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「いたたた~、そんなに強く握るな! どこに向かっておるのじゃ!」
少女の細い腕を力強く握り引っ張っていく少年――ある場所に向かっていた。
「いいから来い! 何もしないで嘆くより行動しないと!」
「だから! どこに向かっているのじゃ!」
100万円相当の借金を背負ってしまった少年マサオ。
クエストの館でひとしきり大泣きしたが、正気を取り戻していた。
彼は今――何とかしようと必死になっている。
痛がる少女を無理やり引っ張り続けて、目的のお店に着くのであった。
その店の中には――
モンスターを切り裂くために作られた剣。
ピストルの弾も弾き飛ばしそうな分厚い鉄で覆われた鎧。
様々なサイズごとで作られた紋章入りの盾。
そんな重そうなもの被ったら首が壊れてしまうんじゃないかと思う兜。
――ココは武器防具屋である。
店内を見回すアルフは渋い顔になり、
「なんじゃ、武器を買いに来たのか? こんな人間共の作ったしょぼい武器など使えんぞ! 余は武器を選ぶのじゃ! 魔王の剣を持って来い!」
そんな武器ソムリエの魔王を無視し、少年は店の奥へとスタスタと歩いて行く。
1分も経たずに戻ってくると、その手には二本の棒が握られていた。
その棒きれの1本を持つようにアルフへと促す。
促されるままに棒を掴む魔王は、
「ん? なんじゃ、この棒は? 武器を買いに来たのじゃなかったのか?」
棒を両手でギュッっと強く握るマサオは、
「コレが俺たちの武器だ! これからモンスターを狩りに行くぞ!」
「これは棒じゃぞ? お主……、頭がおかしくなったんじゃないのか?」
心配な顔する魔王に少年は、顔を高揚させ地団駄を踏みつけた――
「お前の金遣いが荒過ぎなんだよ! 残り30イリトアルで買える武器なんてこんなモンしかないんだよ! 1本10イリトアルの『木の棒』しかな!」
これ以上、刺激を与えてはいけないと珍しく空気を読むアルフは、
「そ、そうか。それは悪かったのぅ……。まあ、こんな棒でもないよりはマシか」
木の棒を強く握り、軽く素振りをすると、魔王は再び口を開く――
「武器を揃えたってことは、今からクエストの敵を倒しに行くってことじゃな!」
少年の現状を全く理解していない魔王に対して即座に答える。
「そんなわけないだろ! レベル1でボスと戦うなんてTAプレイヤーぐらいしかいないわ! いいか、覚えとけ! RPGはな常に準備が必要なんだ。とりあえず雑魚モンスターと戦ってどんなものか知ってレベルの上がるスピード知る。それから、この町にある一番性能の高い装備を買い揃えるまで次の町には行かない! そういう一つ一つの準備してやっと初めてボスと戦えるんだ!」
少年のゲームに対する性格が分かる瞬間で、RPGでは超慎重派であった。
――これはボスの強さを堪能できないパターンである。
ゲームのラスボスにあたる魔王は、
「何を言ってるか分からんが、そんなことしてて7日以内に間に合うのか?」
「うっ!」
たしかにそうである。
受けているクエストの期限は7日間。
それを過ぎると投獄されてしまう。
――マサオは痛いところを突かれて絶句する。
「と、と、とりあえず……、町周辺のフィールドは強いモンスターが出ないハズだ。それと戦って様子を見よう……」
現実逃避をするように少年は答えるのであった……。
元ボッチ高校生マサオと元最強大魔王アルフ――
初めてのモンスターとの戦闘が、今始まろうとしていた。




