SS1 晴海のクラスメイト2
このサイドストーリーはこの話で終了です。
成美、澪にとっては2回目である長い通路を歩いていき、ボス前の扉まで来た。
「この奥にボスがいるわ。部屋に入ったらボスを倒すまでは外に出られない。それでも行くのね?」
澪は最終確認をとる。この状況でNOという人はいないだろうが念のためにだ。
扉を開けて前回と同様に全員が入った途端、扉が閉ざされる。
「うはww閉じ込めワロスwww」
「ちょwwボスでけぇww!!」
「んじゃあよろしくな鳴川、池山」
まるで他人事のようにふざけだした屋根達が後方に下がる。かなりニヤついていて気持ち悪かった。
関谷達でも戦闘がいけそうなら参戦してほしい旨を伝えて、始めの内は後ろに下がってもらうことにした。
そうしている間にもキングオークはこちらに向かって来ているので後ろに行かせないように陣取る。
先に攻撃を仕掛けたのは澪だった。
「ハァ!」
「ブゴゴゴゴ!!」
「澪、俺達も加勢する!」
「オラ!こっち向きやがれ!!」
3人がキングオークに接近戦を仕掛け、成美が少し離れた所で回復を優先に動く。
キングオークは前回と同じ動きで跳躍した。
「みんな!離れろ!!」
「っっ!!」
キングオークの着地と同時に衝撃波が広がり、後方で見ていた屋根達ですら振動を感じた。
前衛で戦っていた3人は直撃は避けたが、余波を受けて吹き飛ばされた。
前衛がいなくなってフリーになったキングオークは成美のほうを一瞥し、ドスドスと早歩きしてきた。
「わ、わ、こっちこないで!!」
「「「成美!!!」」」
キングオークと成美との距離が徐々に縮まっていく刹那、澪は固有スキル「隠密」による無音の高速移動で一気に距離を詰め、剛は固有スキル「拳気」により気弾を飛ばす。
だが、それよりも疾かったのは
「成美に手を出すなぁぁ!!」
悠人は固有スキル「覚醒」を発動させ、全身にオーラを纏っている。
覚醒は一定時間、ステータスを上昇させる。スキルレベルが上がるたびにステータスの種類と上昇率、持続時間の増加。クールタイム減少。
悠人の覚醒LVは2なので上昇するのは力と敏捷のみとなる。
できれば切り札として取っておきたかったが、成美が狙われたために咄嗟に使ってしまった。
「うおおおおおお!!!!」
悠人はキングオークに怒涛の攻撃を浴びせる。切り札を切った以上、発動時間中に倒してしまいたい気持ちから焦ってしまい、攻撃が浅く、雑になってキングオークに半分以上弾かれている。
そんな悠人を見て澪が叱咤する。
「悠人、落ち着きなさい!もっとよく相手を見て!!」
「く、くそ!!」
武器を振るう腕に急に脱力感が襲ってくる。
どうやら覚醒の効果が切れたようだ。
中途半端に振るわれた剣はキングオークに弾き飛ばされ、悠人は片腕を上げた状態という隙を見せてしまった。
そこに容赦なくキングオークの拳が振るわれる。
「ごふっ!」
「「悠人!」」「悠人君!」
悠人の体が、くの字に折れ曲り、数十メートル飛ばされたところで悠人は止まった。
今の一撃で戦闘不能になってもおかしくはない。
「成美、お願い!!」
「う、うん!!」
「お前ら、足止めだけでもできそうなら手伝ってくれ!奴を悠人の所へ行かせるな!」
関谷達、新メンバーは目の前で自分達よりレベルの高い悠人が一撃で戦闘不能になったことに恐怖を感じ、動けずにいた。
しかし、屋根達はこんな状況にも関わらず平然とこんな会話をしていた。
「あらら、鳴川の奴だらしねぇな」
「もうちょっといけると思ったんだけどな。まぁ成美ちゃんを護ったのはグッジョブだ」
「あーあ、イケメンが台無しだよw」
「そうだ!護るフリして橋本さんに抱きつこう!俺氏天才!!」
「「やめろwww」」
「というか俺の成美ちゃんに手を出したらお前からぶっ殺す」
その会話を聞いてた関谷が堪りかねて屋根達に物申した。
「おい、お前ら。さっきから楽しそうだけどよ、あれを見てなんとも思わねぇのかよ?」
「は?何が?」
「鳴川達をだよ。あいつらは必死に戦っているのに、お前ら不謹慎だぞ!そんな話ができるくらい余裕があるならお前らも戦ってこいよ!」
関谷は自分が非力故に加勢する勇気が出せず、見守るぐらいしかできないということにイラ立ちやもどかしさを感じていた。
そういった気持ちから出た言葉に対して屋根は面倒くさそうに返す。
「何を言い出すかと思えばそんな事か。嫌だね、これは鳴川達の贖罪。罪滅ぼしなんだ。なら俺達が戦ったら意味ないじゃん」
「そんな事言ってる場合じゃないだろ!あのままだと鳴川が!いや、鳴川だけじゃなく他の奴らも危ない!」
「じゃあお前が戦ってくればいいだけじゃん」
「お、俺は・・・」
「ビビってんだろ?自分がビビって戦えないのに他人にやらそうとするなんて、お前も非道い奴だな」
「違う!お前らと一緒にするな!!」
「一緒だろ?何を言おうが結局はお前はここで震えてるだけ。戦う気のありなしは関係ない。わかったら黙っとけよ、ビビり君」
「く、この!」
図星を突かれ、さらに言い返そうとした関谷だが、その間にもキングオークは悠人の所へ向かっていく。
トドメを刺すのが目的か。
流石に緊迫した雰囲気に関谷もこれ以上何も言えなくなる。
「行かせない!」
澪が高速移動でキングオークに追いつき注意を引きつける。
剛も拳気スキルにより、拳に気を纏った。『拳気』は気を拳に纏い、攻撃力を底上げすることができる。
スキルレベルが上がると、防御力無視の効果も付与される。拳に纏っている間は小手のような役割も果たし、さらに纏った気を収束させて放つと飛び道具としても使える。
さながら「波○拳」である。
「ブオオオオ!!」
「よし、こっちだ!ブタ野郎!!」
注意を引きつけることに成功した剛、澪はそのまま悠人から少しでも引き離す。
その間、成美が悠人の回復に専念する。
そのおかげで悠人は動けるまで回復した。悠人は剣を拾い、駆けつける。
「2人とも、すまない!俺も加勢する!」
「おう、待ってたぜ!」
「みんな!ボスはHPが少なくなると暴れ出すと思うの」
「そうね成美。多分もう少しだと思う。悠人、覚醒はあとどれぐらいで使える?」
「・・・あと3分ぐらいだな」
「了解よ。剛、悠人が覚醒を使えるようになるまで粘るわよ」
「おうよ!」
「気をつけてね!」
3人はキングオークの攻撃を躱しつつ、時折、反撃にもする。
それを繰り返し、3分が経過しようとした時
「もうそろそろ、かな?」
「どうした新太?」
「我々の間で隠し事はなしだぞ?」
「いや、そろそろ準備しとこうかなーっていうことだよ。この分じゃ、まだかかりそうだけどな」
「別にあいつらが倒してくれるならいいじゃん」
「ボスのラストアタックが欲しいんだ。ということで行ってくる」
「今回は譲るよ。どうせ新太のスキルしか無理だろうしな」
悠人達は、屋根達が不穏な動きをみせているとは全く気づいた様子もなく、最終局面を迎えた。
前回同様、キングオークは赤く脈打ち、怒り狂う。
「ブゴ!ブゴ!ブゴオオオオ!!」
「凶暴化したわね・・・!悠人!覚醒は!?」
「大丈夫だ!いける!!」
「よし、じゃあ頼んだぜ!」
悠人は再度、覚醒を発動させて全身にオーラを纏った。
しかし、凶暴化したキングオークは出鱈目に暴れており、衝撃波も放っているため迂闊に手をだせない。
「剛、私達で隙を作るわよ!」
「アレに切り込むのかよ・・・しゃあねぇ。やってやるか!!」
「私は右から、剛は左をお願い!」
「任せろ!」
2人はキングオークが衝撃波を放つタイミングを見計らい、澪の掛け声で同時に攻撃をする。
タイミングはバッチリで、衝撃波を放つ前にキングオークにダメージを与えて、動きを止めることに成功する。
「今よ!悠人!!」
「やっちまえ!!」
「ああ、これで決める!」
2人が作ってくれた隙に応えるべく、悠人は渾身の一撃を放った。
「ブゴォフ!!フゥー!フゥー!」
手応えを感じたものの、キングオークは鼻息を荒くしていて、まだ倒せない。
「ぐっ、まだか!ならこれで・・・」
深追いしようとした悠人だが、キングオークはもう体勢を立て直している。
キングオークはこれまでとは思えない速さで拳を悠人の顔面めがけて繰り出した。
攻撃体勢に入っていたので躱すことが出来ず、咄嗟に剣を前にして防御するも、悠人は顔面を防御した剣ごと押し込まれて後方に飛ばされる。
今度こそ間違いなく致命傷だった。
「悠人君!今行くから!」
「くそ、こいつまだ動けるのか!?」
「とにかく、キングオークを止めるわよ!」
成美が悠人の回復に向かう。
悠人は先ほど回復してもらっていたが、成美は悠人を完全に回復させたわけじゃない。
動ける程度に留めておいたのである。
そのわけは成美のスキル「聖女」に関係する。
このスキルは傷を回復させる代償として自身の体力を削る。
大怪我の治療となると、それだけ長時間スキルを酷使しなければならず、成美の体力が持たなくなる。
事実、成美はボスに着く前の道のりで何度か使用しており、ボス戦では重症の悠人を回復しているので、かなり身体に倦怠感が襲ってきている。
(みんな頑張ってるんだもん。ちょっとフラフラするけど私も頑張らないと!)
成美は悠人の回復を始める。身体が悲鳴をあげているが、構わず続ける。
前方で剛と澪が足止めのためキングオークの注意を引くが、何故か一向に止まる気配がない。
「くそ!止まれ!!止まれっていってんだよ、クソ野郎が!!」
「このままだと悠人と成美のほうに行ってしまうわ!」
「させねぇよ!俺が前に出る!!澪、援護を頼む!」
「ちょっと!剛!?」
慎重に戦ってきた剛だが、2人の危機に痺れを切らして強引に前に出る。
正面から向き合うことになったキングオークと剛。
ここまでくると流石にキングオークは剛にターゲットを変更した。
「へっ、最初からそうやってりゃいいんだよ!おら、行くぞ!」
「剛!まともにやりあってはダメよ!悠人が回復するまで時間を稼ぐの。3人で連携すればなんとかなるわ!」
「だけどよ、見た感じこいつもう瀕死だろ。動きも鈍くなってる。俺に任せとけって!」
「ばか!話を聞きなさい!!」
剛の言う通りキングオークは動きも鈍く、攻撃も見切れるほど疲労しており、衝撃波も飛んでこない。
明らかに優勢だ。
しかし、こんな時こそ慎重に行動しなければならないのだが、今の剛には無理なことだろう。
剛は強気に攻める。
キングオークの攻撃を躱し、その隙に拳気で正拳突きを叩き込む。
澪は追撃でダメージを与え、距離を取る。得意のヒットアンドアウェイだ。
(もう少しだ)
剛がそう思った瞬間、キングオークは咆哮を上げて最後の足掻きの如く、剛に襲いかかった。
剛は何が起こったかわからず、少し錯乱状態でキングオークの攻撃をなんとか躱していくが、
「く、速い!今までのはフェイクかよ!?か、躱し、きれな・・・ぐあ!!」
躱したと思った拳から裏拳を繰り出され、剛が吹っ飛ぶ。
「剛!くっ、あれでは迂闊に近づけないわね!」
澪は前衛が1人になったことにより積極的に攻めることができなくなった。
と、いきなりキングオークが腕を振り上げて動きを止めた。
突然のことで一瞬判断が遅れてしまった。
「避けなさい皆!」
「ブッッゴオオオオ!!!」
「きゃああ!」
キングオークは最後の力で振り上げた腕を勢いよく地面に叩きつけ、今までより強大な衝撃波を放った。
澪は至近距離で喰らってしまい、勢いよく壁にぶつかり、意識を落としてしまう。
悠人と治療していた成美、かろうじて気絶を免れた剛も再び吹き飛ばされることになった。
キングオークはノロノロと、近くにいた成美のほうへ向かっていく。
成美は衝撃波の余波を受けているのと、聖女スキルにより体力のほとんどを消費しているため、すぐに起き上がれない。
キングオークは成美に凶悪な腕を振り上げた。
「あ・・・」
成美は死を覚悟したが、その腕が振り下ろされることはなかった。
なぜなら。
「大丈夫だったかい?成美ちゃん」
屋根がキングオークにトドメを刺していたからだ。その屋根は成美を見て不気味に妖しく笑っていた。
「屋根君・・・」
「うん、ラストアタックボーナスを貰えたみたいだ。予想通りだな」
「え・・・」
成美は屋根がやけに詳しい事に違和感を覚える。
屋根はキングオークの討伐報酬としてクラウンを持っていた。
報酬はどうやら男性だとクラウン、女性だとティアラになるようだ。
「これが討伐報酬か。まるで王様になった気分だなぁ。そういや、成美ちゃんもティアラを持ってたよね?」
次々と発せられる屋根の言葉に成美は恐怖を覚えて後退る。
「ティアラとクラウン、王妃と王様。それを持っている俺らはお似合いだと思わないかい?」
屋根は止まらない。成美にゆっくりと近づいていく。が、
「ちょっと待て新太。それ以上は俺達も許さないぞ」
「抜け駆けは関心しないな」
「・・・ち、頑張ったんだから少しぐらいいいじゃないか」
屋根達の仲間が止めて、ひとまずは解放された成美。
後は転移装置を起動して帰るだけだが、悠人、剛、澪は満身創痍で動くこともできない。
屋根達は一足先に転移装置を起動させて地上へと戻っていった。
「橋本さん、鳴川君達は俺達が担いで行くよ。ボス戦では恐怖で何もできなかったから、これぐらいはさせてほしい」
「・・・ありがとう」
成美はお礼を言うと、複雑な気持ちだが、とにかく皆無事だったことに胸を撫で下ろしていた。
最後の人が通るのを確認し、成美も地上へ戻った。
戦闘シーンがうまく書けないです\(^o^)/
もういっそ
「○○の攻撃! ××に ??のダメージ!」
とかにしたかったです。
次回はダンジョンから帰ってきたクラスメイトと晴海がバッタリ会う感じの話です。