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 奇妙な表情を浮かべるアルフに困惑した。今のアルフは、完全に世界から切り離された存在、今はワタシから見えてはいるが、全くの別世界である。あの世界は、例えるならトカゲの尻尾のようなモノだ。切り取られた尻尾は、新しい尻尾が生えるまで、その場に存在し認識し続けるが、いざ新しい尻尾が再生すれば、その場にただ残され忘れ去られる存在となる。つまり今のこの世界は、切り離された世界の再生をしている最中である。それまでの時間、アルフが存在する世界は、今のワタシたちも認識はできるが、いざ世界の再生が終われば、認識も視聴も不可能になる。切り離された世界は、人も魔族も存在しない、ただの切れ端の世界、アルフ以外存在しない何もない世界なのだ。想像するだけでも恐ろしい世界なのに、なんでそんな表情ができるのか、ワタシには理解できない……。


 この現象は、カールの話からすると、『第三層のシステム介入』ってやつなのだろう。想像もできない介入だけど、あの神器『雨季の杖』には、そのコードが刻まれていたのだ。到底、今のワタシには解読どころか読み取る事も不可能。それに、わざわざ杖を奪って使用したところから見て、カールにも使用できないコードなのだろう。切り取られた世界とアルフの動向に気を取られていると――


『ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン』


 と、再び謎の共振音が耳に入った。そして、上空に浮遊するカールの姿が視界に入る。


「おっ! おっ! これは、見事なホールインワンってやつかな! ちゃんと僕の想像した所にピタリと入ってる! あの距離から、この場所に打ち込む力加減は間違ってなかったなぁ! おっ……うんうん、ちゃんと回復もしているな、関心関心! あんなんで死んでしまったら、知る者研究にならないからね! っと……」


 と、言いながら、カールは上空から降りてきて静かに着地する。続けて、こちらを見ながら口をひらく。


「クリスちゃん、システム移動するのは自由なんだけどさ、あんまり遠くには行かないでくれる? 僕の最優先任務は、この『アルフ』なんだから! まぁ、ほっといても大丈夫だろうけど、ちゃんと最後まで見届けるのが僕の義務なわけよ。だからさ、ルールを1つ作ろう! アルフが見える範囲で戦うこと! はい、決まり! もし、見えない距離まで離れたら、さっきみたいに痛い痛いお仕置きするから、よろしくね!」


 と、一方的にルールを設けてくる。そして、当然のようにワタシの了承を聞くこともない。もうすでに、殺し合いの最中の会話ではない。まぁ、カールがあんな言い方するのは、よく分かる。だって、システム介入をしても勝てない、物理的に戦っても勝てない、どんなことしてもカールには勝てないのだ。そもそもカールのあのスピードはなんだ? システム移動のような場所入れ替えとは違う。物理的に移動しているのは見えた。でも、この世界のシステム下で出せるスピードではない。『ソク系統』の身体強化魔法を使っている様子もない。そもそも魔力を使っている痕跡さえない。なら、なぜあんなスピードで動ける? あーもう……ぜんっぜん分からない……どうしようもない状況だ……。


 そんな中、「あーあ……このまま……実験動物のようにオモチャとされ、最後はなぶり殺されてしまうのか……」と、声は出さずに心の中で呟いていると、ある事に気づく。


 何気なく見続けていたカールの足元のホコリや砂が妙に浮いていることに。カールが着地して舞い上がったモノは全て地面に落ち着いたはず、でもまだプカプカと浮いている。それに今は全く風は吹いてない。何かおかしいと思い、気付かれない程度に極小範囲で、カールの足元にある砂の一部をシステム移動で自分の足元へ移動させた。


 移動させた砂は、ワタシの足元でもまだプカプカと浮いている。カールに悟られないように顔は動かさず、目線だけをその砂に向け続けると、ある事に気付くことになる。一見、何の変哲もない砂だが、システムコードで読み取ると、この砂には一切の『力』が働いてないことに気付く。この世界で存在する限り少なからずも重力は働くはずだが、この砂には一切重力がかかっていないのだ。実際、重力をコントロールする魔法は存在するが、かけている間のみと制限はいろいろとある。これは根本的に違う。この瞬間、カールのスピードの秘密について、全て理解した。そして、彼がとんでもないことを、し続けていることに度肝を抜かれた。


 しかし、絶望に感じられていた状況に、一筋の光が差し込む。ほんの少ない可能性だが……『やり残した事』ができるかもしれない――。


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