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 目の前の戦いは、俺には見えない。

 一瞬だけ閃光は、光るものの後は音だけだ。

 金属同士をぶつけ合う音、パンパンに膨らませた袋を一気に手で破裂させた音、などなど複数の音がゴジャゴジャと俺の聴覚を刺激しているだけだった。

 何が起きているのか、わからない俺は、ただただ戸惑う以外出来ないでいる……。


 俺の隣りには、赤い瞳の少女がいる。

 元魔王のアルフは『魔王の眼』を持っていて、目の前の戦いが見えているらしい。


「ん?」


 突如アルフは、難しい顔に表情を変えると、俺の手首を掴み走りだした。


「どうした?」


 俺は、反射のように声を上げる。


「いいから、こっちに来るのじゃ!」


 アルフに言われるがまま、俺は走る。

 その後、すぐだった――


『ヒューンッ! ゴロゴロッ! ドンッ! パラ……、パラパラ……』


 その雷のような音は、俺らが居た場所から爆発が起きた音であった。


 目が点になっている俺は、


「なんだなんだ? 何が起きた?」


 自分で分かるくらい情けない声だった。


 ソレに対して少女の目線は、爆発した場所でなく勇者と魔王の戦っているであろう場所にあった。

 そして落ち着いた声で、


「あの勇者め、とうとう守りながらの戦いにも、限界のようじゃな。余たちのこと気にせず戦えば良いのに」


 さらりと、大切なことを言うアルフ。

 その言を聞いた後、俺の脳みそはフル回転をして意味を理解した。


「えっ? アイツ、俺らを守りながら戦ってるの?」

「この洞窟に入ってからな。余たちが戦いの巻き添えに遭わんように戦っておった。勇者に守られるなんて、気持ち悪くて仕方がないわ!」


 と、目を細めて、渋い顔をするアルフ。


 この瞬間――俺の感情はというと、クラスの人気者を見ているくらいの劣等感が――俺の精神を支配はじめた。



『くやしい……』



 と。


 率直な感情に俺は、ただただ驚いた。


 相手は、勇者だぞ。

 一般庶民の自分と、何を比べているんだ。

 で、でも、俺は、なぜココにいるんだ?

 夢にまで見た『異世界』だぞ。

 ただ、守られるためだけに来たのか?

 クソ! 

 クソが! 

 こんなんじゃ、前の世界と変わらない!

 嫌だ! 



「おい! 聞いておるのか!」

「えっ?」


 アルフの声で俺は、我に返った。

 銀色の髪をした少女は、俺を睨みつけている。


「いいか、マサオ。余の側から離れるんじゃないぞ! 下手した死ぬぞ!」


 俺の手首を握りしめた、その小さな手――力強く、安心感さえ与えてくれる。




 コイツにも守ってもらっているのか……。

 本当に俺は、ココに何しに来たんだ――。




 ふざけるな!!!!

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