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 この世界には、勇者になれた者は7人いる。

 勇者になる条件は、全ステータスを200以上。

 この条件は、努力では決して辿り着けないハードルとなっている。

 すなわち生まれつきの才能が全てということである。


 その7人は、大国とされている7カ国に1人づつ配属されていた。

 それは、大国同士のパワーバランスの均等のためと世界条約で決められている。

 勇者は魔王軍に対する最大な矛であり、国を守るための最大の盾である。


 ここイリアカントに所属する勇者は、エリカの兄『グルモ』である。

 彼は若干18歳で勇者になり、20歳にはレベル上カンストの99にも達していた。

 グルモは、他の勇者より天才と呼ばれていた。

 

 その理由は――

 個々の才能というのは、レベル幅のポイントの数値と言われている。

 レベル幅の数値によって勇者になれるかが決まるからだ。

 グルモはレベル幅の数値が最大である。

 しかし、この最大数値を出したのは別の勇者でも何人もいる。

 つまりグルモの凄さはソコではない。

 彼は『レベル上げに必要経験値が最少』であったことである。


 レベル上げに必要な経験値は人によって違う。

 レベル1から2に上げる場合――

 経験値10必要な人もいれば、経験値1だけで上がる者もいる。


 すなわち、必要な経験値が少なければ少ないほど早く成長できる。

 グルモが若干20歳でレベル99になれたことは、そういう理由があるのだ。

 つまりグルモは、天才の中の天才であった。

 ――分かりやすく例えると俺つえーモノ作品の主人公だと言うことだ。


 天才グルモは、強さだけではなく容姿もイケメンであった。

 本物のゴールドと間違うくらいの綺麗な髪。

 顔は目、鼻、口が絶妙な位置に配置されている。

 体は細身ながらもついた筋肉は、同性の男たちも憧れるほどである。

 そんなグルモは、ハーレムラノベ主人公なみの理不尽なモテ方をしていた。

 ――まるでマサオとは真逆な存在である。


 そんな勇者になれた者は、国の宝であり特別な扱いを受ける。

 クエストなどを受けなくても国から定期的に報酬を受け取ることができた。

 さらに勇者と組むパーティは、国が面接をして最適なメンバーを選んで貰える。

 各国の勇者パーティは、国ごとに競い合うように力を入れていた。

 それは――国の強さを表すことだからだ。


 しかし、イリアカントでは勇者パーティは存在しいない。

 もちろん勇者グルモとパーティを組みたい冒険者は、ごまんといる。

 なぜかグルモが全て断っているのだ――その理由は誰も知らない……。


 という勇者グルモの話を聞いた――マサオとアルフであった。


 その後、エリカは仕事の休憩中に抜け出してきたとして、すぐに職場へ戻った。

 残された二人は、彼女に聞かされた家に向かっている途中である。


「グルモさん凄いよな! そんな天才に手伝ってもらえるなんて嬉しすぎるぜ!」


 喜びに打ち震えるマサオ。


「そうか、それはよかったのぅ……」


 冷めた目で流すアルフ。


「なんだよ、機嫌悪そうだな? お前にとって勇者は敵かも知れないが、今回は仕方がないだろ?」

「……、別にそのことで怒っておらんわ」


 アルフは地面を見たまま答えた。

 少女とは対象的に少年はご機嫌で口を開く。


「それにしても話し聞いただけでもグルモさんカッコイイよな~! パーティ作らないってところが痺れるぜ! なんかさ? 俺に似てる感じがしないか?」

「ぜんぜん」


 即答するアルフ。


 話に聞いた勇者に親近感を持つマサオである。

 ――パーティを作らない=ボッチという発想のようだ……。


「そんな勇者様が俺たちと特別にパーティ組んでくれるんだぜ! 凄いよな! たぶん俺に何か可能性を感じたんだぜ! 絶対! よっしゃー! なんか流れ来てないか? 異世界冒険の素晴らしい流れが!」


 勇者とパーティを組めるのは、自分のまだ見ぬ才能ではないかと考え希望を持ち始める少年だった。


「はぁ……」


 そんな少年を横目で見る少女は――大きくため息をついた。



 そして、勇者グルモの家に着いた。

 これから輝かしい未来が待つドアを緊張気味にノックした。

 ドクンドクンと大きく鼓動を響かせるマサオの心臓。


『ガチャッ』


 開く扉――

 金色の髪が風になびかせ顔を出すイケメン。

 ゴクリっと息を飲むフツメン。

 イケメンはフツメンに目線を合わせた。

 目が合ったフツメンはカチカチになりながら口を開く。


「あ、あ、あ……。エ、エ、エリカさんから話を聞きまして来たのですが……」


 そんなキョドり気味の少年の話を聞いたグルモは「ハッ!」と何かに気付く。

 イケメンは少年から視線を外し――その周辺を見始めた。

 そして、銀色の髪をする少女を発見する。

 するとグルモは家から飛び出し少女の元に近づき――アルフの手を握った。


「う、う、美しい……」


 天才勇者の第一声はコレだった――。

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