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「んん? 逃げ出したと思ったけど、そんなに僕から離れてないね? もしかして、機会を伺って仕掛けるつもりなのかな? いやぁ、楽しみだなぁ! 知る者とはいえ下界人と戦うのは初めてだからね! 僕らが設計した人間がどれ程になってるか観察するのに丁度いいよ! アルフの件についてもだがキミには感謝する」


 声を踊らすようにカールは言った。その声を聞くたびにストレス指数が急上昇するのが分かる。だが、今は落ち着かないといけない、大事なところだ。ワタシは気付かれないように地面に手を置き、魔法陣を刻み込む。そして、この魔法陣には、ワタシの火属性の魔力を留ませた。続いて、ゴウマの時から刻み込んだ魔法陣たちと等間隔になるように移動する。どうせ、居場所は把握されているから焦ることもない。カールのあの調子ならワタシから攻撃をしなければ、アッチからは何もしないだろう。ヤツにとってこれは殺し合いではなく、一方的な殺処分に過ぎないという認識だ。で、そのついでにワタシの実力を知り持ち帰ることが目的になっている。下界人をただの研究材料としか思ってないのだろう。


「あれ? また移動した? うふふふ……何か一生懸命に準備しているねぇ! いいぞ、好きなだけ準備しなよ! いつまでも待ってるから!」


 透明化しているワタシをピンポイントで目を合わせ、にやけ顔のカールはワタシの感情を逆立てるように言った。この時点で透明化の意味がないように思えるが、隠れるために透明化したわけではない。今、行っている魔法陣を隠すためである。魔法陣には属性ごとに刻まれる刻印が変わる。ワタシはカールにそれを知られたくないのである。元々、天界人でありシステムを見ることができる者に対して、この世界で隠れることは不可能と言っていいだろう。ワタシはお言葉に甘えて準備を続けた。続いて、魔法陣に土属性の魔力を留ませた。そして、また移動し魔法陣を刻み光属性の魔力を留まさせ、準備を終えた。


 魔王ゴウマの持つ属性は、闇、水、風、クリスであるワタシの持つ属性は、光、火、土、である。つまり6属性、全てが揃ったことになる。


 このことから分かるように、マトは偶然ワタシいやクリスを選んだわけでもなかったのだ。ゴウマが持つ属性以外の3属性を持つクリスだから『知る者』にしてワタシを作り出した。これが目的だったのだ。まぁ、さすがといえばさすがである。1つの個体が全属性を操ることは不可能、物理的に無理である。さすがの天界人であろうとも想定しないだろう。


 マトはそこを狙っていた。アルフに対して、考えてきた作戦がことごとく失敗した際の最終手段として授けられた手段である。さすがのアルフも全属性による『反目爆発』には耐えられないだろう、という考えだ。さっき大天使カールがやったのは、2属性の反目爆発である。そのおかげで反目爆発に気づくことができた。実力を判別できないアルフのデタラメに、すっかり忘れていた。2属性でもあの威力、全属性の反目なら想像もできない。もしかしたらこの世界ごと消えて無くなるかもしれない。


 ワタシは、その覚悟はしていた。全属性反目爆発の爆風に耐えれることは不可能である。この手段を実行する際は、生き残ることはできない。でもいい、後悔はない。あの憎たらしいカールを殺ることがてきるなら……。


 ワタシはゴクリと生唾を飲み込む。高まる心臓の鼓動のせいで、体がビクンビクンと勝手に動く。死ぬ事は怖くない……利用されるのはもう嫌なんだ……。ワタシはなぜ生まれてきたのか、そんな事ばかり考えてしまう。そんな時、なぜかは分からないが、頭の中に懇願するマサオの姿が思い浮かんだ。思わずクスッと口元が緩んでしまう。あのマサオの顔は凄かった……あんなみっともない顔作れる人間はアイツ以外いないだろう。面白かったなぁ……でも……もういないのか……。もう少し……話してみたかった……敵ではなく……仲間として……。


 ふんっ! と、強く鼻息を出す。気を取り直した。「やってやる!」心の中で強く呟く。ゴウマの頃に刻んだ魔法陣は、今の私でも操ることができるように調整済みだ。それについては大丈夫だ。問題は、システム書き換えを一度に一つしかやったことないことを同時に六つやることだ。大天使カールはワタシ同様システム移動はできるはずだ。そうなると、遠隔での魔法陣発動は逃げられる恐れがある。六つの魔法陣をシステム移動でカールの足元に移動して、反目爆発を引き起こさなければ成功しない。私にできるか? 六つ同時のシステム移動による演算が……いや、やるんだ。ワタシは決心する。


「ねぇ、まだなの? 退屈になってきたよ! キミの実力は知りたいけど、あんまり待たせるならこっちから行くよ! 僕もそんなに暇人じゃないんだ!」


 と、カールがボヤいた瞬間――


(今だっ! いっけぇぇぇぇぇ!)


 ワタシは同時演算を始めた。六ケ所に別れた場所のコードをカールがいる場所のコードに書き換える。ワタシならできる! ワタシならできる! そう信じ続けた。


 気づけば、ポタポタと地面に血が垂れていた。すぐに鼻から流れてきた鉄の味がワタシを襲う。これはワタシの鼻血だ、同時演算なんて過度なシステム介入に対しての反動に違わない。体が悲鳴を上げていた。しかし、そんなこと知ったことはない。やりきると決めたんだから! そして次の瞬間、六つの位置情報、全ての書き換えを完了した――


「よしっ! 後は同時発動するだけだ! 魔力たちよ、混ざり合えぇぇぇぇぇ! 全属性反目爆発だぁぁぁぁぁっ!!」

 

 そう、ワタシは高らかに声を張り上げた。次の瞬間、目の前はすべてオレンジ色に包まれる。それは、見えるもの全てが綺麗なオレンジ色だった。お日様を体全体に浴びるような素晴らしい発光だった。


 ワタシは勝って――そして、死ぬんだ――。

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