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「魔力全解放っ!!」
ワタシは思考するのをやめた。もう我慢できない。天界人がなんだ、生き残ることなんてどうでもいい。目の前にいるこの野郎をぶっ倒さないとワタシの気が済まない。後先の事なんてゴチャゴチャ考えるのはやめた。
魔力というものは、血流と同じように体内を流れ続けている。そんな魔力は、1点に集中する事で貯めることができる。アルフとの交渉が上手くいかなかった際、保険にしていたのだ。パンパンになっていた魔力のタンクの弁が全て開く――。
『バリっ! バリバリっ! バリっ! バリバリっ!』
ワタシから解放された魔力は、体から飛び出し青白い光を放ちスパークする。周囲に転がっている小石たちは宙に舞い上がり、スパークしたところに当たると粉々に砕け散った。
「ほ、ほう……こりゃ凄い! ただの人間に出せる魔力じゃないよ! どの世界の勇者や魔王より遥かに凄い! さすが知る者っていうところか! うふふふ……いいねぇ……楽しみだ! さぁさぁ、好きにかかって来なさい!」
ワタシの魔力を目の当たりにしても、カールは臆することなく目を輝かしている。
「すぅぅぅぅぅ……はぁぁぁぁぁ……」
体中に空気を巡らせるため大きく吸い、そして全てを搾り出すように吐き出した。そして、ワタシは呼吸を整える。
ワタシは別に全てを投げ出したわけではない。今までみたいに最悪の結果を考えて行動するのは止めただけである。簡単に死ぬつもりはない。何の考えもなく大天使に対して挑んだわけでもないのだ。そう、ヤツを倒すことは『可能』だからだ。
それは、ワタシのレアスキル『パーフェクト メジャー アビリティ』で相手の力量がある程度把握でき、いろいろと分かったことがあるからだ。これは、物凄く大きいことである。まぁ、ハッキリ言って大天使カールの実力は、ワタシより遥かに上だ。まともにぶつかったら瞬殺されるだろう。でも、それが分かっただけでもかなりの収穫である。実力さえ把握できればやりようがある。ちなみにアルフは、実力を感じる事さら出来なかった。これ以上、恐ろしいことはないのだ。まぁ、大天使がわざわざ下界まで出向き、別世界に隔離したこと自体を目的達成にしている時点で、アルフの実力はなんとなく想像はできる。アルフに対してワタシの判断は間違っていなかったのだ。そして、ワタシの口は開いて言葉にする。
「……書き換えを申請する」
ワタシは世界のシステムに干渉した。自分のいる位置とカールから離れた位置を書き換えたのだ。それと同時に、透明化の魔法を自分にかける。瞬時にカールとの距離は離れ、姿を隠す事に成功する。そんな私の行動にカールは、
「あれれ? まさか逃げちゃうの? あれだけ威勢よく殺すとか言っておきながら逃げちゃうんだぁ? へぇぇぇ! ちなみに言っておくけど、システム移動しても分かるからねー! それに、透明化してもシステムは見れるから正確な位置は分かっちゃうよ! そこんところ理解して逃げなよ!」
大天使カールは、大きな声を張り上げて言った。そして、続けるようにこう言った。
「まあ、絶対に逃さないけどね……」
と……。
そんなカールの言葉を受け取り、ワタシの口元は緩んだ。
倒す事が可能な理由がもう一つ、大天使カールはワタシを完全に舐めていることだ。その証拠にシステムが見えてることまでバカみたいにペラペラと喋ってくれた。こっちは、その前提で動くことができる。まぁ、予想はしていたが。こんなに油断しているんだったら、ワタシがこの世界にやってきた時、準備してきたアレが役に立つ。
この世界にやってきたワタシは、己のレベル上げと同時に最も大事なことをやっていた。それは、この場所に全6属性(火、水、土、風、光、闇)のうち、3属性(水、風、闇)の魔力を魔法陣に貯めることだった。この3属性は魔王ゴウマが持つ属性でもある。
ここで、なぜ魔王ゴウマの体でこの世界にやってきたかの理由が大事になるのである。これは全てマト様……いやマトから聞いた話だ。実際のところマトは、ワタシ自身の体、つまりクリスという本来の体ではなく、魔王ゴウマの体でこの世界に転生することになったのだが、その理由は、女神ウキヨ自身が魔王アルフの討伐するため、都合の良い魔王であったゴウマを選んだと思っているようだが実は違う。最初から女神ウキヨの目に止まるように、魔王ゴウマをコントロールしてきたのはマト本人だったのだ。人間と魔族の共存なんていうイレギュラーな魔王を創りだし、女神に転生させることが目的だったらしい。ここで疑問なる、なぜそこまでして魔王ゴウマが必要だったかになるが、必要だったのはその身に宿っている属性だったのだ。
身に宿る属性は、人間、魔族、皆1体につき1属性は持っている。そして、人間と魔族では大きな違いがある。それは、人間には闇属性だけは身に宿らないし、魔族には光属性だけは身に宿らないのだ。ここがとても大事になる。
1体につき1つとは言ったが、実は複数持つ者もいる。それが、人間側では僧侶、魔法使い、賢者、勇者である。僧侶、魔法使いは2つ、賢者、勇者は3つ所持している。複数持っていることで複数の魔法が使えるようになる。例えば回復魔法と言われているのは、光属性と水属性の2つがなければ発動しない。だから、僧侶という職は光属性と水属性を両方持っている者以外いないのだ。だから魔族には回復魔法を持つ者は存在しない。光属性を持つ者がいないからだ。ちなみにワタシと戦った勇者グルモは、雷撃系魔法を使っていたがアレは光属性と風属性がないと使うことはできない。あと回復魔法も使っていたから水属性も持っている事になる。つまり勇者グルモは、水属性、風属性、光属性を持っているってことになる。
3つ持っている者がいれば、4つ持つ者いる者もいるんじゃないかと思うかもしれないが、それは絶対にいないのだ。その理由は、反目する属性同士は一緒の体には宿れないから。反目する属性とは、属性によって弱点があること、火属性は水属性に弱い、水属性は土属性に弱い、土属性は風属性に弱い、風属性は火属性に弱いっといった特性があり、火属性と水属性は弱点を持つ水属性が反目して共存できないのだ。だから人間で一番属性を多く持つ者は反目しない属性同士になってしまうから、火土光か、水風光になる。魔族もまた属性については、人間と同じである。なぜ、そうなっているかは世界のシステムがそう決めたらしい。天界は、人間と魔族を創ったように、属性もまたそうシステム化されている。ちなみに光属性が反目する属性は闇属性だ。でも、人間と魔族、それぞれにしか宿らないから関係ない。
では、反目する属性同士の魔力が一緒に発動したらどうなるかについてだが、本来は1つの個体に反目する属性が共存はできないが、もし可能ならどうなるか? それは、『反目爆発』が起きるのだ。『反目爆発』は魔法ではない、世界のシステムが処理ができなくなり、無理やりなかったことにしようとして爆発させるのだ。もちろん魔法ではないから物理的現象ではなく、火も煙も出ない。ただ、その場を消し飛ばすだけなのだが、その威力は魔法では再現できないほどだ。そう、マサオを消し去った、山一つ吹き飛ばす威力、アレが『反目爆発』なのだ。つまり、天界人だけあって何でもありってことで、大天使カールは反目し合う属性を有していることが分かる。それこそが唯一アイツを倒す方法だ――。




