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 これは、本当に賭けだった……。

 

 ワタシは、知る必要があった。大天使……いや天界人は、どこまでシステム介入ができるかについて。ワタシの結界を消し去った事から、ワタシの知らないシステム介入があることは分かっていた。そんな手の内を知る為に反目爆発を起こした。反目爆発、つまりこの世界どころかカールの命も危うくする状況を引き起こせば、必ずシステム介入して止めてくることを踏んでいた。しかし、気がかりもあった、もしかしたら爆発を放置してこの世界から天界へ帰ってしまう流れもある。だから、ここは賭けに出るしかなかったのだ。カールを倒し、絶対に生き残るためにも――。


 ある程度、予想はしていたが、まさか現象キャンセルとは恐れ入った。何も知らない状態で戦いに挑んでいたら、必ず殺されていた。攻撃で起こす現象全てをキャンセルされていたら何もできやしないから。これは本当に危なかった……。それに『第二層』に『第三層』か……。とんでもないことを知った……。


「ふぅ……」


 ワタシは大きく息を吐き出し、心を落ち着かせる。命を張った甲斐があった事を実感しつつ、次への行動を綿密に考える。そして、ハッキリした事は1つだけだった。この先の戦いは、確かな事は何1つもない、全てが博打になる事に。だか、全ての賭けに勝ち続けば、ワタシはきっと――。


 頭の整理ができたワタシは、真っ直ぐにカールを見た。勝ち誇った顔のカールを見た後、ワタシの目線はチラリとアルフへと移す。アルフの様子は、前見た時から何も変わっていなかった。腕は組んだまま、ジっと冷めた目で我々を見ている。カールがシステム介入で反目爆発をキャンセルしたことにも一切驚いてはいないようだった。


「さぁ、死ぬ覚悟はできたかな? 本当はもっともっとキミの実力を知るために遊びたかったんだけどね、反目爆発でこの世界を消滅させる危険性は冒せないから、もう死んでもらうよ。この世界がなくなったら僕の責任になるからね」


 一歩一歩と、ゆっくり歩みながらカールはそんなことを言った。ワタシの口元は自然と緩んだ。そして、カールはワタシの目の前に立つ。


「実際、こんなことはしたくないんだ。下界人に対して僕なりに愛着はあるんだよ。だけどね、これはルールなんだ。世界のシステムが見えてしまうのは、世界の秩序を脅かすことと同等。僕ら天界人は、全ての世界を守る事が仕事だからね。じゃあね、バイバイ」

 

 ワタシの頭上から降ってくる音は、大天使カールの天界人としての言い分だった。その後すぐに、カールの瞳は一気に冷たくなる。落ちているゴミを見るように。何の音も立たない空間で、ワタシの目の前にあるカールの右腕は静かに振り上がった。そして、振り下ろされた。


「トリプルアクセルっ! フルブーストっ!」


 身体強化の魔法を唱えたワタシは、眼前に振り下ろされる手刀を、その間際で避けた。世界システムを監視されている中、システム移動は発動する前にバレる。ここは通常移動以外ない。空を切ったカールの右腕は、そのまま地面へと貫く。静寂を包む空間に「ズゴッ!!」と大きな音と共に、地面の硬い岩達は粉々に砕け細かくなり、宙に大きく舞った。砂やホコリも立ち上り、煙幕が発生したその場から、ワタシは一気にカールから離れ、練っていた魔力を魔法へと現象に変えるため、詠唱を続ける。


 そして、ワタシは地面に手を付いて高らかに声を上げる――


「土属性、最上級魔法の1つ! この場、全ての土の精霊たちよ! 我に力を与えたまえ!! 『ソイルゴッツ』!! 」


 土属性の最上級魔法は2つ。その中の1つ『ソイルゴッツ』は、広範囲に特化した魔法である。手の平や杖から発射する魔法とは違い、空間把握による無数の槍を地面から自然発生させ貫く魔法である。避けるといった行動は間に合わず、国全土に発生させることができる程の威力と範囲。現在見えている場所コードを書き換えるシステム移動では、範囲的に避けることはできない。私の目の前では、見える範囲全てから槍が立ち上ろうとしていた。その瞬間だった――


『パチンっ!』


 指を鳴らす音が響いた。そして、地面から発生し始めた槍は、ぱっとその場から消える。


「おいおいおいっ! 何のつもりだ? ああ? さっき、死を受け入れるような事、言ってたよな? なに抗ってるの? 意味分からないんだけど! それに、魔法などの現象は全てキャンセルできるって言ったよな! お前はバカか? 無駄な事してんじゃねえよ!」


 真っ直ぐにワタシを睨みつけたカールは、声を荒げる。怒っているようだ。だか、そんなカールに気にせずワタシは、


「さぁ、土たちよ! 思いのまま舞い上がれ! 『ソイルゴッツ』!!」


 もう一度、最上級魔法を唱えた。キラっと鋭い土性の槍が見えた瞬間――


『パチンっ!』


 と、再び指が鳴る。そして、すぐに槍は消える。


「お前さぁ、舐めてんの? ちゃんと聞いてた? 現象はキャンセルできるの! もしかして回数制限があると思ってるの? あるわけないじゃん! 何回でもできるんだよぉぉぉぉぉ!」


 苛立っている事が声から伝わってくる。それでもワタシは――


「はぁはぁ……土たちよ! 我の力となれ! そして、1点集中の破壊神となれ! くらえぇぇぇぇぇ! 『ソイルメッチャ』!!」

  

 土属性の最上級魔法の1つ。『ソイルメッチャ』は、1点集中型の魔法。手の平から発生される土属性の魔力たちは、もっとも硬い鉱物へと変化し、伝説の剣くらいの刃となる。それはどこまでも伸び続け、相手を追尾する究極魔法。防御力は関係なく貫通することができる。


 ワタシの手の平では、凝縮されていく土属性の魔力の塊が熱として伝わってくる。最上級魔法を3回連続撃つのは、さすがに魔力の減り方が尋常ではなかった。毛根の全てから汗が吹き出ている感触がある。心臓は踊り続け、体の細胞たちは、酸素を求め続ける。振り絞って発生させた魔法は、ワタシの手の平から勇者が持つ剣に引けを取らない『現象』として発生する。


 そして、次の瞬間――


『パチンっ!』


 と、再び指が鳴る。


「はいはい……すごいすごい……2つも最上級魔法使えるんだね……すごいね……だから……もう……いい加減にしろ!! 何度同じことすれば分かるんだ? お前の魔法は発動と同時に消えているんだよ! 何度やっても同じなんだよ! こっちも暇じゃないんだ! ソコでじっとしてろよ! 今すぐぶっ殺して――ぐふ……」


 ワタシが発生させた魔法の『現象』は、大天使カールの胸を貫いていた。


「な、なんだと……この現象は……キャンセルさせた……はずだ……。ま、まさか……キャンセルコードを読み取って書き換えたっていうのか……! ハハ……な、なるほどな……二度の範囲魔法で避ける行動を制限させ……わざと現象キャンセルをさせた。その目的はただ見ること……土の現象が発生する瞬間のシステムコードと……キャンセルする際のシステムコードを読み取る事だったのか……。更に……この私を怒らせることで……三度目のキャンセルへと繋げた……ということか……まったくやるね……。それにしても……こ、こんな僅かな時間に『第二層』まで……辿り着くとは……ぐはっ……」


 口元から紅い血を垂らすカールは、言葉を区切りながら言った。胸に刺さった部分は「シュー」と白い煙を立て鳴っている――。


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