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「終わりだ……、もう終わりだよ……」


 絶望に打ち震え、頭を抱える少年がいた。


「何を嘆いてるのじゃ! そろそろハラ減ったしメシ食いに行こうぞ!」


 その隣には、脳天気な少女もいた。


 二人は初モンスター(スライム)との戦闘に挑んでいた。

 熾烈な戦闘の末、敗北。イリアカントへ逃げ戻っていたのだ。

 そして、城下町の入り口で座り込んで動かなくなっている少年は泣いていた。


「あああああ! スライム1匹だけだぞ! 勝てないって冒険者として完全に積んでるじゃん! ゲームで言うならゲームバランスが崩壊したクソゲーだよ! 今後どうすればいいのよ! 生活費は? 働くの? ふざけんなよ! せっかく異世界まで来てコツコツ働くのかよ! ラノベだと今頃ヒロインとかと出会って共に冒険始まってる頃じゃん! もおおおおお! そんなのズルいよぉぉぉぉぉ!」


 異世界に夢見ていた少年は、泣きながら喚き散らすのであった。

 ――前の世界と全く変わらないことを言い続けるマサオである。


 相棒であり元大魔王でもあるアルフは、ポンっと彼の肩に手を置く。


「そんなに気にするな! あのスライムは只者ではなかったのじゃ! 余たちのせいじゃない! 気を取り直してメシでも食いにいこう!」


 少年は魔王の手を振りほどく。


「はああああ? もおおおおお現実から目を離すなよ! アレは普通のスライムなの! 俺らがヘッポコ過ぎたんだって!」

「なんじゃと! 余がヘッポコと申すか! 余は大魔王アルフぞ!」


 マサオは足をバタバタさせながら、


「あああああもうその話はやめろよ! しつこいわ! お前はもう魔王じゃない! ヘッポコ少女なんだって! なんで俺にはヒロインが登場しないんだ! 隣にいるコイツは確かに女だけど、ただのガキだし。それに中身は魔王だろ? 人間にしたらただのおっさんじゃん……。不公平だよ!!」


 アルフは、顔を真赤にし頭の上から湯気が吹き出る――


「もおおおおお! 今、言ったこと訂正せよ! 余はおっさんじゃないぞ! 確かに魔王じゃったが、れっきとした女じゃ!! 女をおっさんと呼ぶのはあまりにも失礼じゃ!!」


 【速報】大魔王アルフは♀だった!!

 ――その女宣言にマサオはどう出る? 


「あ? そうなの? どうでもいいよ……。中身が女でも今はただのガキじゃん。俺、ロリコンじゃないから」


 ――反応うっす……。

 アルフは思った――この敗北感はなんじゃろう……。




 その時だった――


「あ、あの~」


 醜い争いをする二人に意外な人物が声をかける。


「なんだ!」

「なんじゃ!」


 二人は息ぴったりに答える。


「ひぃ!」


 そこには驚き怯える少女がいた――

 マサオと同じ歳くらいの少女である。

 金色の髪をツインテールにして、体は細いのに、それなりに胸はある。

 そして、顔はめちゃくちゃ可愛かった。


 マサオは「ハッ」と我に戻り、


「は、はい? な、なんでしょう?」


 思わず女子と意識をしてしまい声が裏返ってしまう。

 ――モテナイ男のあるあると言うものだ。


「あの後のことが気になってしまって……。大丈夫ですか?」


 マサオの頭の上には【?】が浮かぶ。


「えっと? あの後とは?」

「あっ! すいません。私、クエストの館で受付けをやってます『エリカ』って言います。あの時は制服だったので分からないですよね」

「あっ! そうでしたね。あの時は、お恥ずかしい姿をお見せして……」


 思春期な少年の顔は、タコのように真っ赤になる。

 憶えていなくてもそのはず、錯乱しすぎて顔などほとんど見ていない。

 

 エリカはモジモジしながら、


「実は私、受付けの仕事始めたばかりなんです。まだまだ分からないことばかりな状態で、お連れ様のクエストを受けてしまったんです。本当にごめんなさい」


 申し訳なさそうにするエリカは、少年の目には特別可愛く見えた。

 マサオは頬を赤くしながら、


「いえいえ、気にしないでください! ちょうど今、軽くモンスターを狩ってきたところなんですよ! ハハハ! まぁこの調子ならクエストのモンスターも余裕ですよ! ですから本当に気にしないでください。悪いのは、このチンチクリンですから! 迷惑かけて申し訳ございません」


 深々と頭を下げる少年。

 隣りにいた元魔王はイラっときた。

 『ボスッ』と細い腕から繰り出すボディが入る。


「誰がチンチクリンじゃ! おい娘! この男、嘘ついておるぞ! スライムすら倒せな――モゴモゴ……」


 マサオは急いでアルフの口を塞ぎながら、


「本当に大丈夫ですから……。 アハハハハ」


 二人のやり取りを見て、エリカの顔に少し笑みが浮かぶ。


「余計なお世話かもしれませんが、今回の件を兄に話したら一緒に討伐行ってくれると言ってくれたんです。もしよかったら兄と一緒に行かれるのはどうですか?」

「え? いいんですか? 僕とかレベル1で迷惑かけちゃうと思いますが」


 エリカは眩しいくらいの笑顔になり、


「大丈夫です! 私の兄は『勇者』をやってますから!」


 少年の頭の中にファンファーレが響き渡る!

 

「ええええええ! 勇者様ですか? もう勝ち確じゃないですか!」


 少年の笑顔にエリカも嬉しそうにしている。


「はい! 兄に全て任せれば大丈夫です!」

「ありがとうございます! 本当にありがとうございます!」


 マサオは涙を流しながらお礼を何度も言うのであった。

 気づくと感謝の気持ちを表したくてエリカの手を握っていた。

 あっ! と言い、素早く手を離す少年。


「すいません! あまりに嬉しくて!」

「いえいえ、いいですよ。私も喜んで貰えて本当にうれしいです!」


 マサオは心の底から思った――

 本物の女神にも会ったことあるが、エリカこそが本物の女神様だ!

 本当に異世界へやってきて良かった~!

 エリカと出会えただけでも、その価値はある!




 アルフは少年がツインテールにデレデレしている姿を、ジーっと見ていた。

 その顔は、何か不満そうであった――


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