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SS1 晴海のクラスメイト

サイドストーリーです。晴海のクラスメイト達がダンジョン探索します。

 晴海、成美、澪の3人で10階層を突破した次の日。

 成美と澪を始め晴海のクラスメイト達はダンジョン探索をする予定だ。

 だが今回は人数が違う。前回は8名だったが、成美達のパーティは現在男子10人、女子5人の15人のパーティになっていた。

 多い気はするが、過去最高の到達階層である30階層は30人ほどのパーティで挑んだらしい。

 今回はそれに倣って、ということなのかもしれない。


「・・・いつの間にこんなに人数が増えているのかしら?私も成美もパーティ人数増加の件、聞いていないのだけれど」


 8人パーティでも纏まりがなかったのにさらに人数を増やせばどうなるか・・・。

 澪は頭を抱えながら小学校からの付き合いでイケメンの男子、鳴川悠人に問い詰める。


「まぁまぁ澪。パーティは人数が多いに越したことはないし、これだけいれば出来ることの幅も広がる。事後報告で悪いとは思ったけど、これで10階層までは行けるはずだ」


 悠人は一応パーティリーダーを務めているが、パーティを纏めきれていない。

 特に屋根、大山、佐川、長谷川の4人が指示を聞いていない事もあった。

 幸いにして今回入ったメンバーは全員よく知っていて、男子のほうは真面目な人が多い。

 女子のほうも成美や澪の友達なので連携も問題ない。むしろ問題なのは現メンバーだといえる。


「澪ー!10階層まで行ったんだって?いいなぁ」

「一緒に行ったっていう冒険者の話、聞かせてよ!」

「ボスって強かった?私らでも勝てるかなぁ・・・」


 新メンバー女子3人。テニス部の美穂、陸上部の涼子、帰宅部だけど運動神経はいい智恵美。3人は澪、成美とも共通の友達だ。

 皆には10階層までクリアした事は伝えている。だが、晴海と一緒というと後々面倒な事になりそうと思った澪が、他の冒険者と一緒にクリアしたことにした。成美も承諾済みである。


「割と頼りになる人だったわよ。10階層のボスをクリアできるくらいだしね」

「おー!?めずらしいじゃん。澪が人を褒めるなんて。惚れたの?その人に!」

「マジマジ?」

「ええ、惚れたわ。でもその人は女性だけどね。人間性には惹かれるものがあったわよ」

「うん、いい人だったよね!」

「なんだぁ、残念!」


 女子の会話を屋根を含め、屋根と仲の良い3人はしっかりと聞いていた。


「成美ちゃんはすでに10階層をクリアしてたのか」

「冒険者の後について行っただけだと思うぜ?今度は俺が守ってやるんだ」

「ふん、精児。君では力不足ではないか?ボクこそ彼女を守るに相応しい」

「抜け駆けはやめてほしいな明夫。彼女が誰を選ぶなんてわかりきってることだろ?」

「だが、あいつらが邪魔だな。成美ちゃんと2人きりになりたいのに滝井もいるし、他の女子まで」

「そういうな。あいつらはあいつらで利用価値がある」

「そうそう。鳴川達が下の階層の魔物を蹴散らしてくれるおかげで俺らの経験値はたまるしな」

「宮古の野郎はまだ低レベルだろうし、パーティも組めないだろうしな。ふひひ、かわいそうにな。いずれは圧倒的なレベル差になる。そうすれば成美ちゃんも俺の魅力に気づくはず・・・!」


 屋根達の妄想と欲望が膨らむ中、全員の準備が整ったので一行はダンジョンに入っていく。

 人数も増えたことにより、以前より順調に進むことができた。

 魔物討伐組と罠探し組に分かれても人が足りすぎている。

 そんな中、成美が罠を回避しようと必死に素振りをしていた。

 その仕草が可愛かったので一同ほっこりとしていたが、アレ系(特殊)な罠のことを成美が説明すると、女性陣が罠探し組に加わった。必死である。


「晴海君がいてくれたらなぁ・・・」


 成美は罠を探す大変さから無意識に呟いていた。それは親友()にはバッチリ聴こえていた。


「成美、それは同感だけど彼に甘えてたらダメよ。本来はこうやって進まなければならないのだし」

「え?ご、ごめん澪ちゃん。声にでてた?」

「バッチリ聴こえていたわよ。会えない想い人に恋する乙女の呟き。といったところかしらね?」

「わ、わぁ〜・・・」


 思わず顔が赤くなる成美だが、顔を左右にぶんぶんと降るとすぐに気を引き締めて罠探しを再開した。

 魔物や罠は一定時間で変わる。故に同じ位置にあるとは限らないので、慎重な作業だ。そのおかげで前回攻略したところまでいけなかったりすることもザラにあるようだ。

 今回はなんとか10階層手前まで来ることができた。リーダーの悠人が作成会議を始める。


「さて、成美と澪の情報だと10階層は固定エリアでボス以外の敵は出てこないそうだ。罠もないらしい」

「あのさ、ボスって俺らでも勝てるのか?」


 そう言ったのは新メンバーの男子の1人で、関谷という。彼ら新メンバーは悠人達と比べてステータスが低いので心配していた。


「みんなでやれば勝てるぐらいの奴なら戦ってみたいかな」

「でも圧倒的な力の差だとやばいぞ」

「そこまで強いと俺らじゃ無理だな」


 それぞれ、神田、川島、太田がボスについて話していた。これには一度戦ったことのある澪が答えることにした。


「正面からぶつかれば力負けするわ。私は速さでカバーしてたけど、力は完全にあっちのほうが上よ。まともにやりあわないほうがいいわ」


 力では及ばない事を聞いて、新メンバー達は安全面を主張する


「それなら無理に戦う必要はないんじゃないか?充分にレベルを上げてからでもいいと思う」

「そうだよな、俺は今日だけで2レベルは上がったし、危険を犯してまでボスに挑むのはなぁ・・・」


 新メンバー達の言葉を受け、ボスには挑まない流れになった。

 レベルの話が出たので、皆はボスに挑まないにしろ、今日一日でどれくらいレベルが上がったのか気になって確認する。

 と、ここで大変な事実が発覚して屋根達4人が騒ぎだした


「あ、あれ?俺のレベル上がってなくね?」

「お、俺のレベルも上がってねーぞ!」

「ボクはかろうじて1レベル上がっているけど、前の時と比べたら上がりが悪くなってるな」

「オウフ、俺も上がってない!どうなっているんだ!?」


 ダンジョン攻略前のレベルはそれぞれバラつきはあった。

 パーティのLVを平均するとLV13〜14。まず成美、澪は前回ボスを倒したことでさらにレベルが上がりLV18〜19。

 続いて魔物と戦闘の多かった悠人、剛はLV15。そして補佐役の屋根達はLV13。そして新規メンバー達はLV11〜12である。


「おい、鳴川、池山。さっき俺達が苦戦してた魔物をアッサリ倒してたよな?」

「屋根。何が言いたいんだ?」

「お前ら2人のステータスを見せろよ。俺達に入る経験値のほとんどがお前らに入ってんじゃねーの?パーティのリーダーだけに許される、リーダー権限っての使ってさ」


 リーダー権限とは、パーティを組んだ時にリーダーとなる人が使える権限のことで、主にパーティの加入可否、脱退。それによる経験値獲得の有無が決められる。

 もちろん強引に特定の人物だけに経験値を取得させたり、強制的にパーティからの脱退もさせられる。


「ちょっとそれ!悠人君がその権限使って何かしたとでもいうわけ?そもそもアンタ達ほとんど戦力になってなかったじゃん!」

「いいんだ涼子。別に俺はやましいことは何もしていない。ほら、これでいいんだろ?」

「ちっ、しゃあねぇ。俺のはこれだ」


鳴川悠人:男

LV:17

状態:普通

SP:2

HP:420

MP:0

力:190

守備:170

敏捷:140

器用:120

運:100


スキル:覚醒LV2、片手剣LV4、盾LV3、自動翻訳


池山剛:男

LV:17

状態:普通

SP:2

HP:470

MP:0

力:180

守備:150

敏捷:150

器用:100

運:90


スキル:拳気LV2、ナックルLV4、盾LV3、自動翻訳


 悠人、剛のステータスを見て、さらに憤慨した屋根達が悠人に食ってかかった


「てめぇら、やっぱり俺よりレベルが上がっているんじゃねぇかよ!俺はまだ1レベルすら上がってないのによ!自分らだけおいしい想いしやがって!!」

「これはないわー。だってさ?同じように戦ってるハズなのにレベルがこれだけ違うっておかしいよな?」

「そうだよな。何もしなければ経験値はパーティに均等に入るハズだからな。これは明らかに操作されているよ」

「不正が明らかになりましたな。リーダー権限恐ろしす」

「ち、違う!俺は何もしてなんかない・・・!!リーダー権限なんて使ってない!!」


 悠人は一瞬だけ成美を見た。成美は心配そうな顔をして悠人を見ていた。

 彼も成美に想いを寄せる一人だ。だから卑怯者のレッテルを貼られるわけにはいかないと必死に誤解を解こうとする。


 だがこれは屋根達の仕組んだことだった。

 まず、魔物を倒した時の経験値だが、ソロで倒せば全て入ってくるが、パーティを組むと人数分に分配される。

 今回の場合は倒した魔物÷15=それぞれの獲得経験値になる。

 それとは別にトドメを刺した人が貰えるラストアタックボーナスというものがあり、トドメを刺した人は割増に経験値が貰えるのだ。

 今までは同じように魔物を倒していたので差は微々たるものなので気にはならなかった。

 そして今回、屋根達は苦戦しているように見せかけて適度にダメージを与え、トドメを悠人か剛が刺すように仕向け、レベルの差が目に見えてわかるようにしたのである。


 そもそもなぜ異世界にきたばかりの屋根達がこの仕組みを知っていたのか?

 それは屋根がある人物から助言、助力を得ていたからであるが、それは後ほど語られる。


 ここまでが布石で、屋根達の計画は次へ移る


「じゃあさ、お前ら2人強くなったんだからボスと戦えよ」

「あ、それいいな。ボスだから経験値は多くもってんだろーなー」

「「なっ!?」」


 悠人達を利用し、ボスに挑ませることが屋根達の計画だった。

 悠人達ならば仮にボスに勝てなくとも深手を負わせるところまでいけると考えた。そこを自分達がラストアタックを狙う。

 だが、危険極まりないことなので、黙っていた剛がついにキレた。


「ふざけんじゃねぇよ!だいたいお前らたいして魔物を倒してなかったクセに偉そうにしてんじゃねぇ!」

「うわ、人の経験値パクっといて逆ギレかよ。成美ちゃーん、これが池山君の本性だよ。怖いねー」

「ばっ!ち、ちげぇぞ!成美」

「つ、剛君。わかってるから・・・落ち着いて」


 成美が剛を宥め、なんとか落ち着かせた。

 だが、剛の熱はまだ冷めない。


「おい、お前らぁ・・・!!ダンジョンから出たら覚悟しとけよ」

「・・・で?ボスどうすんの?行くの?行かねぇの?」

「・・・わかった。ボスは俺が倒す」

「いいねぇ、そうこなくっちゃ。あ、言い忘れたけど、リーダー権限を使ってお前ら2人は経験値が入らないようにしとけよ。これは贖罪なんだから」


 パーティ内が重い空気になってしまった事と、現在自分が置かれている状況を考えると頷く以外に選択肢がないように思えた悠人は渋々承諾した。


「悠人」「悠人君」

「澪、成美。ボスの詳細を教えてくれるか?」


 澪は前回、引きつけ役を買って出てたおかげでボスのだいたいの能力はわかるので、悠人に細かに伝える。

 だが前回は通常できない罠を使った作戦が功を奏してボスを攻略できたが、今回は平均LVも低い上にこれといった効果的な作戦もない。

 無策に飛び込めば全員無事に戻れる可能性は限りなくゼロに近い。最悪全滅もありえる。


「大丈夫だよ悠人君。澪ちゃんと私は前にも戦ってるし、剛君も強いし。あと、私も手伝うよ!」

「ありがとう、成美」

「まぁ、成美や澪の出番はないようにするからよ!」

「剛。ボスの攻撃は躱しなさいよ。防御しても捲られるわ。衝撃波も余波には気をつけて」


 悠人、剛、成美、澪で作戦を考えていたが


「お、俺達はどうしたらいいんだろう?」


 新規メンバーが置いてけぼりにされて途方に暮れていた。

次回、ボス戦。

このサイドストーリーは次回で終了予定です。

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