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 彼は、カールの後ろに立っていた。幻覚でも何でもなく、そこに間違いなく存在している。名をマサオと呼び、なぜかあのアルフと共にいる謎の少年である――。


 ワタシは、あまりにも信じられぬ光景に残った右手で口を覆った。そんな感情は、ワタシを殺そうとしてる天界人も例外ではなかった。見開いたカールの目は、瞳孔が散瞳している。そして、即座に振り向いた大天使は、目の前の光景に一瞬言葉を失い、グっと首を後ろに引くと声を上げる。


「な、な、な、な、な、なんだキサマぁぁぁぁぁ! ど、どこから現れた? んっ! キ、キサマは確か……この手で爆殺した人間ではないかっ! なのに、なぜ生きてる……? システム上でも完全に消えていたのぞ……! ま、まさか……アルフが別世界から遠隔で……い、いや……そんなことできるわけがない……! お前は何者だ? ただの下界人ではないな……?」


 錯乱しているのか異様に眼球をキョロキョロさせながら、カールは震える声で叫ぶ。この天界人の反応は理解できる。確かに反目爆発の後、システム上からマサオの存在は完全に消えていた。だから、ワタシはてっきり死んだと思っていたのだ。だが、そんな人間が何くわぬ顔でひょっこり現れたら取り乱すのも分かる。これは、ワタシとカールのようにシステムが見れることが、更に驚きを割増しさせているのだ。そんな大天使に対してマサオは、不思議そうな表情で――


「えーと……何を言っているのか分からないんですけど……あっ! もしかして、話の途中で席を外したことを言ってます? なら、すみません……! 実はあの時アルフに、この空間の結界がなくなったのなら、そこで倒れている勇者を洞窟前で待っている仲間の元へ連れてってやったほうがいい、このままだと死んでしまうと言われまして、取り急ぎ担いで洞窟の入り口まで運んでいたのです。で、その途中でココから大爆発が起きまして……何が何やら分からず急いで戻ってきた次第です。ちなみにアレは……魔法の類の現象ですか……?」


 ――と、あっけらかんに話す。正直、耳を疑った。あの一瞬で勇者を担ぎ、その場を去ったことに……。ワタシには何も見えなかった……それにシステム上でも、そんな行動をしたことが認識してされていないのだ……。そもそもアルフの声なんて聞こえたか? どういうことなのか? たしかに勇者が消えたのとマサオが消えたのは同時である。ま、まさか……そんなことがただの人間に可能なのか……? 知る者になって、こんなに驚いたことはない。それは天界人も同様のようだ。目を見開いたまま、とても信じられないことを聞いた表情をして、カールはこう切り返し始めた。


「そ、そんなことができるわけがない……! どこをどう見てもただの人間だ……システム上でも問題はない……。な、なのに、なんなんだキサマは……? ま、まるで……アルフみたいな……はっ! まっ……まさかっ! キサマ……チカラを――マ、マ、マズイっ!!」

 

 と、言った瞬間、カールの右腕は握られた聖剣をおもむろに振り上げた。そのターゲットは、もうすでにワタシではなかった。そう、マサオに対して振り下ろそうとしていたのだ。


「あぶないっ!」


 ワタシは咄嗟に声を上げた。どうにかしようとするが、左腕の出血量が思ったよりも酷く、思うように体が動かない。ダメだ、間に合わないっと思った瞬間――


『ドカァァァァァン!!』


 突然、全く関係のない大空洞跡に残っていた大岩が爆発した。不思議に思ったが、すぐにマサオへと視線を戻す。まだ聖剣は振り下ろされる前だった。少し安堵した束の間、そこにマサオがいないことに気付く。何が起きたのか目を丸くしているカールは、振り上げた体勢のまま固まっている。すると――


「あービックリしたぁ! そういうの振り回すのやめてくださいよ……こっちは、そういうの慣れていないのですから……」


 爆発した煙の中から、マサオの声が聞こえてくる……。いつの間に、あの場所へ移動したのか……? またもや全く見えなかった。システムでは何の異常も起きていない。カールだけではない、ワタシも目を丸くして固まってしまった。そんな奇妙な中、煙の中から徐々に姿を見せたマサオは――


「ちょっと前から思っていたのですが、この世界の地面もこの岩も、随分と脆いんですね。よく、この程度の固さで洞窟として成り立ってるのか不思議で仕方がないですよ……まぁ、ここだけかもしれませんが。まるで、ふ菓子みたい感触だ……」


 ――何やら地面や近くにある岩などを確認するように触り続け、その右手には大きめな石が握られた。そして、彼が軽く握り始めたら、次の瞬間には石は粉々に砕け散った。


 マサオのそんな姿を見て、率直な感想は『異様』だった。この世界の岩は、比較的に固めに存在している。システムを見ても何ら問題ない。ただの人間が軽々しく片手で砕ける固さではない……。その時、カールの言葉が気になり始めていた。「まるでアルフみたい」とは、どういう意味なのか……? その真意が気になり、カールへと視線を動かすと、そこには酷く息を荒くして滝のように汗を流す大天使第三位の姿がそこにあった――。 

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