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「誰がチビじゃ!」
土下座姿勢のまま『ポコンッ!』という音と共にアルフのゲンコツの衝撃を頭部に感じながら、俺はこの先の流れを何通りも考えていた。よいしょ、ゴマすりをする場合、相手の状況を見誤ると大変なことになる。今のこの状況で「エクスピアリアンス・サイズって最高の武器ですよね!」なんて言ってみろ、ただの嫌味にしか聞こえなく更に酷い状況になることは分かっている。だからこそ今は謝罪のみ、アルフが傷つけた自尊心を回復させることが大事なんだ。魔王ゴウマが再び俺らに対してマウントを取った状況に戻れば、よいしょ、ゴマすりが効果が出る。不気味な兜、自己主張の激しい肩パット、なんでもいい褒めまくって気分を良くしたところで命乞いをする。相手にとって俺らがプラスの存在と思わせれば良いだけなんだ。これが、中学時代DQNから身を守るためにしていたことだ! さぁ、心置きなくマウントを取れ! 気色悪い笑い「オーホホホ!」を早く言え! 俺には、ゴマすりの準備はできているんだ!
ところが、魔王ゴウマの反応は――
「チ、チビ? アナタは何者ですか? ただの人間ではありませんね」
と、俺の予想していない答えが返ってきた……。「俺はこの先の流れを何通りも考えていた」なんてカッコつけていたが、この答えは意外だった。そもそもレベル350の魔王が、俺なんかに興味を持つ理由がないからだ。あまりにも想定外過ぎて頭が真っ白になり、
「はい?」
と言う間抜けな声を上げてしまった。すると、魔王ゴウマは――
「レベル5の人間のはず……。魔王に向かって、そんなことが言えるはずがない。何者ですか? 早く答えなさい!」
この瞬間、俺の頭の上に『ピコーン!』と電球が上がる。
そうか! コイツはアルフが『魔王の力』を失っていることを知らないんだ! だからさっきから、さっさと攻撃してくればいいのに、何時まで経っても攻撃してくる様子がない。これは女神から聞かされた魔王アルフの情報せいだ。さっきの意味不明な武器自慢は、本来のアルフの実力がわからないから牽制してるだけと考えると辻褄が合う。だからこそ、噂の最強魔王とレベル5の人間の会話は、理解できず混乱した。よしよし、これは使える! 俺らが生き残れるチャンスはある! そして俺は、一世一代の博打にでる――
「ふふふ……、バレてしまったようだな! 俺の正体を!」
ズボンに付いたホコリをポンポンと、はたき落としながら土下座姿勢から静かに立ち上がる俺は、笑みを浮かべながら言ってやった。すると、ピエロが履いているような先の尖った履物した脚が一歩二歩と、後ろへと下がる。
「なっ! なんですって?」
その瞬間、俺は確信した――こいつ、完全にビビってやがるなっと。これはチャンス、このままハッタリし続けて、この場を切り抜けるしかない! この先に必要とされることは、テンプレ魔王の野郎が俺のことをどう思っているか予想して、それに合わせてシナリオを組むこと。ちょっとでも疑われれば、その瞬間終わりだ。
「ご察知の通り俺は、ただの人間ではない。そこにいる魔王アルフと同じ世界からやってきた魔族の者だ! ちなみに俺もアルフ並に超強い」
と、言ってやった! 今の発言の大事なことは2つだ。1つは、先程までの発言から考えてコイツは、人間に対しては恨みしかない。だから人間ではないよ同族同士仲良くしようねアピール。そして2つ目は、俺も強ぇから手出すとヤバイよ、マジでヤバイから攻撃しちゃ駄目アピールだ。ふふふ……、完璧なハッタリだ! こんな状況だが、意外にも自分が冷静に行動できていることに自画自賛していた。
この後は、ゴウマからの質問のために、ある程度の答えを用意しとないといけない。まぁ今の俺なら、アドリブでなんとか答えられるはず。そうこう考えていると、さっそくゴウマからの質問が俺を襲う。
「ほぉ~なるほど、アナタも異世界から来たのですか。それなら3点程お聞きしたい。1つは、魔王アルフさんも貴方も見た限りでは人間にしか見えませんが、どういうことなのですか? 2つ目は、貴方がたのレベルですがレベル5っていうのは何ですか? アルフさんに限ってはレベルさえもない。ワタシが先程やったステータス偽装スキルを使ってるとして、その目的は? 最後にですが、この世界の勇者と一緒に行動していた理由は?」
こ、こいつ……。三つも一気に質問してきやがった……。質問は、1つずつってお母さんに教わらなかったのかよクソ! 俺らが人間にしか見えない理由やレベルのことは考えていたが、勇者と行動している理由は考えていなかった……。クエストをクリアするためなんて言えない……。全ての理由を1つの線に繋げなければ、後々ボロが出る……。考えろ、考えるんだ、俺ならできる。そして――




