にそう述べた。
それに対して、この俺は――
クソッ! クソッ! クソがー!! 何をいっちょ前に心理戦をやってるつもりでいたんだ……。恥ずかしくて悔しくて涙が出そうだ……。クソ! 何が『不良対策で編み出した処世術。DQNに怯えた3年間は、決して無駄ではなかった』だ! 無駄だったよ! 戦争も知らない世代が、実際に殺し合いをしてきた奴らとは次元が違うんだよ……。なにが『俺ならできるはずだ』だ、できてねぇよ!
俺の身体は、勝手に震えていた。それは、死ぬことへの恐怖ではない。ただただ悔しかったのだけなんだ。目頭が熱くなり、涙が溢れてくることを我慢するくらい悔しかったからだ。ほんの一瞬だったが、ゴウマと心理戦をしている時は、生きている、楽しいって感じた。俺も活躍することができると……。力なんてない、喧嘩なんてしたこともない。そんな俺が魔王との戦いを回避することができるんじゃないか、勇者とアルフを本当に救う事ができるんじゃないか、と思っただけなんだ。ただ、それだけなんだ……。
『ぽんっ!』
地面しか見ていなかった俺の頭に小さな手の感触が伝わる。それは、今の俺の心情を全て知っているかのように、優しく置かれた手だった。
そして、その持ち主は――
「よ、よくもマサオを傷つけたな……、アイツは余が殺す……」
一度も見せたことのない恐ろしい目をして、彼女は――そう呟いた。




