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「あーっ! こんな所にさっき落とした肉団子があるのじゃーっ!」


 身に危険が降り注ぐ中、アルフは突如声を上げた。そして次の瞬間、アルフは両手で俺の胸ぐらを掴み、強引に下へと力を入れる。意表を突かれた俺は、なすがまま地面に這いつくばった体勢になり地面スレスレまで顔が近づく。目の前には、ゴツゴツした地面にホコリを被った肉団子が一つ転がっている。アルフもまた地面ギリギリまで顔を近づけている。そして次の瞬間、俺等の頭上ギリギリから『ブゥゥゥゥゥン』と、二重跳びをする縄跳びの様な音が鳴る。すかさず俺は、這いつくばった体勢のまま目線を上げ、状況を確認する。そこには、刀を振り下ろした後のクリスの姿があった。刃先から一本の細い線が伸びていて、刀の軌道がハッキリと分かるようになっている。目の錯覚なのか、その線を境に空間がズレている様にも見えた。再びクリスへと目線を戻すと、目は真ん丸に広げ、口はあんぐりと開けていた。そんな表情を浮べるクリスは、


「に、にく……肉団子だと……」


 と、声をもらす。その直後、すぐ側からも声が発生した。


「モグモグ……やっぱり余が落とした肉団子じゃ! こんな所まで転がっておったとは、たまげたのぅ! モグモグ……」


 目の前にあったはずの肉団子は、いつの間にか消えており、アルフは何かを口に含みながらそう言った……。殺伐からコレの温度差に目眩がしそうになっていると、そんなアルフを見てかクリスの表情が正気に戻る。


「そ、そんなわけがない……ぐ、偶然だ………避けられるわけがない……まだだ……まだ終わって――」


 と、聞こえるか聞こえないか位の小さな声で呟く。俺は何とか聞き取ろうと集中していると、ふとクリスと目があってしまう。するとクリスは――


「マ、マズイ……」


 と、声を上げた瞬間、俺の目の前から突然消えた。それは、現れた時と同様、不自然にじんわりと消えた。驚いて周りを見回すと、ゴウマからクリスになった場所、約50メートルは離れた場所に彼女はすでにいた。一瞬であんな所まで移動した事に違和感を感じていると、


「さてと、そろそろ始めるかのぅ! マサオよ、余の戦いっぷり、その目でよう見とくんじゃぞ!」


 と、右手の指に付いた脂をペロペロと舐めながらアルフはそう言った。戦いは、すでに始まっている気がするが……もしや、今やられたことアルフは本当に気付いていないのか……っと、考えていると、


「おーい! クリスとか言ったかー、戦う前に水さして悪かったのぅ! じゃあ、そろそろ始めて良いぞー!」


 アルフはクリスへと呼びかけた。この発言に、物凄い不安がこみ上げる。今あった攻撃を全く気付いていなかったのなら、アルフに勝機はない。あの謎の移動方法を解かない限り絶対に勝てない……。いつの間にか、俺はバトル漫画特有の能力者相手との戦いを重ねて考えていた。焦る気持ちが高鳴る中、クリスから声が上がる。


「ふふふ……そうかそうか……よしよし! こ、このぉぉぉぉぉー! このワタシをいつまで待たせるんだぁぁぁぁぁ! 戦う前に呑気に食事とは、ずいぶん余裕だなぁぁぁぁぁ? ああん!」


 などと……クリスは叫びやがった……。コノヤロー、アルフが気付いてないこと良い事に、さっきの攻撃なかった事にしやがった。俺は、さっきの攻撃をアルフへ伝えようとすると、気分を良くしたのかクリスから続けるように声が上がる。


「ハハハッ! その余裕の顔も一瞬で消してやる! そう、この刀でなっ―― って、あれ? どこいったワタシの刀? あれ? あれ?」


 自分の右手を見て、慌て取り乱すクリス。俺等を襲った際に握られた刀は、クリスの手元にはないように見える。あたふたするクリスに対して――アルフが、


「おーい! お主の刀ってコレのことかぁ?」


 と、言った。俺はアルフへと目線を移すと、目を疑った。ペロペロと指を舐めていて今まで何も握られていなかった右手には、何故か見事な刀が握り締められている。「えっ?」と、俺が絶句していると、


「は、は、はあああああ? ちょ、ちょ、ちょっと! なんでアンタが持ってるのよぉぉぉぉぉ! い、い、いつの間に……」


 仰天とは、あの顔をする時と教科書に載るくらいの表情をしていた。そんなクリスに対してアルフは、


「あぶないからのぅ、没収した」


 と、澄んだ瞳でアルフが言うと、握られた刀は横に傾けられ、左手の親指と人差し指で刀の刃を摘んだ。次の瞬間「ふんっ!」と言うと、刀は飴細工のようにポキッと折れた。その瞬間、目ん玉が飛び出しそうな位の表情になり、カタカタと震え始めたクリスは、


「えええええ! あああああ! お、お、お、折ったぁぁぁぁぁ! 神器の一振り『次元刀』を折ったぁぁぁぁぁ!」


 と、この大空洞内すべてに響き渡る声量で叫んだ。そんなフルスロットルのクリスに対して、アイドリングのアルフは黙って握られた刀と摘んでいた刃をポイッと捨てる。そんな姿を目の当たりにしたクリスのエンジンはブーストがかかる。


「あ、あ、あんたぁぁぁぁぁ! その刀がどれだけ貴重なモノか知ってるのぉぉぉぉぉ? はぁはぁ……とんでもない事をしてるって自覚ある……?」


 と、クリスの問いかけに対してアルフは――


「知らん」


 一言で切り捨てた。顔真っ赤にさせながら、地団駄を踏み続けるクリスだが、そんな彼女にアルフは、静かに口を開く。


「そうそう、お主よ。さっきやったこと……もう少しでマサオにも当たるとこじゃったぞ……」


 刀の事がまだ気になっているのか「……はあ?」と、空返事するクリス。

 その姿を見続けるアルフの瞳は、まぶたで半分隠れていた。そして、地から沸き立つような声でアルフはこう言った。


「謝っても許さんからな……このゴミが……」

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