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「さてと、知る者のシステム介入はある程度分かった。あとは、システム下による戦闘能力だが……うん、そうだな、まぁ普通に下界人みたいに戦ってみれば分かるか!」


 と、カールが満足げに口にすると、コキコキと指を鳴らす。そして、続けるように――


「あぁ、そうだ。キミはシステム介入でもどんな武器でも何でもしていいからね! 殺す気でやってよ! ちなみに、僕はコレは使わないであけるから安心してよ!」


 と、言うと、腰にかけている、きらびやかな鞘に収められた大剣をコンコンと叩いた。憎たらしいほど余裕たっぷりなカールに対し、さっきまでの苛立ちはワタシの中には存在していない。もう生き残ることは絶望的だからだ。相手の情報を集め、弱点や隙を見つけ、作戦を組み立てる。自分よりも強者と戦って生き残る方法は、それ以外ありやしない。だが、もうそれは全てやった。もう何もない……。


 そして、ワタシは「諦めるか?」と自分に問う。すると、以外にも答えは「No」だった。続けて「結果が分かりきってもやれる事は全てやれ! やり残したもあるだろう?」と、言ってくる。自分でも知らなかったが、諦めが悪いらしい。もしかしたら、ワタシが作られる前のクリスがそう言っているのかもしれない。そうだよね、人格を奪われて何もせずに死ぬのだけは嫌だよね?


 ワタシは右手に握られているダガーを前へ構えた。最後まで戦う事を誓った、もう一人のクリスに……。


「いいねいいね! やる気だねぇ! そうこなくっちゃ!」


 と、カールが嬉しそうに言うと、自分の足元の地面をコンコンと軽く踏みつけた。何かを確かめているようだ。そして、カールは何か納得した表情を浮かべる。次の瞬間、地面に向かって右足を力強く踏み込んだ。『ガゴンっ!』と地面が砕ける音と土煙がカールを包み込んだ。

 

「よし! じゃあ、いっくよー!」


 土煙の中から声が上がり、驚くような光景が広がる――


『ズババババババァァァァァン!!』


 と、連続で爆発する轟音が鳴り響く。そして、次に気がつくと、見た事もないスピードで一気にこちらに飛び込んで来る。カールの後ろからは物凄い土煙を上げていた。そして、すぐ目の前まで接近される。声も上げることもできないくらいの刹那、カールの左拳が今まさにワタシを捉えていた。避ける暇もない。ここは、システム移動しかない。前もって見えている範囲の『場所コード』は全て暗記していた。更にこんなこともおろうと自分の場所とコード一部は書き換えている。これなら間に合う。


 ワタシはシステム移動を使い、なんとかその場を切り抜けた。場所は、さっきいた所から南西に山3つ分ほど離れた場所。カールが山ごと大空洞を吹き飛ばしてくれたおかげで、広範囲でのコードの収集も可能になった。さきほどの土属性魔法での戦闘中、できるだけ遠くの『場所コード』は取得していたのだ。これからはシステム移動はかなり広範囲でできる事になる。まぁ、システムが見れるカールに対してあまり意味がなく、逃げ切ることは不可能だろう。しかし、これだけ離れれば、システム移動してきてもある程度の時間は作れる。ワタシの移動した場所を把握して、その場所のコードを読み取る。そして、書き換える。その3工程でも、少しだけ時間はかかるはず。それに、カールがシステム移動したとしても、システム干渉した際のシステム変化は事前に分かる。だから、いきなり現れることはなく、不意打ちなんてこともない。これからは、システム移動を駆使して戦う事になるだろう。ま、この間にあのスピードとまともに戦える方法を考えようっとした瞬間だった。


『ブゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥン』


 何らかの共振音が聴覚を刺激する。それは、だんだんと近づいてくる。ワタシは聞こえてくる方角へと顔を向けた。そこで、ワタシは息を飲んだ。目の前には……もうすでに……カールがにいるからだ……。システムは常に監視していた、システム移動ではない。


「えっ! う、うそ……」


 そう、口にした瞬間、カールの左拳がワタシを襲う。駄目だ……今からではシステム移動は間に合わない……。咄嗟に両腕を顔の前に持っていった。だ、大丈夫……常に最上級防御魔法はかけ続けている。一発殴られたところで死ぬことは――『ドスン!』


「ぐはっ……」


 右脇腹から酷く鈍い音がした。続いて、ダメージを受ける感触、つまり激痛が走る。頭の頂点から足のつま先まで走る衝撃、今まで食らったダメージとは比べ物にならない。あまりの衝撃で自分が地面に足がついてないことに気づく。そのまま衝撃に抗う事もなく吹き飛ばされた。意識さえも吹き飛ばされそうになる。何もできず、何も考えず、身を任せまま吹き飛ばされた。そして、意識が遠くなっていく中、地面との接触を感じる。その後も、運動量の勢いは止まることなく、地面との摩擦で火が起きるほどにワタシの体は引きずりながら滑っていく。そして、止まった。これは、ほんの一瞬の出来事である。


「おえっ! ごほごほっ! ハァハァ……」


 息ができない苦しみと同時に、物凄い吐き気がこみ上げてくる。そして、大量の血を吐き出した。たった一発で……ワタシは甘く見ていたかもしれない。どこかで下界人との戦いの範囲で考えていた。ダメージを受けても大丈夫なんて下界の戦いだ。そんな甘い考えは捨てろっ! 次、食らったら確実に死ぬ……。


「ハァハァ……ポ、ポーションを……は、早く使わないと……」


 回復魔法が使えない私にとっては、ポーションだけが命綱だ。腰にかけている道具袋に手を入れ、必死にポーションのビンを掴む。それを、震える手で引き出すと残った力で栓を抜き、がむしゃらに口の中へ流し込んだ。みるみるうちに痛みは消え、脇腹にあった激痛と違和感はなくなった。体にチカラが戻っていることを実感しつつ、瞑っていた目を開いた。


「えっ?」


 目の前の光景に、思わず声が出た。目の前には、世界から切り離されたアルフがそこいたから。すかさず、辺りを見回すと、倒れているこの場所は、ずっと戦っていた大空洞の跡地だった。結局、元の場所に引き戻された事になる。ワタシはあ然とした……あの場所から、この場所までどれだけ距離があるのか……そんな距離を人間一人吹き飛ばすなんて下界人でできる芸当ではない。驚きを隠せないでいたが、それよりも声が出た原因は、別にある。


 それは……目の間にいる……アルフが……こんなワタシを見て……不気味に微笑んでいたから――。

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