表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/10

時代の風雲児


「してヤマザキよ」

「大精霊を付けるニャ無礼者」

「誰のおかげで大精霊だ?」

「なんなりと御命令下さいませ」

「まだ歩くのか?」


 取り敢えず俺とヤマザキは近くの町に向かい身分証明書を発行してもらう事にした。


「今時身分証明書も無いと不審人物として拘束されても文句は言えないニャ」との事だ。


「もう暗くなって来たし山道を歩き過ぎて疲れたのだが」

「異世界人は貧弱ニャ」


 俺の肩の上で一歩も歩かずに欠伸をする子猫を思わず殺気のこもった視線で睨んでしまう。


「む、そうだ!ほらあの例のポイントを使おう!大精霊ポイント!」

「ポイントは出来るだけ貯めて後からデカイのと交換する方が良いと思うニャ」

「俺は細かいのをちょこちょこ交換して刹那的に喜ぶタイプなんだよ、良いからポイント交換一覧表を出してくれ」


 ヤマザキは手をわきわきと動かして肉球の間から電話帳程もある本を一冊取り出した。


「デタラメだなその魔法は」

「空間魔法だニャ」

「ああ、向こうの世界でも猫型のヤツが似たようなの使ってたな」


 どかりとその場で座り込みパラパラとポイント交換目録を読み始める。


「俺さ、こう言うの大好きなんだよね、結婚式の引き出物とか目録から選んで下さいってのがあって結構ドキドキしちゃうよな?」

「僕は鯛の形をかたどった砂糖が好きだニャ」

「結婚式呼ばれてんのかよ!しかもチョイスが渋いな!」


 目録を眺めていると様々な技能を身につける魔法が記載されている。


「技能を身に付けても使い方や道具無いと意味の無い物が有るから気を付けると良いニャ」

「例えば?」

「鍛治の技能なんか、知らない武器は作れないし、知らない鉱石は鍛える事は出来ないニャ、だけど教えてやらせてみたら誰よりも巧みに扱えるって言うのが与えられる技能ニャ、与えられた途端スーパー鍛治職人になれる様な都合のいい目録と違うんだニャ」


 なるほどな、車の運転技能とか与えられても交通法規や車の機能を知らないと運転は出来ないか、取り敢えずはこの状況を何とかしないとな……。


「この山歩きの技能ってのはどうなんだ?」

「山歩きをする為の筋肉がつきやすくなって、疲れにくい呼吸法が身に付きやすくなるニャそして若干精霊力の後押しがもらえる位だニャ」

「気の長い話だな」


 待てよ?そうなると身体能力系の技能は早い内に身に付けておかないと後から大変な目にあいそうだな。


「身体能力向上技能を全部取る!後は魔力向上技能も!」

「カタイシは思ったよりも頭が良いニャ、実はこの二つはポイント消費が一番多いニャ」


 多いと言っても数千ポイントだから取っておくべきだな、身体が資本の世界だからな。身体能力向上系の中で視力向上ってのもあるな、感覚系も全部取っておこう。


「ふははは!これから異世界俺tueee物語の幕開けだ!今夜はここで夜明かしをして明日に備えるぞヤマザキ」

「結局これ以上は歩けないって事かニャ?」


 俺は適当な焚き木を拾い集めてライターで火をつけた。

 夜中の分も拾い集めて腰に下げた鉈で薪割りも終わらせておく。


「カタイシは意外と生活力があるニャ」

「ヤマザキはタケノコ食えるか?皮のまま直火で炙って食うと美味いぞ」

「カタイシの言うタケノコは随分細いニャ、異世界のタケノコはみんなこうなのか?」

「そうだ!俺の世界では根曲り竹のタケノコしかないぞ!だから食え」


 焦げた皮をポロポロと剥くと中から薄緑色の柔らかいタケノコが湯気と一緒に顔を出してくる。ほんのりとミルクの様な香りが沸き立ち食欲を掻き立てて来た。

 ポリっとかじると根曲り竹独特の風味が口中に広がりつい次の一本へと手が伸びてしまう。

 俺とヤマザキは無言でポリポリとタケノコをかじっていたがヤマザキが思い切った様に口を開いた。


「ニャあカタイシ……」

「なんだ?」

「このタケノコはなんと言うか、飽きるのが早いニャ」

「うむ……」


 根曲り竹のタケノコの弱点は味が淡白な事にある。

 よって二、三本も食べると速攻で飽きてしまうのだ。

 なので俺の地元では煮付けにして食べるのが一般的である。


「しかしなヤマザキ、俺には考えがあるんだ」

「考え?」

「ああ、この世界に俺が呼ばれた大きな理由はおそらくそこに有るんじゃないかとさえ思っている位だ。俺はこの世界に調味料の革命を起こす時代の風雲児になれるんじゃないかと思うんだよ」


 ヤマザキはタケノコを咥えたまま子猫の手のひらをわきわきと動かして、肉球の間からマヨネーズを取り出して、タップリとタケノコの上にかけてから再度咥えた。


「詳しく聞かせるニャ」

「マヨネーズあんのかよ!空気読めよ!原稿用紙四百枚分の俺のサクセスストーリーが台無しだよ!俺のビッグマネーを返せよ!」

「異世界人は何かと言うとマヨネーズニャ!男は黙って醤油だニャ!どちらも普通に雑貨屋で売られているニャ!」


 ヤマザキは続けて醤油まで取り出した。


「醤油は中盤以降だろ!貴族や王族にチヤホヤされる予定が狂ったあ!ひっそりとマヨネーズを作る技能と醤油を作る技能をポイント交換してたのにいいい!」


 マヨ醤油をつけて食べるタケノコはちょっぴり苦い味がした。

次話投稿が今一つわかりにくいです

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ