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「それはなぁ……、そ、そこの勇者とは――、そうそう! この世界を知るために、あえて行動を共にしていたのだ!」
「この世界を知るため?」
「そうそう! この世界に来て間もない。以前の世界では、最強だった我々もこの世界では、どうだがわからない。そのため、わざわざ人間の姿に化け、この世界を調べていたのだ! 偶然にも最初に舞い降りた国に、この世界最強と噂される勇者がいたから奴を言葉巧みに誘い出し、その実力と、この世界のレベルを計っただけなのだ!」
「ほほぅ~、なるほど……。それでは、ワタクシと同じことをやっていたってことですね?」
「それそれっ! 同じことをやっていただけなんだ! 情報収集は基本中の基本だよな! さすが異世界の魔王よ!」
何とか乗り切ったー! いや~、素直に自分を褒めたいね。相手が理解するか、わからないことを延々と説明しても納得するとは限らない、むしろ相手の怒りを引き出す結果にもならない。だからこそ共通認識で説明し同調の意を示しながら、さり気なく相手を褒める。これこそ、不良対策で編み出した処世術。DQNに怯えた3年間は、決して無駄ではなかった。
――魔王ゴウマは、自分の顔の前に手を添え、何かを考えているようだった。
何を考えている? まぁいい、何でも質問して来い! この俺ならお前なんか簡単にねじ伏せてやるわ!
そんなことを考えていると、早速ゴウマの口が開く――
「う~ん、1つわからないのですが……。なぜ、勝手のわからない人間側で、この世界を調べたのですか? 貴方がたは魔族ですよね? その方法なら、魔族側で同じことをしたほうが、効率的で簡単だと思いますが?」
「へ?」
たしかにそうだ……。迷いも何もない正論だわ。おっと、こんなところで慌ててはいけない。今の俺は、スーパーマサオなんだ! 逆境になればなる程、俺の頭は冴え渡る!
ズボンのポッケに手を突っ込んだ俺は、魔王に背を向けこう言ってやった――
「飽きたからだ……」
「は? 飽きた?」
「そう! 女神から話を聞いたかもしれないが、我々は強すぎた。強すぎた結果、生死をかけた戦いもなく全てが虚しくなってしまったのだ。だからこそ! 転生したこの世界では、自分たちに不利になるように、あえて! あえて! 選んだだけなんだ……。強すぎるのも困ったもんよ。だからこそ魔王ゴウマよ! 俺らと戦っても勝機はないぞ。女神から頼まれたからって、命を粗末にはしてはいけない。同じ転生したよしみだ、ここは見逃してやる。この世界で好きに生きるが良い!」
俺つえー最強のマンガを思い出しつつ、虚しさを表す表情をし、更に顔を何度も横に振って、この言葉の意味を重く演出をした――
よし! 決まったー! 自分で言うのも照れるが、かっこよすぎるだろ! どうだアルフ? 俺の弁論術は! この魔王は俺らにビビってすぐに逃げ出すぞ!
乗り切った満足感を感じながら、アルフのリアクションが気になり横を覗くと、
――虚しい表情を浮かべ、顔を何度も横に振ったいた。
フフフ……、こいつ出来るな! 俺の演技に合わせるように演技をして! イリアカントに帰ったらコイツが食べたがっていた骨付き肉でも買ってやるか、道中で勇者が狩った魔物の毛皮は、高く売れるって聞いたし、しばらく金には困らなそうだ、俺らの異世界生活はここから始まるんだ!
死への恐怖から解放された清々しさと、今後のことを考えていると――
「そうですか……、それはそれは、ご親切にありがとうございます……」
と、魔王ゴウマは蚊でも止まりそうな、か細い声でそう言った。
よしよし! キタキタ! その答えを待っていた! 最後の最後でどんでん返しとか、よくあることだから内心ちょっぴり不安だったが、コレで安心した。
喜びの表情を必死に堪え、低い声を絞り出す――
「そうか、それが賢明だ。命あっての異世界生活だ。お互いこの世界で仲良く生きようぜ!」
俺はトランクスが未来に帰る際にベジータがやった、あの伝説のポーズと同じように二本指を上げながら――そう言った。
そして俺は、アルフに向かって――
「よし、話はついた。イリアカントへ帰ろう! 勇者は俺が担ぐから、お前は他の荷物を持てよ」
「あぁ……、うん……。そうじゃな……、そうなれば良いのじゃが……」
そのアルフが放った発言に、違和感を感じた瞬間だった――
「プッ! ふふふ……、ハハハ……。アーハハハハハハー!!!! これは失礼、お下品でしたね! オーホホホ! あまりの嬉しさに堪えきれませんでしたよ!」
「えっ?」
ゴウマの発言に対して、何が起きたのか考える余裕も無く――
「本当にありがとうございます。これで全てが分かりました! この人間の少年には、感謝しかありませんよ!」
そして――
「アルフさん、アナタ『魔王の力』失ってますね?」
――と、こう続けた。




